第33話 不確定要素
「もう日が暮れてるな。……っとセリアは……」
「あ、エスト! こっちよ!」
世界樹の中から出てきて周りを見回すと、長老さんの家の近くにセリアがいた。どうやら待っていてくれたようだ。思ったよりも時間が掛かったから少し申し訳なかったな。
「フリナ、今日はありがとうな」
「ああ、構わないさ。じゃあな」
「おう、またな!」
フリナに別れを告げて、おれはセリアのところへ向かった。フリナには今日は本当に世話になったから感謝しかない。
「ごめん、セリア! 待ったか? 思ったよりも時間が掛かっちまって……!」
「そんなに待ってないから気にしなくていいわよ。向こうの料理屋さんにグラがいるからそこまで行きましょ」
セリアの横に並んで世界樹を登っていった。幹の周りに巨大な蔓が巻いてあったり、一部人工の階段などが作られていて登ることが出来るのだ。
少し登ったところから色んな木々や世界樹の枝へと橋がかかっていて、そこにエルフの暮らす家や建物があった。一見すると足場が悪そうにも思えるのだが、木はどれも立派であるから案外快適に歩くことができた。
「それと精霊とは契約できたの?」
「ああ、出来たぞ。ほら、このイヤリングがその精霊なんだ」
そういいながらおれは左耳の耳飾りを見せた。精霊には見えないだろうがそういうものなのだから説明しづらいな。
「それが……? 精霊ってそうなるのね。でも似合ってるわよ」
「そうか? 自分じゃ見れないから分からないな。外せないから困ってたんだけど似合ってんならいいか」
「どんな力を使えるようになったの?」
「そりゃあもちろん……あれだよ……。……なんだろうな……」
そういえばどんな力を持っているのか聞いてなかった……! いや、闇の精霊は契約出来ないって言ってたからもしかしたら誰も知らない可能性もあるのか? だとしたら自分で力を見つけなきゃいけないのか?
「何も分からずに契約したの?」
「いや、考えても分からないかなって……」
「ははっ! エストらしくていいじゃない。少しずつ確認してけばいいわよ。……っと。見えたわ。あの料理屋よ、行きましょ」
おれはセリアに案内され店に入っていった。どこを見ても耳の尖ったエルフばっかりで新鮮な気分だ。逆にこの里ではおれ達が珍しいからだろう、目線がおれ達に集まっているのが分かる。
「おう、エスト! セリア! こっちじゃ」
店の奥から聞き慣れた声がした。そういえばウチのパーティは人間ばかりではなかったな。竜とかいうかなり特殊なやつがいたのを思い出した。
「あまり食い過ぎるなよ。金はそんなにあるわけじゃないんだからよ」
「ええじゃろ。減ったらまた稼げばいいんじゃ」
「それは……そうっちゃあそうだがよ……。まぁいいか。ところで話があるんだよな?」
「そうね……。長老様から聞いたエストの話をちゃんとしないと。そうは言っても曖昧な話にはなるんだけど」
「そうじゃの……。正直儂らも理解しきってない……というよりも長老様とやらも分からないといってたからな」
長老さんが分からない? 何かおれに関するマズイ未来が見えたとかそういう訳じゃないのか……? てっきりおれが何かやらかすか、最悪死んだりする未来でも見えたのかと思っていたのだが。
「まぁ長老様の言葉をそのまま伝えると、“いつかは分からないが、あるときからの未来が一切見れない。まるで異世界を無理矢理に覗こうとしているみたいだ”だって」
「……それって死ぬんじゃねぇのか……?」
「いや、それとは少し違うようじゃ。人が死ぬ未来のときは“死ぬ”という事実がちゃんと分かるようじゃからな。もちろんその可能性を完全に否定できる訳でもないと言っとったがな」
「でもそれじゃあ気にしようもないよな。未来がないってことは死ぬのと同じことが起こるのか、全く違うことが起こるのか」
「長老様はとにかく恐ろしいことだって言ってたわ。何をどう気をつけてって言えないから難しいけど、とにかく気をつけて。私達もエストのことを守るから。それと、それ以前にも大変なことがたくさん起こるだろうから挫けず頑張りなさいって。これは私達にも向けてだけど」
解決策がある訳でも、そもそも何が起こるかも分からないってことか。分からなければ未来は変えられないだろ。……いや、“何かが起こる”ということを知るだけでも未来が少しズレたりもするのか?
「まぁ少し慎重になるか。どうせまだ三界なんかの相手は出来ないんだ。九月ともまだ戦いたくはないしな」
現状最大の不安要素の話を終えて、おれ達は夕食を食べ始めた。正直こんな適当に話を済ませていいのかとは思うが、考え過ぎても疲れるからな。悩みながらも深くは考え過ぎずに料理を口に運んだ。
「エルフの料理は植物が多いんだな。肉がないと寂しいかと思ったけど美味しいな」
「生き物との仲が良い種族だからかな。味付けもちゃんとしてるから満足感もあるわね」
グラは聞くまでもなく美味しそうに食べている。これを機会に料理の練習をしたいとか言い始めたら困るな。
「なぁ、人の子よ。君がエスト君か?」
「ん?」
名前を呼ばれて振り返ると、そこにはエルフの青年がいた。爽やかな男であった。
「確かにおれがエストだが、何か用か?」
「闇の精霊と契約したと聞いて気になってね。少し君の力を見せてくれるか?」
話題になっているのか? まぁ当然といえば当然か。前代未聞だもんな。
「精霊の力の使い方は分からないんだが、教えてくれるならこちらこそ頼みたい」
「分からない? ああ、無理もないか。いいぞ、ついでに君自身の力も見せてくれ」
「よし、いいぞ。食後の運動といこう」




