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神話の英雄譚  作者: わらびもち
第五章 エルフの里・ユラトラ
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第30話 フリナというエルフ

「でっっっかい木だなぁー! あの木の元に集落を作ってるんだろ?」


「そうよ。あの木は世界樹・ユグドラシルって言ってね、表面から見ても分からないけど世界中に根を張ってるのよ」


「へー。じゃああんだけデカくても見えてんのはほんの一部ってことか」


「そうじゃぞ。あれは枝の一本ってとこじゃな。世界の中心に幹があるんじゃ」


 なるほど、想像以上に偉大な生命なんだな。大地を支えていると言っても過言ではないか。


「ん? ってことは世界中にはあんなのがいっぱいあるのか?」


「うーん。まぁ、あるっちゃあるんじゃがの、あれと同じようなのは海の底だったりして見ることはできんな。ただ世界中に生えてる木は世界樹の恩恵を受けてるからそれがほとんど枝みたいなものじゃ。……いや、魔界には一本生えてたな」


 世界樹の周りが巨大な森なのはそれだけのエネルギーがあるということだろうか。だからどうという訳でもないのだが。


「止まれ! この先には私達エルフの里がある。何の用だ!」


 どこからか女の声がした。口ぶりからして恐らくエルフだろう。全く気配がしないのだが、エルフというのは姿を隠す力でもあるのだろうか?


「私達はエルフの里に寄りに来ただけよ。あなた達に危害を加えるつもりはないわ」


「……どうやら事実のようだな。長老様の言っていた客人だな」


「!?」


 突然、森中に響いていた声が背後に回った。驚いて振り返るとそこにはやや高身長の女のエルフが立っていた。気付かぬうちに背後を取られてしまった。


「随分聞き分けがいいじゃないか。怪しいとは思わないのか?」


「私の能力スキルは『審判ジャッジ』、君達の言葉の真偽はすぐに分かる。」


「便利な能力ね。でも私達が客人っていうのは?」


「長老様が仰ったんだ。あの方は未来を予知する能力スキルをお持ちだからな。3人組がここへ来ることは分かっていたから迎えに来たのだ。名前は?」


「私はグランデュース=セルセリアよ。こっちはネフィル=エスト、それとジルダ=グラダルオよ」


「グランデュースの子と現竜帝か! 思ったより大物達じゃないか!」


 ……なんか……おれだけ仲間外れ感がすごいな……。おれだけ何の肩書きもないからな。当然といえば当然なのだが……。


「はっはっは! 悪かったよエスト君、拗ねないでくれ。それと私はフリナだ。君達を里まで、というより長老様のところまで案内しよう。長老様がお待ちだ」


「ワハハ! 儂らの方が有名で悪かったな! エスト!」


「やめろよ。なんか余計に悲しくなるだろ」


 別にそこまでは気にしていなかったのに、なんか急に気にしちゃうじゃないか。子供扱いしやがって。


「まぁまぁ、そんなに気にすることでもないでしょ?」


 おれ達はフリナの後に着いて行った。彼女は弓を背負いながら長い金色の揺らして歩く。エルフの耳は尖っているという話を聞いたのだが、本当に尖っていてなんだか不思議だ。人間との種族差というやつだろうか。


「ところでフリナ、お兄様、いや、六法帝のギルバートが“エルフの里にはもう行けない”って言ってたんだけど、どういう意味なの?」


「ああ、昔から“三界に匹敵し得る者を迎えてはならない。三界を圧倒する者は迎え入れろ”っていう言葉があるんだ」


「なんでだ?」


2000年前(あの時代)の人達はほとんどいないから真意は分からないけど、大きな力は災いを呼ぶってことだ。ただ、あまりに強大な力には逆らっちゃいけないってことかな」


 うーん。まぁ言いたいことは分かる。魔族でなくとも力のある悪人がいれば近づくのは避けるべきだ。広い世界には色んな考えがあるものだな。


「だから六法帝のギルバートさんが来れないってことか……」


「まぁ私はそんなものどうでもいいと思うんだがな。昔からの規律を破るとうるさいヤツらもいるからな」


「同じ里に住んでんだからそういうのも大事なのか。難しいな。ところでよ、この森入ってからずっとふよふよ浮いてる光はなんなんだ?」


「光? そんなもの見えないわよ」

 

「エスト君、もしかして精霊が見えてるのか?」


 精霊? そういう言葉は聞いたことあるがこの光がその精霊なのか? というよりも精霊なんて存在するのか?


「精霊なのかは知らないけど、なんかが見えてるぞ。火の玉みたいなのが」


「それが精霊だよ。純粋な者にしか見えないんだ。私達エルフはなんとなく感じることはできるが、光として見れる者はほとんど居ない。それが君には見えているということか……」


「エストが純粋? そんなわけないわよ」


「おい! 失礼だな!」


 いやまぁ純粋だとは思ってないけど……。というかどちらかといえば汚れてるんじゃないか……? 純粋か……いや、あれか!


「多分おれの能力スキルの影響じゃないか? それ以外は確かに心当たりがなさすぎるし」


「特殊な能力スキルなのか? でも精霊が見えるなら後で契約を結ぶといい。親和性の高い者だと恩恵が大きいことが多いしな」


「恩恵? 何ができるようになるんだ?」


「精霊の属性にもよるけど、基本的には精霊魔法が使えるようになるぞ」


「魔法!? 魔法が使えるのか!?」


「あ、ああ。そんなにがっつくことか……?」


「ああ、エストはね、魔力がないからほとんど魔法が使えないのよ」


 そうだ、おれは今のところ収納魔法アイテムボックスしか使えない。もし色んな魔法が使えるようになればかなり嬉しいことだ。戦術の幅が広がるし、何よりも普通に使いたい。


「たしかに魔力を感じないな。まぁ使えるようになるんじゃないか?」


「……やった……!」


「まぁそれは後にして、とりあえず着いたぞ。ここがユラトラだ。そして世界樹の根元にあるあの大きな家が長老様の家だ」


 間近でみるとバカみたいにデカい木だ。そしてその周りの森や世界樹の枝にたくさんの家が掛かっている。幻想的というか、なんとも壮大な景色が広がっていた。

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