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神話の英雄譚  作者: わらびもち
第四章 九月
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第19話 接近

「あれがバルバタ……だった街か」


 おれ達は集落でいくつか依頼をこなしてからバルバタがあった所へ向かった。ドラゴン、しかも上位竜メガドラゴンを相手したこともあって、その後数件の依頼をこなすことでおれは冒険者ランクがAになった。


 グラも行動を共にするのに都合がいいため、冒険者になってもらった。しかし、試験をできる者がいなかったため、数日の間ひたすらに依頼を受けてCランクにまで上げていた。


 別に急いでランクを上げる必要は無かったのだが、おれ達よりも明らかにランクが低いのは気に食わなかったらしく、可能な限り昇級してきたのだ。


 そしてグラの案内でバルバタの近くまでやって来たのだが……。目を凝らしてみると、遠くに見えるのは限りなく広がる瓦礫の山であった。そして街が焼けたのだろう、炭や灰らしきものが微かに見え、建物や人が焼けた嫌な匂いが鼻を刺した。


「でも街を壊した魔族は倒したのよね?」


「ああ、そいつは大丈夫じゃ。食ってやったからな」


「食っ……!」


「魔族って美味しいの? というかドラゴンって普段何食べるの?」


「儂らは魔物の肉とかじゃな。基本は人間も魔族も食わんぞ。生意気な奴は別じゃがな」


「セリア、お前は食べちゃダメだぞ」


「食べないわよ! 野生児じゃないんだから!」


 まぁ流石に食べないとは思うが、セリアは見た目の割には結構逞しいからな。グラと過ごしていたら本当に野生児になってしまうかもしれない。


「まぁふざけるのはここまでにして……。魔族の気配はないよな?」


「ええ、とりあえず近付いても平気そうね」


 おれ達は瓦礫の山まで行った。元々は頑丈に作られていたのだろうが、どの建物も原形をとどめていない。生きている人間の気配もない。

 

 おれは腹の底から沸々と怒りが湧いてくるのを感じた。ここまで街を破壊し尽くす必要があるだろうか?


 魔族は対立しているから人間を殺すのではない。誰かの命令でやって来たのだろうが、人間を殺すことは暇つぶしか何かと考えているのだと、街の跡を見て理解した。


「……もしかしたら世界中の街がここと同じようになってたかも知れねぇんだもんな……。許せねぇ……!」


「気持ちは分かるけど、冷静さを失っちゃダメよ。少しの焦りが死に繋がる戦いになるかも知らないから」


「ああ、わかってるさ……」


「エスト、全力で魔力を探知してみてくれ。儂らには分からなくてもお前なら九月の魔力を感じられるかも知れん」


「わかった。ちょっと集中する」


 おれは目を瞑って周囲の魔素、魔力の動きに集中した。全方位に意識を広げてみたが、魔族らしき魔力は感じられない。小動物やら魔物やらがいるだけだ。


 今度は一直線に集中して魔力を探った。時間はかかるがこっちの方がより遠くの距離まで探れるからだ。そして少しずつ探る位置をずらしてみる。


 魔族、しかも九月ともなるととんでもない魔力量であるはずだから、隠そうとしない限りはそれなりに離れていても察知できるはずだが……。


「うーん……もう少し頑張ってみるけど……。随分遠くまで行ってるかも知れないな」


「まぁ数日経ってるからな。じゃが探知できなかったら適当に探すしかないのか?」


「そうね……。奴らが暴れ始めたら分かるかも知れないけれど……どうしても後手に回っちゃうわね……」


 だがそうなると被害が広がってしまう。おれ達が本気で戦うことも考えると、襲撃に合わせて街で戦うのは避けたい。


「………! 微かに魔力を感じた! 3時の方角だ!」


「でかしたぞ! それでどれくらい遠くだ!?」


「……結構……少なくとも20キロ以上は遠くだ。」


「遠いわね。でも良くやったわ!」


「…………なぁ、グラ……。九月は1体だったんだよな……?」


「ああ、ダルカライトだけじゃったぞ。」


「気のせいじゃないと思うんだがよ。デカい反応が2つあるんだが……」


「2つ!? 九月が2体いるんだとしたら……。追うのは考え直した方がいいわ!」


「そうだな。2対3でも分が悪いか」

 


 エスト達のいる地点から20キロほど離れたところに2体の魔族の影があった。一方は竜帝・グラダルオと交戦した九月の九番、エスト達が戦おうと思っていた魔族だ。だがもう一方は彼らが想定していなかった敵である。


「クロワールさんの指示だけど面倒臭ぇな。お前が来るなら俺はいらなかったろ」


「まぁいいじゃないか。俺がここで戦死したら君は()()になれるんだし」


「死なねーくせによく言うぜ」


「暇つぶしだと思ってくれよ。ついでに魔王様がいれば連れて行きたいしね。人間を殺すだけじゃないよ」


「いるかも分からねーだろ。2000年前の奴らなんてよ」


「いるのは確かだと思うけどね。人間に全部殺されてない限りは。ところでダルカライト。君、バルバタだっけ? そこの街は片付けたんだよね?」


「俺じゃねぇけどな。侵銀隊の隊長か誰かがやってたぜ」


「その方向から2つ、そこそこ大きい魔力があるけど」


「……確かに。生き残りでもいたか?」


「戻ることになるけど片付けるとするか。暇だし」


「あぁー、本当に面倒臭ぇな!」


 ……


「……! マズい!! セリア! グラ! 魔力の反応がもの凄い速さでこっちに向かって来てるぞ!!」

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