第17話 NEXT STAGE
「何をしようとしてるのかは知らんが、思い通りにはさせんぞ!」
「『爆息』!」
「ッ熱!」
竜はこれまでよりも高温の炎を吹き出した。辺り一帯は真っ赤に染まったが、バルタの作った氷がかろうじて炎の熱を遮断していた。それでもジリジリと肌を焼くような熱は襲ってきた。
「いくぜ……!」
おれは人差し指と中指を伸ばして銃の形を作った。指先には圧縮させた魔素が回転している。そして竜の翼の根元に銃を向けた。
「『白天』!」
「ッぐァッ!」
「光線!?」
指先から出た一本の白い光が竜の翼を貫いた。翼にも硬い鱗はあるのだが、そんなものはものともしない。
「ッく! 何じゃ今のは!?」
「魔素を高密度に圧縮しながら回転させると熱と光を帯びるんだよ。それだけのエネルギーを生み出してんだ。鱗程度の硬さじゃ歯が立たねぇだろ」
「何回見ても凄い技ね」
「派手だし威力もあるし良い技だな! 本当羨ましい奴だぜ!」
「今は時間がかかるのが難点だけどな。……さて、グラダルオだっけか? 竜帝さんよ。今のは殺すつもりがなかったから翼に撃ったんだぞ」
1人では敵わなかっただろうが、おれ達の力はしっかり示せたはずだ。事実、今の一撃で命を奪うことは可能だった。それはコイツも理解しているだろう。
「………ああ、約束じゃからな。儂は元の場所に帰るとする」
「意外と素直なんだな」
「当たり前じゃ。殺されては仕方ないしな」
「そうか。助かるよ」
おれ達は戦闘を終えて集落にあるギルドに向かった。依頼達成の報告のためだ。証明できるものはないが、竜の魔力が鉱山からなくなったので問題はない。
おれの傷はポーションを使ったが、完治はしなかった。だが、おれは元々治癒力も高いのでそこまで気にする必要もない。そして報告を済ませてギルドから出てきた。4人で。
「お前はいつまで着いてくるんだ!」
「じゃから! 帰る場所がないから行動を共にすると言うとるじゃろうが!」
こいつはグラダルオ、つまりさっきまで戦ってた竜だ。おれ達に負けた後、急におれ達に着いていくと言い出し、人型になったのだ。
見た目は高身長でガタイもいい青年といった感じだが、そうなれるなら最初からそれで大人しくしていて欲しいものだ。本人曰く竜型の方が楽だとのことだが。
「まぁいいじゃない。詳しいことは後で聞くとして、早く鍛冶屋に行きましょ。せっかく魔鉱石も採ってきたんだし」
受け入れるのが早いなと思いつつセリアに従った。まだ脇腹が痛く、そこまで言い合う気力がないからだ。
「セリア、エスト、ちょっと待ってくれ」
「? どうした? バルタ」
「俺はよ、今回の戦いで何も出来なかった! 悔しいけど、まだお前達と並ぶには力が足りねぇんだ。これからも1人で鍛錬を積むよ。お前達の足を引っ張りたくもねぇ!」
「別に足引っ張ることもねぇだろ。今回だってお前がいなきゃ負けてたさ」
「いや、俺の気持ちなんだよ。もっと強くなってからじゃないと気が収まらねぇ。だから……」
「分かったわ。でもいつでも来ていいわよ」
「おう! じゃあまたな!」
「……なんか……愉快な奴だったな」
「悪い人じゃないけどね」
「……うん? あっちから可愛い子の気配がする!」
初めは歩いて去っていったのに急に走り出した。まるで出会ったときと同じように。変わってはいないようだな。
「悪くはないかもしんないけど……。ヤバいやつではあるな」
「やっぱり悪い人かもしれないわ」
「はっはっは! 愉快な奴らじゃのう!」
それからおれ達は鍛冶屋に向かった。採取した魔鉱石でセリアの剣は強化してくれるようなので、それが終わるまで飯屋でグラダルオの話を聞くことにした。
「だいたいよ、お前が人型になれるってことにも驚いてんだよ、おれは」
「高位の竜なら姿を人の形にすることなぞ造作もないわい」
「それで、帰る場所がないっていうのは?」
「ああ、それなんじゃがの……バルバタという北の方の街の近くの山に住んでおったんじゃがな。数日前か、1体の魔族がその街に現れたんじゃ。その魔族によってバルバタは崩壊してしまっての」
「ああ、この前の大襲撃のときだな。そいつに追い出されたのか?」
「いや、そいつは儂のことを殺そうとしたんじゃが返り討ちにしてやったんじゃ」
「? じゃあ何が問題なの?」
「その後じゃよ。また1体魔族が来たんじゃ。知っとるか? ダルカライトという奴じゃ」
「ダルカライト!? それって九月の九番じゃない!?」
「その通りじゃ」
九月とは最強の9体の魔族のことだ。三界も含むので一般的には四番から九番のことを指す。恐らくこの前戦ったバンシュートとは比べ物にならないほど強いだろう。
「なんとか逃げることはできたんじゃがな。山は破壊されてしまって、帰ったとしても儂ではアイツには勝てん」
「なるほどなぁ。九月かぁ」
「まともにやり合えば私達でも敵わないわね」
「でも3人でやれば戦えるんじゃないか?」
「そうかもしれんが、危険じゃぞ?」
「保身に走っても強くはなれねぇよ」
「それもそうね。九月が魔界から出てきたんじゃ放っとけないし。厳しい戦いにはなるでしょうけど」
「本気か!? お前ら、奴は三界に次ぐ強さなんじゃぞ!?」
「でもそいつは九番目なんだろ? 三界はいつか倒さなきゃいけないんだ。そんくらい勝てなきゃなんねぇよ」
勝てる戦いだけをしていては強くはなれないし強くなった意味もない。目標はバカみたいに高いところにあるんだ。途中で躓くことを恐れていてはいつまで経っても辿り着けない。
「そうか。儂が見込んだだけはあるな。それならば儂もお前達の目標に協力しよう。お前達と共に命を賭けて旅をさせてくれ!」
「そうか、グラ。それは心強いな」
「おい! グラとは何じゃ! 儂ゃ偉大な竜帝グラダルオであるぞ!」
「愛称ってやつさ。いいじゃねぇか」
「あははっ! 確かにいいかもね! よろしくね、グラ」
「はぁ……分かったわい。勝手にせい」
おれ達は笑い合った。まさか竜の王が、敵対していたやつが仲間になるとは。不思議なこともあるもんだな。




