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神話の英雄譚  作者: わらびもち
第三章 炭鉱夫の集落
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第15話 2体の三界

 時は少し遡り、ここは魔界。かつては人間の暮らしていた大陸の一つだが、かつての街は崩壊し、この土地に住む人間はいなくなった。


 魔界では常に獄現と呼ばれる現世と獄境を繋ぐゲートが開いている影響か、空は暗く、黒い巨木の森が広がっていた。そんな魔界の中央にある城に、2体の魔族が来ていた。


「クロワールさぁ、君の部下を人間の街に向かわせたんだって?」


「ああ。50程度の街に侵銀隊の奴らを向かわせたよ」


「それで、いくつの街を落とせたって?」


「……片手で数える程度だ」


「あのねぇ、別に僕達はまだ人間を滅ぼそうってわけじゃないよ? だから負けたっていいんだけどさ、かと言って人間に舐められるのは気に食わないんだよ。」


「……」


「まぁグリセラ大陸の方ではダンディール君がほどほどに暴れてくれてるから、そんなに舐められないとは思うけどさ」


「すまねぇ……。思ったより人間に強い奴が多かったんだ」


「ところで街を落としたのは誰なんだい?」


「侵銀隊の隊長だ。それ以外は全滅だな」


「ああ、あの……あの子ね。まぁ人間は少し間引いておいた方がいいかもね。もうちょい刺激与えとくかい?」


「最近は全然だったからな。俺もやっと動けるようになったくらいだしよ。九月くげつの誰か連れ出してもいいか?」


「いいけど、言うこと聞くかなぁ?」


「聞かせりゃいいだろ」


「1人いなくなったから僕らを除いて5人か。誰をる気だ?」


「とりあえず九番目でいいだろ。六法帝のいるところは避けないとな」


「六法帝か……。あいつらぐらいならどうにかして欲しいもんだけどね。バンリューは仕方ないけどさ」


「じゃあそろそろ俺は帰るぞ。俺達はまだ前に出なくていいんだよな?」


「うん。出たいなら出てもいいけどね」


***


 そして現在。豪炎の2人は炭鉱夫ドワーフの集落に来ていた。


「あれか! 鉱山に村がある感じだな!」


「そうね。炭鉱夫ドワーフの作る武器っていったらなかなかのものだから人間もいるはずよ」


 おれ達は集落の中へ入った。どこからでも鉄を打つ音が聞こえる。炭鉱夫ドワーフといえば最高の鍛治師として有名だ。だからこそ宿屋や飯屋はあれど1番繁盛しているのは鍛冶屋というわけだ。


 旅人や冒険者もよく寄るらしく、帝都ほどではなくとも愉快な騒ぎ声が聞こえる。


「うおーーーーっ! この匂いはーーーーっ!」


 何やら大きく怪しい声がこちらに近づいてくる。匂い? と言ったか? 飯の匂いはしないのだが。


「エスト、あっちに行きましょう」


「えっ?」


 おれはセリアに腕を引っ張られた。そんなに武器屋に行きたいのか?そんなことを思っていると、さっきの怪しい声がさらに近づいてきた。


「やっぱり! セリアじゃないか! 久しぶりだな! 見ないうちに麗しさにも磨きがかかって!」


「はぁ、やっぱりあなただったのね。バルタ。会いたくなかったわ」


「そんな酷いこと言わなくてもいいじゃないか! 俺は会いたくて会いたくて仕方なかったぞ!」


「えっと……セリア、この人は?」


「俺はバルタだぜ。Aランクの冒険者だ。君は?」


「おれはエストだ。冒険者ランクはこの間Bになったばっかりだ」


「そうか、よろしくな! ……ところでエスト、まさかセリアと旅してんのか?」


「そうだけど?」


「……!! ……! なんだと!? なんて羨ましいんだ!! セリア! 俺も連れて行ってくれ!」


 なんなんだこの男は。勢いも熱量も半端じゃない。なんというか……心の底からこいつには敵わないなと感じた。


「連れてってって言ったって……。私達ね、魔族を滅ぼすために旅してるのよ。あなたこの前それ聞いてどっか行っちゃったじゃない」


「まだ夢を諦めてないのか! さすがセリアだ! 当時の俺は力不足だったのさ。だから鍛え直して君に置いていかれないよう頑張ったんだよ!」


「まぁ……やる気があるなら連れてってもいいけど……。エストはどう?」


「まぁいいんじゃないか? 仲間は多くても困らないしな。悪い人ではなさそうだし。……癖は強いけど……」


「そうか! ありがとう!」

 

「まぁ何にせよ私達は鍛冶屋に行きたいから。とりあえずあっち行くわよ」


 おれ達は集落の東側にある鍛冶屋へ向かった。そこは有名というわけでもないのだが、腕利きの鍛治師がいるようだ。


 この近くの鉱山で魔鉱石と呼ばれる魔力伝導率の高い金属が採れるようで、その金属を使って剣を強化したいらしい。


「うーん。このところ魔鉱石を切らしていてのう。ドラゴンが現れてしまってな。ギルドのほうに依頼しておるんじゃがなかなか手に入らんのじゃよ」


「それなら俺がちょうど受けようかと思ってたんだ。先に3人でそっちに行くか?」


「そうね。そうしましょうか」


ドラゴンかー。初めて見るなぁ」


 そうしておれ達は冒険者ギルドに向かった。竜といえば創造神様からの寵愛を受けている種族として有名だ。邪竜でもない限りは殺してしまうのは控えた方がいいだろう。


とはいえ、手加減して勝てるほど中途半端な強さでもないし……。何とかして追い払うしかなさそうだ。


「麗しき受付嬢よ! 依頼を受けに来たんだ! それが終わったら俺とデートをしよう!」


「バルタさんね。何の依頼を受けるんですか」


「ああ、冷ややかな対応だ! だがそれもいい!」


「あいつは誰に対してもああなのか」


「無視していいわよ。受付さん。私達(ドラゴン)の依頼を受けに来たの」


「セルセリア様! お久しぶりですね。依頼は3人で受けるのですか?」


「ええ、そのつもりよ」


「Aランクが2人にBランクが1人ですか……問題なさそうですね。今回出たドラゴンは人的被害は出していないので、殺さずに追い出すようお願いします」


「分かったわ」


「くれぐれも気をつけて下さい。上位竜の可能性もありますから」


 そしておれ達は鉱山に向かった。とは言っても集落からすぐ見える山なのですぐに着くだろう。豪炎の2人と誰よりも騒がしい男が1人、一風変わった3人パーティが今始まった。

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