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神話の英雄譚  作者: わらびもち
第二章 帝都・バラン
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第10話 VSバンシュート

 魔族は2人。魔族を見るのは初めてだったが直感的に理解できた。見た目は人間と比べてもあまり変わらないが、雰囲気が違った。どことなく黒い空気を纏っている。


「お前ら、急に現れて街を破壊するなんて随分と迷惑なことしてくれるじゃねぇか! 何が目的なんだ!」


「ああ? そんなの人間を殺すために決まってんだろ。この街だけじゃねぇぜ。今ごろ他の都市にも俺達の仲間が攻め入っているだろうよ!」


「計画的だな。誰かに命令でもされてんのか?」


「お前みてぇな奴にんなこと教える訳ねぇだろォが!」


「そうか。じゃあ力ずくで聞くとしようか」

「『身体強化ブースト』!」


「なに!?」


 おれは最高速度で魔族に接近し、思いっきりぶん殴った。だがやつ、ランドというやつは防御姿勢をとりダメージにはならなかった。


「お前ぇ、魔力がねぇくせに強ぇじゃねえか! いいぜ、俺がしっかり殺してやる! ……ッ!?」


 何かがランドを攻撃した。セリアか? いや、それにしては来るのが早すぎる気がする。振り向くとそこには武装した男がいた。


「君がエスト君か?」


「? ああ、おれはエストだが?」


「そうか。俺は王室騎士団の副団長・ガントラードだ。ここに来る途中セリア嬢と会ってな、君を手伝うようお願いされたんだ。ちょうど魔族は2体、1人ではキツかろう?」


 確かに今の感触では1人を相手にするのがやっとという感じだ。助太刀はかなり助かる。


「ありがとう。ガントラードさん」


「では俺が奴を片付けようか。君はもう1体の方を頼んだ」


「次から次へと、魔物どもは何をしているんだ!」


「落ち着け、ランド。魔物など元々雑兵だ。私達が主力の相手をすることは最初からわかっていただろう」


「おい、お前はおれがぶっとばしてやる。……じゃあ、ガントラードさん、おれは少し離れたところで戦うので」


「おう、離せるのか?」


「もちろん!」


 言い終わるとおれは魔族に向かって突進した。


「『天爆テンドン』!」


「ほう……」

 

 周囲にも余波が伝わって街中では易々と使える技ではないのだが、良くか悪くか周りはすでに壊れているので容赦なく使った。


 衝撃で吹き飛んだ魔族に追い討ちをかけるようにおれも一緒に飛んでいき、さらにもう一発お見舞いした。街からは随分離れたところまで飛ぶ威力だったが、やつには大して効いていない。


「なんだ、今の威力パワーは!? あの野郎、本当に魔力を持ってないのか?」


「おっと、貴様の相手は俺だ。仲間の加勢に行こうなんて思うなよ」



「予想外だよ。まさか魔力のない者にここまでの力があるとは。一応、名前を聞いておこうか」


「おれはネフィル=エスト。冒険者だ。お前は?」


「私はバンシュート。三界が1人、侵界・クロワール様の命を受けて参った」


「侵界? お前、三界の部下か?」


「そうだ。そして能力スキルは『爆発』、あの街を爆破したのは私だ」


「そんなこと伝えるなんて余裕か?気に入らねぇな」


「いや、自分の実力を伝えないというのは美しくないだろう?」


「そうか。おれの能力スキルは魔力操作と強靭な身体だ。これで平等だな」


「ふふっ。気に入ったぞ! だが格上に手の内を明かすのは賢くはない(スマートじゃない)な」


「勝つ自信があんだよ!」


 もう一度蹴りなど入れてみるもどれも防がれてしまう。こいつは体術に能力スキルの爆破を交えてくるタイプだ。こいつはおれと……


「私と似ている戦い方だな、お前は! 受けるたびに魔力の爆発を感じるぞ! だがそんなことを繰り返せばお前の魔力なぞすぐに底を尽きてしまうぞ!」


 そうだ。似ている。だからこの戦いは単純に強い方が制する。だが、互いにまだ決定打はない。


「テメェこそ! そんなんじゃあバテちまうぞ! おれに魔力切れなんざねぇからな!」


 激しい拳と拳のぶつかり合い。触れるたびに爆発し、互いにただ消耗していくだけ。


「『天昇テンショウ』!」


 おれは低い姿勢から上に向かって蹴りを入れた。相手の顎に当たる瞬間これまでより強力な爆発を起こした。


「……くッ! 痛ってえな!」


「かッ!」


 それでもやつは怯まない。それどころかカウンターを喰らってしまい、顔面に高火力の爆発が直撃してしまった。


「くそっ!」


 蹴りで振り払って一度距離を取った。今の感触的に全く効いていない訳ではない。むしろ防御させなければ充分な有効打だ。


「涼しい顔してる割にしっかり効いてんじゃねぇか!」


「お前こそ、息が上がっているぞ。無理せず死んでおいた方が楽だろうに」


 戦闘技術でいうとおれよりもあいつの方が上だ。だから防御を掻い潜って攻撃を当てるなんてことは至難の技だ。それなら……

 

「『部分身体強化ハイブースト』!」


 おれはこれまで全身に回していた魔素を右手に集中した。これだけの量の魔素を操るのは難しく、全身に纏うことは不可能だからだ。だからおれの身体は無防備な状態になった。


「バチバチと洒落た(危なそうな)音立ててんな。でもさっきより身体が柔らかそうじゃねぇか」


「埒が開かないだろ? この一撃で決めてやろうじゃねぇか」


賢くない(スマートじゃない)が美しい考えだな!」

「『爆裂刺突バングステン!』」


「『業天爆テンガン』!」


 

 バンシュートも同じように右手に魔力を集中させて2人同時に飛びかかり、同時に拳を相手にぶつけた。


「がはっ! ッく!」

 

 あいつの右手がおれの腹を刺している。爆発で骨も何本か折れ、衝撃が身体の内側に響き渡る。全身に激痛が走り、今にも倒れてしまいそうだった。そしておれの腕は……


「私の技は命を奪うまでは行かなかったか。無念だが、美しい最期だな」


 おれの腕はバンシュートの胸を貫いていた。魔族にも心臓があるのか知らないが、確実に相手に致命傷を与えていた。


「おれの力は魔族にしっかり届くんだな。安心したよ」


「ふっ。私は君がクロワール様に届かぬことを願うばかりだ」


 そう言ってバンシュートは倒れ込んだ。もし彼が正面からぶつかってくれなかったら、防御や回避に専念していたら、倒れていたのはおれかもしれない。


「まだまだだな。もっと強くならねぇと」


 おれは腹を押さえながら倒れた。出血は思ったより酷くはない。昔から生命力は高いからこの程度は平気だろう。そう思いながら気づけば眠っていた。そのときにはすでに日が沈みかけていた。

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