4.キツネの嫁入り
燦燦と照る太陽
その光に雨がキラキラと輝いていた
―天気雨?
気が付くと野原に寝転がっていた。
「お嬢様! お嬢様!」
誰かが私に話しかけている。起き上がって見てみると、そこに立っていたのは着物を着たキツネだった!
「お嬢様! 気が付かれたのですね! 突然いらっしゃらなくなるから、みんな探し回っていたんですよ!」
キツネはホッと溜息をついて私に立ち上がるよう手を差し伸べた。
「あ、あ、あなた誰なんですか? 私にキツネの知り合いなんていないんですけど…。」
「はっはっはっ! お嬢様、爺をからかおうったってそうはいきませんよ。お嬢様のイタズラには慣れっこなんですから。」
老キツネは笑っていたが目は怒っているように感じた。
「そんなことより、もう時間がありません。速く車へ!」
老キツネはそういうと私の着物の袂を引っ張った。
― …着物?
我に帰って自分を見ると、私は真っ白な婚礼衣装を着ていた。
ー何で?
動揺している私をよそに、老キツネは私を人力車に乗せた。見渡すと、私の乗っている車の前と後ろに袴や着物のキツネがずらっと列をなしていた。
―何なのよ、いったい!?
空からは霧のような雨がキラキラと降り注いでいる。
「濡れますよ…。」
突然声がしたと思ったら、若い男のキツネが私の隣に乗って来て傘をさした。
「な、何なんですか、コレ? 私、夢でも見てるの?」
私が聞くと、若いキツネは冷静な顔でこっちをジッと見た。
「…ははぁ…あちらさんもそうきたか…。」
キツネは言った。
「そうきたかって何なんですか? 私、どこに連れて行かれるんですか? 早く帰らないと明日も学校があるし…。」
私は泣きそうになってきた。
「何なのか…って、キツネの嫁入りだよ。ほら、天気雨も降ってるでしょ。」
キツネは空を見上げて気持ちよさそうに顔に雨を浴びた。
「キツネの嫁入りって、私が? ちょ、ちょっと待ってよ! 私キツネじゃないし!」
「…でしょうね。」
キツネは冷めた顔で言った。
―何なの? このキツネ
「とにかく私を家に帰して下さい!」
意気込んで行った弾みに椅子からずり落ちそうになった。その拍子にかぶっていたキツネのお面が足元に落ちた。
その瞬間、一向の足が止まり、前を歩いていたキツネたちが振り返ろうとした。