13.キツネの嫁入り
「…道はそんなに変わって無さそうだよね。」
丘の上からは街の様子がよく分かる。
「あれがバス通りだから、多分あの辺なんじゃないかな…。」
「…夢ヶ埼の方か…わかった。とにかくこの衣装じゃ目立ってしょうがないから、日が暮れてから行動しよう。」
「うん。」
日は既に陰って、日暮れまでにはそうかからないだろう。することが無くなってしまうと急に我に帰って不安がよぎって来る。
―元いた世界はどうなっているのだろう。祖母は心配してパニックになっているんじゃないか? パパにはもう連絡いったのかな? だとしたら急遽ドイツから戻ってきてしまうんじゃないか? 学校は? 皆勤賞を狙っているのに、いったい向こうでは何日たっているのだろう…。
岩国君はそんな私を察したのか急に話しかけてきた。
「学校はどう? 楽しい?」
「…あぁ…そうだね…うん、楽しいよ。進学校だけあって毎日勉強は大変だけど。」
「俺もはやく行きたいな…。」
「…そうだよね。」
ずっと学校に行けてない岩国君に申し訳ない気分になってきた。
「担任は? どんな先生?」
「あぁ…男の先生。遠藤先生っていうんだけど、年は…確か33って言ってたかな。なんか熱血な感じだよ。でもね…」
「何?」
「遠藤先生のクラスって、いつも何か問題があるんだって。」
言った後で後悔してしまった。代々遠藤先生のクラスに何か起こることは事実なのだが、岩国君が今回は自分の事じゃないかと思ってしまわないか…。
「つーことは、その先生、有能ってことでしょ。今でもクラスを持てるって事は問題解決してきたってことじゃん。ラッキーだな、俺たち。」
予想に反して岩国君はあっけらかんとしていた。ホッ、良かった。
「…ところでだけど…、この世界の私のおばあちゃんちが見つかったとして…でもどうやってキツネのお嬢様を探したらいいんだろ…。だってお嬢様は結婚が嫌で逃げ出したんでしょ? 家にはいない筈だよ…。」
不安でしょうがない私を見て岩国君はニヤリとした。
「そこんとこは大丈夫。俺、こっちにいる間、月白からいろいろ学んだんだ。そのお嬢様の毛で作られたキツネのお面があれば現在地は突き止められる。」
「そうなの? じゃあおばあちゃんちに行かなくてもいいじゃん! ここからでも探せるんじゃないの?」
「それは無理なんだ。拠点に戻らないとサーチが発動しない。」
「え?」
「そのお面はお嬢様の居住地が拠点になってるはず。お面を作った本人がいた場所が拠点になるから。その場所とお面が一緒になると、その持ち主と共鳴して居場所が分かるようなんだ。」
「なるほど…そういう訳ね。」




