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Episode.85 一緒に授業を受ける

「じゃあ、この問題分かる人…………はぁ。あのね、春日伊君」


「先生、春日伊は二人いるのでややこしいです」


「うん。この場合は君しかいないよね、春日伊兄」


「へ?」


「はぁ」


先生の溜め息と同時に教室中に"またか…………"といった空気が流れる。おかしい。なんなんだ、これは。


「いや、不思議そうな顔してるけど、それはこっちだから。なんだって、毎日毎日下級生のクラスに足を運んでは一緒になって授業を受けてるの?」


「妹が心配だからです!」


「うん。素晴らしい家族愛だと思うよ。妹さんも足を骨折してるから、何かと不便を感じているだろうからね……………でも、わざわざ授業まで一緒に受けることないんじゃないかな?」


「あはは。先生、大丈夫ですって。俺達三年はこの時期、自由登校だから別にあっちの授業をバックれている訳じゃないですよ」


「うん。教員同士で情報は共有してるから、知ってるよ。でも、僕が言いたいのはそんなことじゃなくってね」


「あ、もしかして一緒になって授業を受ける必要はないって言いたいんですか?」


「いや、今そう言ったよね!?」


「先生の言いたいことも十分分かります。でも、こうして授業を受けている間、妹に何かあったらどうするんですか?うちの子に責任取れるんですか?」


「うん。そういった発言は何かを彷彿とさせるから、やめようか。あと静かに言わないで。怖いから」


「ちなみにこれは妹に頼まれたからではなく、俺が自主的にやっていることです」


「うん。その妹さんの恥ずかしそうな顔を見れば、それは分かるよ。あと妹は何も悪くないんだ的なスタンスやめてくれる?ここにいるみんな、それを分かってるから」


「…………すみません、兄がご迷惑をおかけして」


「光、何もお前が謝ることじゃないだろ。おかしいのはこのクラス全体なんだから。つまり、俺じゃなくてこの人達がズレてるんだ」


「いや、妹さんは君の為に謝ってるんだよ!?てか、後半部分は主語デカすぎだから!!」


何やら光の担任はヒートアップしている。よく見れば、光のクラスメイト達も呆れた目で俺のことを見ていた。


「…………まぁ、百歩譲って授業を一緒に受けることはいいよ。でもさ」


光の担任は次の瞬間、俺の方…………正確には担任のした質問に答えようと挙げた俺の手を見ながら、こう言った。


「そんなにはっきりとは参加しなくてもいいんじゃないかな」


担任の苦笑いとそれに同調するように頷くクラスメイト一同。チラリと横を見ると光が頭を抑えて何やら考え込んでいた。そして、俺はというと直後教室に駆け込んできた美鈴によって外へと連れ出されてしまうのだった。







「あんた、何考えてんの?」


夕食の席で美鈴が徐にそんなことを言い始めた。一体どうしたんだ?


「それはこっちの台詞よ…………まぁ、表現は徐だろうが、突然だろうがどっちでも構わないけど」


「あれ?俺、声に出てた?」


「あんたの考えてることなんて顔を見れば分かるわよ」


「ん?じゃあ、今お前がした質問はおかしくないか?」


「揚げ足を取るな」


「すみませーん」


「全く…………」


「あ、あはは」


「光も苦笑いしてる場合じゃないってば。嫌なら、どうしてやめてって言えないの?」


「…………だって、私の為にやってくれてるから」


「にしても一緒になって授業を受けるのはやりすぎでしょ。あんたのクラスメイト、引いてたわよ?」


「美鈴、分かってくれ。光は骨折してるんだ。もし、授業を受けている間、そんな光に何かあったらと思うと」


「何もないわよ。たった五十分の間でしょ」


「いいや!分からないぞ?」


「はぁ〜……………前々から、あんたのシスコンぶりは常軌を逸してると思ってたけど、まさかここまでとはね」


「美鈴ちゃん、あの……………私なら大丈夫だから」


「光、あんた…………」


「?」


「あんたのブラコンぶりも相当ね」


「えっ!?どうして、そうなるの!?」


その後もわいわいと賑やかな夕食は緩やかに楽しく進んだ。思えば、何で美鈴は夕食を食べに来たんだ?しかも自分から夕食を作るなんて言い出したしな。普段はあまり来ないのに…………ま、それを言うのは野暮か。きっと光が心配だったのだろう。こいつも俺達のことを色々と言ってるが相当な"光コン"…………だからな。






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