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ヤクソク〜交わしたのは誰と〜  作者: 気衒い
第一部

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84/94

Episode.84 飯作る

「えっ!?骨折!?」


「うん。そうなの」


「光、あんた大丈夫なの?」


「うん。幸い、お兄ちゃんが側にいてくれるから」


「そう…………ちなみに塔矢は何て?」


「困ったら、何でも言ってくれだって……………今のままだと鼻かみたいって言ったら、それすらやってくれそうな雰囲気だよ」


「…………あんた達も相変わらずね」


「心配かけてごめんね、美鈴ちゃん」


「ううん。そんなのいいのよ。幼馴染みなんだから、水臭いのはなしよ」


「ありがとう」


「困ったら、私にも頼りなさいよ?あいつだけじゃ、できないことだってあるんだから。あんたは無理しなくていいのよ?」


「うん……………本当にありがとう」


それから他愛のない話をして私は電話を切った。と同時に罪悪感が湧き上がる。美鈴ちゃんは気にしなくていいと言ってくれたが、やはり心配をかけてしまったのは心苦しい。なるべく、彼女の力は借りないようにしよう。


「あ、お風呂……………」


とか思っていたら、早速助けて欲しい事案が発生してしまい、私は頭を抱える羽目になってしまうのだった。







「で、俺は何をすればいい?」


現在、俺は台所に立ち光の指示を待っているところだった。というのもいつもは任せきりになっている夕飯作りをこの機会にぜひ手伝わせて欲しいとお願いしたのだ。すると、若干申し訳なさそうな顔をした光だったが、俺の"きっと二人で料理をすれば楽しい"という一本槍の必死な説得により、何とか納得してもらい、今に至ったのである。ちなみに作る料理はカレー。初心者でも失敗しにくい料理ということで光が気を遣ってくれた結果だ。あ、カレーは俺の大好物でもある。


「まずは玉ねぎと人参、じゃがいもの皮を剥いてもらおうかな」


「おっ、そのぐらいだったら俺にもできそう」


意気揚々とそう言った俺は光から玉ねぎと人参、じゃがいもを受け取り、早速作業に取り掛かる。玉ねぎは手で人参とじゃがいもはピーラーを使って丁寧に剥いていく。やはり、最初はゆっくり丁寧にが基本だろう。


「いや、このぐらいはやったことあるでしょ。やけに手慣れてるし」


「いやいや、こういうのは雰囲気が大事なんだよ」


「雰囲気?」


「そう。実はやったことがあることでもまるで初めてかのように振る舞う。そうすることでなんだか新鮮な気持ちで料理ができるだろ?」

   

「つまりはヤラセってこと?」


「そう言われると身も蓋もないが…………まぁ、つまりはそういうことだ」


「ふ〜ん…………あ、次は今の子達を水で洗ってあげて」


「いや、"今の子達"って」


「ん?だって、新鮮な気持ちで料理したいんでしょ?」


「いや、擬人化しちゃうとそれはそれで料理しづらいだろ」


兎にも角にもそんな感じで楽しい楽しい料理は続いていく。そうして1時間後、そこには美味そうな匂いの漂う熱々のカレーが出来上がっていたのだった。






「美味しかった〜」


「ああ、そうだな」


飯も風呂も済ませ、後は寝るだけとなった状態の今。俺は光を膝の上に乗せながら、リビングの床の上に座っていた。ちなみに折れている方の足はちゃんと負荷がかからないよう注意して座っていた。


「またお料理しようね、お兄ちゃん」


「ああ。なんなら、今後は俺一人でやってもいいぐらいだ」


「なに?今回のことで自信ついちゃったの?」


「べ、別に〜?あんなの誰でもできるし〜?」


「うん。それはそうだね」


「えっ…………」


「ちょっとそんな突き放された子犬のような目をしないでよ」


「いや、だって…………」


「自分で言ってたじゃん。誰でもできるって」


「いや、それはほら…………そんなことないよって言って欲しかっただけというか?」


「つまりはヤラセってこと?」


「いや、そのネタもういいから。ってか、違うから」


「あはは」


その後も二人でくだらない話をして、時に静かに時に騒々しいくらいに盛り上がった。長年、一緒にいるからこそだ。やはり、光とは肩肘張らずに一緒に過ごすことができる。俺にはそれがとても心地良かった。


「…………よし」


光の足が治るまで俺にできることは何でもしよう…………俺はそう静かに決意するのだった。






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