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Episode.8 一触即発

「塔矢くん、今日のお昼は学食にしませんか?」


「さっき静と光と話してたんだけどさ、今日は新メニューが出るらしいのよ。光も弁当を作り忘れたって言ってたから、ちょうどいいと思うんだけど」


授業が終わった途端、話しかけてきた二人。その内容は俺にとってとても魅力的なものだった。


「新メニュー!?それ、凄く気になるな!よし!みんなで行こう!!すぐ行こう!!」


「落ち着いて。光が先に行って席を取っておいてくれるらしいから、そんなに急がなくてもいいわよ」


「ふふっ。塔矢さん、小さな子供みたいで可愛いです」


「うっ……………ごめん」









「うんまい!!これ、いけるな〜」


俺、静、美鈴、光の四人での昼食は非常に目立っていた。それもそのはずだ。なんせ、これだけの美少女達と一緒なのだ。俺の身体にはありとあらゆるところからの恨めしげな視線が突き刺さっていた。


「新メニュー、そんなに美味しいの?」


「ああ。光も食べてみるか?」


「いいの!?ありがとう!!」


可愛い妹の願いならば、叶えてやるのが兄の務めだ。俺はキラキラと目を輝かせる光の皿に取り分けたおかずを置いてやった。


「「……………」」


そして、それを羨ましそうに見る二人。いつも支えてくれる幼馴染みとこれから先を共にする友人も大切だと感じた俺はそんな二人に声を掛けた。


「二人も食べてみないか?新メニュー」


「えっ!?」


「い、いいの!?」


「ああ。当然だ」


俺はそこまでケチくさくはない。ってか、二人に頼まれて断れる奴がこの世にどれだけいるんだ?


「はい」


「「……………」」


俺はなるべく丁寧におかずを取り分け、二人の皿に置いた。二人は少しの間、固まっていたが意を決するように食べ始めた。


「こ、これって…………」


「か、か、間接…………」


何やら、ブツブツと呟いていてよく聞こえなかったが黙々と食べ始めた二人を見て、満足した俺はふと周りを見渡してみた。すると………………


「ん?あれは……………」


おぼんを持ってキョロキョロと辺りを見回している人物を発見した。それは玲華だった。今日のこの混み具合からいって、空いている席を発見するのは至難の技なのだろう。さらに元来の控えめな性格も相まって玲華はなかなか席を見つけられずにいた。


「………………よし」


俺は自分達のテーブルが六人掛けなのを確認してから、席を立った。


「お〜い、玲華!こっち、空いてるぞ!!」


「っ!?……………塔矢先輩!!」


誰かに呼ばれてビクンとなった玲華だったが俺の姿を確認するなり、急に笑顔になった。やはり、この状況は彼女にとって不安だったようだ。


「ごめん、みんな。今から知り合いが一人ここに来る…………ひぃっ!?」


「「……………」」


「あ、あはは」


俺は玲華とは反対に冷たい表情となった静と美鈴に恐怖を感じつつ、一縷の望みをかけて光の方を見てみたが苦笑いするばかりで解決とはならなかった。








「し、紹介するよ。こちら、俺の中学時代の後輩で依代玲華っていうんだ」


「どうも…………依代玲華です」


「で、俺の真正面に座っている人が皇静。静の二つ隣の人が三海美鈴、玲華の左隣に座っているのが春日伊光だ」


「ご紹介に預かりました、皇静と申します。最近、この学校に転校してまいりました。どうぞ、よろしくお願い致します」


「三海美鈴よ……………よろしく」


「私は春日伊光っていいます。依代さんと同じ一年生だよ。よろしくね」


な、何だこの空気は……………光以外、険悪な雰囲気だぞ。なんか怒らせるようなことを誰かがしたのか?


「依代さんは塔矢くんと同じ中学とのことですが、どうしてこの高校に?」


「その質問をするのなら、前半部分はいらないはずです。だって、どこの中学校に通っていたかとどこの高校に通うのかに因果関係は本来ありませんから」


「静はいきなり訊くのもなんだからと思って、そんな言い方になったのよ」


「でしたら、そんな枕詞は必要ありません。それよりもはっきりと直接訊いた方がよっぽどいいです。それとも最初は私の口から言わせたいんですか?」


「依代さん……………私はそんなつもりじゃ」


「私、気付いてますから……………廊下でのこと」


「「っ!?」」


「私はこんな取り調べのようなことをされる筋合いはありません」


「そんな言い方しなくてもいいじゃない」


「先に仕掛けてきたのは先輩方ですよ…………だいたい初対面ならば、もっと他に訊くことがあるんじゃないですか?」


ひぃっ!?じ、女子同士の喧嘩ってこんなに怖いの!?ってか、何で喧嘩しているの!?


「まぁ、まぁ。お兄ちゃんも怖がっているみたいだし、この辺にしましょう?」


「「「……………」」」


光の仲裁によって、この場はどうにか収まった。うちの妹は何て天使なんだ……………ってか、凄いな。こんな空気の中、割って入れるなんて。もしかして、こんな修羅場をいくつも潜ってきたのか?


「光、ありがとう」


俺がちょっとした疑問を抱えながら礼を言うと光はその疑問を見透かしたかのようにこう言った。


「言っておくけど、こんなの喧嘩の内に入らないよ?だって、こういうの日常茶飯事だもん」


ひ、ひぃ〜っ!!!!じ、女子って怖ぇ〜〜〜!!!!






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