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Episode.7 再会

「やっと見つけました……………塔矢先輩」


「え……………」


それはあまりに突然のことだった。休み時間、廊下を歩く俺の背中に声が掛けられ、ゆっくりと後ろを振り返るとそこには………………


「お久しぶりです」


非常に懐かしい顔があった。


「お前…………玲華か?」


まだまだ桜が舞い散る四月の半ば。俺は大切な旧友と約一年ぶりの再会を果たしたのだった。









依代玲華。俺の中学時代の後輩だ。中学生の時は今と違い、まだ両親が海外赴任をしていなかった為、光はそこまで家のことをする必要がなく、同時に美鈴家のサポート体制も今ほどではなかった。だから、二人とも部活に専念していたし、それは俺も同じだった。とはいっても一年生の時は特別入りたい部活もなく、何も入らないまま過ごした。しかし、二年生の春、部活勧誘が激しい隙間を縫って校門に差し掛かった俺の足元に一枚のビラが落ちてきたのだ。それは興味はないが仕方なく受け取ってしまったから、その辺に捨てられたものだった。そして、それを配っていたのが今、目の前にいる玲華だったのだ。玲華は一生懸命に勧誘をしていた。しかし、引っ込み思案なのか、他人の目が怖いのか、その声は蚊の鳴くようなとても小さなものだった。普段のある程度静かな帰り道なら、いざ知らず、その時は部活勧誘真っ只中であり、当然周りに聞こえる訳がなかった。だが、目の前に差し出されたものを反射的に受け取ってしまう人間というのはいる。そうなった場合、ほとんどの者がいらないと感じて処分してしまうのは致し方のないことかもしれなかった。加えて、配っている本人の声も小さくて聞こえないとなれば、ますますどんな部活なのかが分からず、その率は高くなってしまうのだろう。


「………………」


しかし、その時の俺はそれが無性に許せなかった。何も目の前で堂々と捨てることはないじゃないか。玲華はビラが一枚、また一枚と捨てられていくのを見て、悲しそうに俯いてしまっていた。だから、俺は気が付けばこう言っていたのだ。


「どんな部活なの?」


「……………えっ」


それが俺と玲華の出会いであり、始まりだったのだ。







「なるほど……………そんなことが」


「ええ。それから塔矢はあの子が立ち上げた文芸部に入ったの。そこから二年間、辞めることなく塔矢は文芸部を続けたわ……………迂闊だったわ」


「それはそうですね。美鈴さん、監視の目が甘いですよ」


「全くだわ。私がもっとよく目を光らせていれば……………はぁ」


「ライバル出現…………ですね」


「う〜ん…………あ、そういえば、今更なんだけど静はその……………何でなの?」


「………………」


「ほら、あいつとは出会ったばかりなんだし、流石にそういうのは早いんじゃないのかなって」


「いつ出会ったからなんて関係ありませんよ。私がそう感じているのが全てです」


「………………そう」


「……………」


「あの…………今更なんだけどやめなよ。二人揃って、覗きなんて」


「「っ!?光っ!?い、いつからそこに!?」」


「いや、最初からいたでしょ」










「あの………その…………塔矢先輩がここの学校だって知って」


「え?まさか、それでここを選んだのか?」


俺の質問に首を縦に振ることで返事する玲華。ちなみに彼女の外見だが、水色の綺麗なショートカットをしており、左髪には黄色い星のヘアピンをつけている。光と同じく小柄であり、中学時代には陰でファンクラブができたほどの美少女である。


「そうなのか!いや〜ありがとう!!俺、再会できて嬉しいよ!!」


「っ!?わ、私もです!入学してすぐに塔矢先輩のことを探して、ようやく今日見つけることができました」


玲華は元来、大人しい性格の為、ここまではっきりと何かを言うことがない。だから、そんな彼女がこれだけの意思表示をするということはどれだけ俺に会いたかったかが分かり、俺はとても嬉しくなった。


「そうか……………あれ?だったら連絡してくれれば、どこのクラスか教えたのに。連絡先交換してたよな?」


「はい。でも、先輩を驚かせたくて」


「お前は相変わらず健気だな。まぁ、でもそんなところは昔から変わってないな」


「そう……………ですか?」


「ああ……………あれ?そういえば、メッセージのやり取り自体も俺が卒業してからはしてないよな?」


「はい。先輩の新生活を邪魔したくありませんでしたし、それに下手にやり取りをすると私がこの学校を目指していることがバレてしまうので」


「そっか。玲華としては俺にサプライズがしたかった訳だもんな。でも、邪魔という部分に関していえば、そんなことはないぞ」


「いえ。きっと先輩はお優しいのでいくらでも私に構ってくれると思います。そうすると無駄な時間を過ごさせてしまうので」


「何言ってんだよ。お前との時間はどれも大切だ。それが無駄なんてことはないよ」


「っ!?」


「これからも何かあったら、気軽に声を掛けてくれ。もちろん、メッセージでもいいからな?じゃあ」


俺はそう言って、玲華に背を向けて教室へと戻ろうとした。すると、その直後、背中に何かが当たる感触がした。


「?」


不思議に思って、振り返ろうとすると後ろから腰に手が回されていることに気が付いた……………この状況はまさか。


「っ!?」


そう。まるで後ろから誰かに抱きつかれたような……………というか、それそのものの状態だった。そして、それをしたのは玲華だった。


「お、おい……………」


困惑して思わず、声を掛けると玲華はハッとして慌てて俺から離れた。


「っ!?す、すみません!!やっと出会えた感動で思わず」


「そ、そうか…………ちょっとびっくりしたな。玲華っぽくない行動だったから」


「すみません」


「いや、別に俺はいいんだけどさ……………場所がな」


「……………っ!?」


ここは廊下であり、若干だが他人の目がある。そんな中で事情を知らぬ者が今のを見た場合、どうなるか………………俺の言わんとすることを時間差で理解した玲華は顔を真っ赤にしながら、俺へ無言で頭を下げると急いで自分の教室へと戻っていった。直後、何故かは分からないが俺の背筋に悪寒が駆け巡っていったのだった。







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