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Episode.39 ハロウィンパーティー

ハロウィンパーティー当日。俺達は近くの駅で待ち合わせをしてから、静の家へと向かった。そうして屋敷の前へと辿り着いた俺達は揃いも揃って感嘆のため息を吐いた。来るのは二回目なのだが、それでもこの壮観な佇まいには圧倒される。たぶん、この先一生慣れることはないと思う…………いや、待て。初めて来たはずの玲華と綾乃さんは全然驚いてないぞ。それに引き換え、二回目に来た方の俺達といえば…………やめよう。なんか悲しくなってくる。これが生活水準の差というやつか。


「皆さん、ようこそおいでくださいました」


無理矢理、気持ちを入れ替えて屋敷の中へ入るとなんと天使がお出迎えをしてくれた。


「いてっ!?何すんだよ」


「別に〜」


天使…………もといドレス姿の静に見惚れていると何故か美鈴に足を踏まれた。ちなみに俺達は私服姿であり、これから部屋を借りて着替えるのだ…………にしてもまだパーティーは始まっていないっていうのにここにいる人達はもう既に着飾っているな〜。みんな綺麗だ。


「先輩、目がいやらしいです。そんなに見惚れる程、高そうな壺でもありましたか?」


そんな感じで周囲を見回していると今度は玲華が冷たい視線を送ってきた。


「そ、そうだな。どれもこれも綺麗…………凄く高そうだ」


「へー…………良かったですね。でも、落として壊さないよう気を付けないとですね」


俺が玲華の態度にビビりながら返答をしているとさらにここの気温が下がった気がした……………い、一体なんなんだ?俺はどこかで何かを間違えたのか?


「静さん、着替えはあちらで?」


「はい。今、ご案内致しますね」


そんな中、綾乃さんはこちらの様子を気にも留めずに静と話をしていた。や、やっぱり、この人只者じゃないな!!でも、ありがとう!!流れが変わって助かる!!


「お兄ちゃんも大変だね〜色々と」








「紳士淑女の皆様!!本日は我が家の伝統行事"ハロウィンパーティー"へのご参加、誠にありがとうございます!!」


マイクを通して司会の声がフロア中に響き渡る。現在、このフロアにいるのは全員が何かしらの仮装をした者達である。皆、一目で人物を特定することが困難な程、上手く仮装しており、現にそれがこのパーティーに参加する者の前提条件であった。静曰く、"ここにいる間だけは完全に日常から切り離された状態で楽しんでもらいたい"とのことだ。それでいうとどうやら第一段階はクリアといったところだな。


「本日は日々の喧騒から解き放たれ、思う存分楽しんで頂ければと思います。ん〜〜〜では!!第百七十四回ハロウィンパーティー、開催です!!」


独特な司会の挨拶を経て、遂に始まったパーティー。早速、思い思いの場所へと足を動かす周囲の人々。俺もこうしてはいられない。このフロアの中であれば、どこでもいい。とにかく一歩踏み出して誰かと話をしよう……………まぁ、とはいっても誰が誰だか分からないこの状況だ。一体、どうするべきか。


「こんばんは」


俺がそんな風に頭を悩ませていると早速、お声が掛かった。


「こんばんは」


とりあえず、誰だかは分からないが挨拶を返した…………ん〜見た感じは妙齢の女性っていう感じだけど。


「そんなに緊張しなくてもいいわ。ここでは各々が好きなように楽しめばいいの」


そう女性に言われ、ふと周囲を見渡してみると確かにみんな好きなように楽しんでいた。小さい子供は誰彼構わず、"トリック・オア・トリート!!"と大きな声で言い、お菓子をもらっているし、大人達は大人達でワインを片手に談笑している。


「なるほど…………こうやって仮装することによって、普段は気軽に話せない相手とも話せますし、何だかこの光景自体が非日常っぽくて気分も上がりますね」


「ふふっ。どうやら、このパーティーの醍醐味を理解したみたいね…………それじゃあ、私はもう行くわ」


そう言って華麗にこの場を後にする女性。一体、誰だったのだろうか…………その後姿は最後まで美しかった。







「ふ〜とりあえず、こんなところかな」


あの後、色んな人と話をしてとても楽しい時間を過ごすことができた。相変わらず、誰が誰だか分からなかった為、もしかしたら、あの中に美鈴達がいたのかもしれない。


「ちょっと涼みに行くか」


と外の空気が吸いたくなった俺は徐に足を出口の方へと向けた。すると、次の瞬間、耳元でこんな声が聞こえた。


「塔矢様、お会いしたかった……………」


「…………へ?」


その声に一拍遅れて反応した俺はかろうじてだが、ゆっくりと振り向くことができた。そうして目の前に現れたのは真っ黒のマントを羽織り、コーン形の先が折れた帽子、それと蝶の形をしたアイマスクとこれまた真っ黒のマスクをした魔女風の女性だった。


「えっと…………俺のことを知っているんですか?」


恐る恐る質問を口にした俺。それに対して、返ってきた答えは衝撃的なものだった。


「私があなたの婚約者です」








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