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Episode.12 婚約者

「こ、婚約者!?」


「え〜っ!!!!」


親父の言葉に驚く俺と光。完全に寝耳に水のことだった。


「……………」


「お兄ちゃん……………」


「ははっ。そ、そんな…………俺に婚約者だなんて……………まるで漫画やアニメの世界だな」


「随分と他人事だな」


「いや、信じられなくて…………親父、それは本当に俺なのか?何かの間違いじゃないのか?」


「間違いではない。先方たっての希望でな。ちなみに当然のことながら、お前のお相手もそのご両親もこの件はかなり前向きにお考えだ」


「……………」


「まぁ、お前のその反応も無理はないだろうな。平凡な日常を過ごしていた一高校生にある日突然、婚約者が出来たとなればな」


「確かに俺は平凡な日常を過ごしているし、それを望んでいるが……………親父に言われるとなんかイラッとくるな」


「とにかく、これは純然たる事実であり現実だ。お前には婚約者がいてお前以外は皆、それを前向きに考えている。後はお前の意思次第な訳だが………………いや、まだそれを話し合うのは早いか。とりあえず、今日はお前に婚約者がいるということだけを頭に入れておいてくれ」


「……………親父って思ったよりも凄いんだな」


「ん?」


「いや、狙いは政略結婚なのかなぁと思って……………だとすると向こうも俺と結婚するメリットがあるってことだろ?それって、つまり……………そういうことだろ?」


「何を勘違いしているのかは分からんが今回のこれは断じて政略結婚などではないぞ。確かに先方はとんでもない資産を保有し、会社をいくつも経営しているが、一方の俺は情けない話が一会社の幹部であり社長ですらない。そこだけを見れば、先方の娘さんをお前と結婚させるメリットはないだろう」


「そうか……………あ、親父は情けなくなんてないからな。俺達をこの歳まで育てる為に一生懸命働いてくれているんだ。社長じゃなくたって、かっこいいと思う」


「っ!?ふ、ふんっ!言うようになったな、小僧!」


「お父さん。嬉しすぎて、どこぞの巨大狼みたいな口調になってるわよ」


「う、嬉しくなどないわ!!」


「顔がニヤけてるわよ」


「へっ!?ほ、本当か!?」


「嘘」


「お、おい!母さん!!」


「とにかく、塔矢。そういうことだから…………あなたももう高校二年生。今すぐにとは言わないわ。でも、今回のこれをキッカケに将来のことを少しずつ決めていってくれたら、私は嬉しいわ」


「……………」


「ごほんっ……………話は以上だ。じゃあ、夕飯にでも」


「いや、まだだろ」


「ん?」


「肝心の婚約者が誰なのか、俺は聞かされてない」


「「……………」」


俺の訴えに対して、何故かバツの悪そうな顔をする両親。その理由は直後、親父の口から発せられた言葉にあった。


「実はな、先方から婚約者の正体を明かさないで欲しいと頼まれたんだ」


「……………は?何だ、その話!!無茶苦茶じゃないか!!」


「いや、まぁ、その、なんだ……………お前の困惑した気持ちは非常によく分かるんだが」


「じゃあ、何か?俺は誰なのか分からない奴と将来を共にすることになるってことか?意味分かんねぇよ!!」


「と、塔矢。落ち着け」


「これが落ち着いていられるかよ!親父も親父だよ!何でそんな話を受け入れたんだよ!!俺の将来が懸かってるかもしれないんだぞ!!」


「……………すまん」


「はっ!お笑い草だな!乗り気の癖して、正体を明かせない婚約者……………どう考えても人として問題があるとしか思えないだろ!!」


「塔矢、一つだけ訂正させてくれ。お前が怒る気持ちは痛い程よく分かる。だが、お前の婚約者は決して人として問題のある方ではない。そこには並々ならぬ想いがあるのだ。それこそ、お前に負の感情を持たれてしまうことを覚悟した上でのこの決断なのだ………………責めるのなら、俺のことを責めてくれ。いくらでも気が済むまでそうしてくれ。だから、どうか……………お相手だけは責めないでやってくれ」


「………………」


「……………すまんな。ちなみになんだが正体は明かせないが、せめてこれだけはという情報だけ預かっている。聞くか?」


「ああ」


そして、この後、親父からの言葉を聞いた俺は言葉を失ってしまった。


「分かった。その婚約者なんだが、実は()()()()()()()()()()()()()()()()()そうだ。つまり、向こうはお前のことを知っているという訳だ」







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