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Episode.11 親父からの電話

週明けの月曜日。いつものように三人で学校まで向かっていると少し先に玲華が立ち止まっていることに気が付いた………いや、あれは立ち止まっているというよりも誰かを待っているといった方が正しいか。それに加えて、さっきからソワソワと落ち着きのない動きを繰り返しながら辺りを見回していた。


「何やってんだ、あいつ」


俺は不思議そうにそう呟いたのだが、同行者その一である光はそうは思わなかったようで玲華の存在に気が付くと大声を上げながら、彼女目掛けて駆けていった。


「玲華、おはよう!!」


「うん。光、おはよう」


「ちゃんと待っててくれたんだね!!」


「だって……………約束したから」


「玲華、おはよう」


「おはよう、依代さ…………玲華」


「おはようございます、塔矢先輩にみ、美鈴先輩」


光よりもやや遅れて玲華の元まで辿り着いた俺達が挨拶すると彼女は若干、顔を赤くして挨拶を返してきた。たぶん美鈴の名前を呼ぶのに緊張しているからだろう。美鈴も美鈴でどこか緊張しているみたいだし。まぁ、ファミレスの時は盛り上がってたから、まだいいとして落ち着いたら、急にぎこちなくなるアレだな。


「何だ、お前ら。待ち合わせしてたのか」


「へ〜あんた達、いつのまにそんな仲良くなったの?」


しかし、流石は切り替えの早い美鈴。どうやら、光と玲華の関係が気になるようだ。


「実は昨日、玲華と沢山友情を育んだのであります!!」


「へ〜……………そういえば、昨日は朝から光がいなかったな。二人で遊んでたのか」


「はい」


「聞いてよ、お兄ちゃん。最初は玲華が色々と案内して欲しいって言うから私が先陣切って進んでたんだけど、途中で駄菓子屋が見えた瞬間、"ここは私に任せて"とか言って急に仕切り出したんだよ。このお菓子はどうだとか、あの青いガムはあまりお勧めはしないだとか」


「うっ…………」


あれ?その青いガムの部分って、一昨日俺が玲華に教えてやったような……………


「……………」


ふと気になって玲華を見るとタイミング悪く目が合ってしまい、彼女は顔を真っ赤にさせて俯いてしまった……………そうだよな。初めて知ったことは誰かに教えたくなるもんだよな。


「玲華……………楽しかったか?」


「っ!?……………はい!!」


俺は特にその部分には触れず、最も気になったことを訊いた。すると、玲華は少し間を空けてから笑顔で返事をした。俺はそれが嬉しくて、思わず笑みを浮かべていた。


「お兄ちゃん?私の話、ちゃんと聞いてる?」


……………やべ。







学校でも玲華と光は仲良くしているようだった。どうやら、たまたまクラスも同じだったらしく放課後を迎える頃には親友レベルの仲にまでなっていた。とはいっても学食でのことやファミレス、そして昨日のことがなければ、ここまで仲良くなれたかは正直分からないと下校の際に二人から聞かされた……………とまぁ、ここまでは平和で微笑ましいエピソードなのだが……………


「で?話って何?」


今、俺が立たされているこの状況はさっきまでとは打って変わって非常に緊張感のあるものだった。実は一週間前に親父から電話があったのだ。曰く、"お前に話がある。一週間後に帰国するから、そのつもりでいろ"とのことだった。そうして、やってきた一週間後の今日。俺と光、両親はリビングの食卓で久しぶりに顔を合わせていたのである。


「帰ってきたばかりの親に対して、言うことがそれか」


「さっき散々、おかえりだの、久しぶりだの言っただろうが」


「ふんっ。まぁ、ボンクラ息子からの言葉なんぞ本来は必要ないんだがな。俺には光という可愛い娘さえいればそれでいいんだ」


「そうだろうよ。さっきの親父の顔酷かったもんな。娘に迎えられて、気色の悪い笑み浮かべやがって」


「う、うるさい!!お前も娘を持てば俺の気持ちが分かる!」


「嫌だ!そんなの絶対に分かりたくないね!」


親子の再会から早三十分。俺達は早速、いがみ合いをしていた。


「お父さん、素直になりなさいな。塔矢のことも光と同じくらい心配だったのでしょう?」


「ふ、ふんっ!誰が心配などするか!」


「あらあら。どうやら、していたのは心配じゃなくて信頼なようね。塔矢だったら、大丈夫だと」


「な、何故そうなる!?」


「だって心配はしていないのでしょう?だったら、それしかないじゃない……………光?塔矢はちゃんとお兄ちゃんしてくれたかしら?」


「うん!お兄ちゃんはいつも私のことを気にかけてくれて、助けてくれたよ!!」


「ほら」


「ぐぬぬ」


流石はお袋。昔から親父はお袋に口で勝てたことがないんだよな。


「ごほんっ……………それで話だが」


「あん?もういいのか?感動の再会を祝わなくて」


「茶化すな!!俺の方が折れてやってるんだから、素直に感謝して話を聞け!!」


「どこが折れてるんだか……………まぁ、いいや。それで?」


俺の問いかけに数回咳払いをした親父は改まってこう言った。


「言ってなかったが、実は……………お前には婚約者がいるんだ」









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