PKを目指す者と種族を滅ぼす者
すみません遅れました!
焦っていたのでミスあるかもです。あったら教えて頂けると幸いです。
「ようやく……見つけた……それにしても、ここまでの道のりでモンスターに一切会わなかったけどなんでだ? ま、いっか。倒しても素材売る方法ないし」
そう呟くゼロの目の前には登ることを諦めさせる程の切り立った絶壁が遥か高くまで続いていた。
だがゼロの目的はその壁では無い。
「にしたって鍵の大きさに対しての扉、デカすぎだろ」
鍵が手の中に収まる程度だったのに対して、その扉は横に4メートル、縦に10メートル程の無骨な扉だった。この扉こそゼロがゲーム内時間で1時間半程歩き続けてようやく見つけた、骸骨から拾った鍵の扉だった。
ゼロはそんな扉に付いている鍵穴に鍵を差し込んで回す。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」
扉は鍵を差し込んだ瞬間凄まじい音を響かせて自動的に開いていった。扉が錆び付いていたせいか、完全に開き切る前に開くのが止まってしまったがゼロは構わず入っていった。
ゼロが中に入ったところで扉はまた動きだし完全に閉まってしまった。
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「あ!ようやく光が見えた!」
扉が閉まっても取り乱さずにゼロは歩いていた。
だが、その通路は光が一切無く、ゼロも壁に手を当てながらでないとまともに歩くことの出来ないこの通路には辟易していたのだ。
「これでこの通路も終わりか。もう何分歩いたか分からなくなってきたし、こんな所にあるんだから何かしらはあると思うんだけど……それはモンスターなのか、はたまたアイテムの類なのか……」
そう呟くゼロの目の前に見えたのは明らかにモンスターでも無ければアイテム等でも無かった。
「人……?」
「誰?あなたの事を私は知らない。いや、誰でもいいからお願いがあるの……私をここから出して?」
そこに居たのは腕と足を鎖によって壁に固定された少女だった。歳は見たところ15歳ほどでゼロの使っているアバターと同じ銀髪。違うのは目が金色なところだろうか。
部屋の全貌は薄暗いので分からないが、狭くない事は確かだ。最低でも横は15メートル天井までは9メートル近くあるだろう。床には魔法陣の様な模様が書かれており、そこから青白い光が出ていた。
そして彼女が話終わると目の前にまさかの物が現れる。
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【ユニーククエスト:謎の少女の願い】
依頼者:???
報酬:???
その少女はこの場所で長い間囚われていたのだろう。
貴方の選択が貴方の未来にも大きな変化をもたらすでしょう。
※一度頼みを断れば二度と彼女は貴方に頼ることは無くなります。
クエストを受注しますか?
Yes/No
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(え?クエスト?てかユニークってなんだよ!)
内心とてつもなく驚いていたが、少女が話し出したのに気づき、すぐに気持ちを切り替える。
「私はここから出たいんです」
「その理由を聞いても?」
どんな事を言ったら不味いか分からない以上ゼロは子供と話すように丁寧な口調で話すことに決め、まずは色々と情報を集めようと考えた。
だが、彼女から帰ってきた答えは耳を疑うようなものだった。
「私は人間と吸血鬼を滅ぼしたいんです」
「え?」
こんな少女からそんな物騒な答えが帰って来ると思って無かったゼロはついつい素で聞き返してしまう。
「何か可笑しいですか?」
「可笑しい話ではありますね。人間に、人間を滅ぼしたいから出してくれ。なんて頼むのは」
「……?」
だが、それを聞いた少女は何が可笑しいのかまるで分からないといった表情をしながら、またも衝撃的な発言をした。
「でも、あなたは悪魔……ですよね? だから関係ないはずです」
「おい、なんで分かるんだよ」
驚きすぎてとうとう素で話してしまうゼロだが、まるで気にしないようにゼロの質問に答える。
「私は"吸血鬼"ですから、悪魔の様な強い邪悪の気配なら感じ取れるんですよ」
そこまで言われてゼロは納得する。よく考えてみれば【悪意の体現者】の効果でゼロは魔に属する者以外の世界人からは問答無用で嫌悪される様になっているので、自分に対してここまで普通に話しかけてくるだけで少女が普通の存在では無いことなど容易に想像がつくのだ。
(てか、説明にあった"闇に近づく"ってこれの事か?)
「それで、私の事を出してくれますか?」
思考に耽っていたゼロを無視して再度来たこの質問。だが、ゼロは普通に受けていいものか考えていた。このゲームはただのゲームではなく、もはや"もう一つの世界"と呼べる物だ。
(ならこの少女をただのNPCだと思って受け答えたらダメなんじゃないか?)
少し悩んだゼロはひとつ賭けにでる。
「お前は……ここから出たいと言ったな?」
「はい。そうですが……」
「なら、取引だ。お前を出してやるが、その代わりに俺の物になれ」
「え?」
ゼロはとても、現在進行形で鎖で繋がれている少女にはしないであろう取引を持ちかけた。
「俺の物になれと言ったが別に奴隷になって欲しい訳じゃない。俺もある理由で異界人を殺して回らないといけなくてな、そこに世界人が加わったとしても、お前みたいに強い奴が手を貸してくれれば元が取れると思っただけだ」
ゼロが少女を強いと言いきった理由はゼロが少しでも詳細な情報を得るために少女を鑑定していたからだ。その結果がこれだ。
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Name リア Lv104
種族 吸血鬼男爵級 Lv4/100
職業 吸血姫<停止中> Lv92/100<停止中>
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まさか姫様だとは思ってなかったが、その実力は確かだろう。ゼロは最悪、一時的でもいいから強い仲間を手に入れようと考えていた。
「すみません。異界人というのは?」
「え、知らないの?」
「はい」
ゼロとしては異界人というワードはこの世界の人の共通ワードだと思っていたので驚いたが、少女……リアに懇切丁寧に異界人という存在を教えた。
「なるほど、死んでも蘇る人間……」
「まぁ、俺も異界人の一人ではあるけどな」
「……? なんであなたは同族を殺すんですか?」
「それはお前もだろ」
そうゼロは言ったが、それは当然の疑問。これに関しては現実の世界にいる人間達も思っているだろう。
『なぜPKをするのか?』
その質問にゼロは何を言ってるのか分からないような表情して言った。
「"何故同族を殺すのか"なんて答えは一つだろ。 自分のため以外に何があるんだよ?」
自分が楽しければ、生きれれば、他の人の事を考えない。当然の事ではあるが常人なら躊躇うような事。それをゼロは平然な顔をしてやる。だからこそゼロはとてつもなくPKに向いていた。
「へぇ……自分のために他者を切り捨てる。正しく"悪魔"の様な人ですね。私も要らなくなったら捨てるんですか?」
リアはそう笑いながらゼロに問いかける。
それは、答え方によってはその後が大きく変化するであろう質問。だがゼロは即座に言い切る。
「俺とお前がするのは契約だ。契約を無視するようなゴミじゃねぇよ」
そう言ったゼロを見たリアは笑う。
「貴方様なら私は二度と裏切られなさそうですね」
「ああ、約束してやる。俺はお前を裏切ったりなんかしねぇよ。てか、その呼び方」
「はい。私、リアは貴方様の下につきます。その代わりに人間と吸血鬼を私は滅ぼします」
「なら、俺ことゼロはお前が人間と吸血鬼を滅ぼすのを手伝う代わりに、俺の異界人狩りを手伝って貰うぞ?」
お互いに"契約"の内容を確認しあった二人はここからの脱出の作業に入る。
「この鎖どうやって壊せばいいんだ?」
「この金属の鎖は普通のものなのですが、つけている者の力を奪う様になっています。そしてこの鎖は床の魔法陣によって保護されています。なのでまずは下の魔法陣を壊さないと…」
「わかった」
そう一言言ったゼロは拳を下に叩きつける。だが……
「かっっった!」
「下の土台は魔力の通った攻撃以外には強い素材で作られてるんですよ」
「うげっ」
ゼロがそう言ってしまうのも、ゼロの魔術は全てレベル1なので使える魔術が弱いのだ。だからこそ最初にステータスで殴れる物理を選択したのだが……
「やばい、壊せないかも」
「ゼロ様、拳に魔力を纏わせては?」
「そんな事できるの?」
「はい」
そこからゼロはリアの説明を聞いた。
なんでも魔術を使うのと同じ様に魔力を身体を通して拳に纏わせ、それをキープすればいいらしい。
(むっずいなぁ!)
ただ、魔力なんてのを扱った事のない現代人には魔力の操作なんてした事がないので、なかなか上手くいかなかった。
(魔力を流してそれが拳までいったらキープ。言葉で言うと簡単なのに感覚が掴めないんだよなぁ)
そんな風に悩み続けるゼロを見てリアがひとつアドバイスを出した。
「魔力は拳の所で循環するようなイメージをするとやり易いかもしれません」
「拳で循環……」
そのイメージを持って再挑戦した時にゼロの拳に魔力が纏わり、通知が届く。
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スキル[魔力操作][魔力循環]を習得しました
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「来た!」
ゼロはその手に渦まく魔力を制御しながらその拳を地面に叩きつける。
ドゴッ!
鈍い音と共に地面は割れて魔法陣の効力は失われる。
「よし、じゃあようやくコレでリアの鎖を外せるな」
「お願いします」
ゼロはその鎖に触れて……砕く。
リアの体は力を失った様に地面に倒れそうになるが、ゼロが即座にリアを支える。
「コレでお前は俺の物だ。よろしくなリア」
「はい。これからよろしくお願いします」
リアがそう言ったとき祝福を知らせる様な音が鳴り響いた。いつの間にクエストを受注していたのか自分でも気づかなかったが、クエストをクリアした事になったようだ。
だが、ゼロの驚きはそこで終わらない。
<祝!・たった今ユニーククエストをゲーム内で初めてクリアした人が現れました!
コレによりクエストについての情報が一部解禁されます。
それでは皆様、よいAWOライフを>
それは多くのプレイヤーに驚きを与えた。
ベータテスター達でさえ見つけていなかったユニーククエストという存在を見つけて、しかもゲームが始まってからここまでの短時間で攻略したのは誰なのか?その疑問で掲示板は溢れることになる。
だがベータテスター達の先を行った人物がPKを目指す者だとは、この時のプレイヤー達はまだ誰も知らない。
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