謎の鍵
レベルの表記をステータス上では"Lv"と表記するように変えました。
「本当にここ街からどのくらい離れてるのか分からないな」
ゼロはそう愚痴を言いながら右を向いても左を向いても木々が生い茂る森を自分が飛んできた方向と逆方向へ歩いていた。
「町のある方に行ってもどうせ町には入れないし、もしあの騎士がこっちまで追ってきてたら次は逃げられないかもだし……あの途轍もなくでかい山脈まで行ってみるか。早く金を稼がないといけないのに……あ、その前に職業をセットしてなかったな」
職業の欄が未だ空白なことに気づいたゼロは職業の一覧を出す。
(初期の職業だから数自体は少ないな……ん?)
ゼロはよく他のゲームでも聞きそうな職業の中に一つ異質なものがあるのに気が付いた。
(剣士や闘士、下級魔術師の並びで【悪意の体現者】ってなんだよ。てかこいつだけ書かれ方も違うしどうなってるん……あぁ、種族が原因なのか)
ゼロはその職業をタップして説明を開くと納得した。
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【悪意の体現者】…悪意、邪悪、悪辣、全ての悪たる悪魔のみに許された職業。稀少職業
魔に属する世界人以外の全ての世界人から嫌悪される。
カルマ値が上がりやすくなる。
異界人及び世界人から手に入る経験値2倍。闇に関するスキルの取得必要ポイント数減少(ただし0にはならない)
闇に近づく。
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(スキルの説明でもあったけど"世界人"ってのはこのゲームのNPCのことでいいよな?最後の"闇に近づく"ってのが最高に不安を煽って来るけど、それ以外は気にする必要ないな。稀少職業ってのも凄そうだしプレイヤーから手に入る経験値が増えるならそれだけでも選ぶ価値あるし、コレにしよ)
そしてようやく全ての設定が終わったゼロのステータスがこれだ。
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Name ゼロ Lv1
種族 下級悪魔 Lv1/10
職業 【悪意の体現者】 Lv1/100
MP 148/148
SP 185/252
ステータス
STR 100
VIT 26
INT 50
MID 24
AGI 100
LUK 0
スキル
・武術系
[拳術Lv1][投擲術Lv1]
・魔術系
[風魔術Lv1][闇魔術Lv1]
・その他
[鑑定Lv3][気配察知Lv2]
職業スキル
【悪意の体現者】
種族スキル
《悪辣心》《悪の象徴》《神の冒涜者》《悪魔翼生成》
STP 0
SKP 1
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因みにスキルポイントで取得したスキルの説明は以下の通りだ。それと職業スキルは職業の説明文通りの効果だったので省く
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[拳術Lv1]…拳を使った戦闘時威力向上(スキルレベル×2の値だけ増加)
[投擲術Lv1]…物を投擲した時の威力向上(スキルレベル×2の値だけ増加)
[風魔術Lv1]…使用可能魔術・強風・風球
[闇魔術Lv1]…使用可能魔術・暗闇・闇球
[鑑定Lv3]…相手の情報を読み取れる(スキルレベル×使用者のレベルの値と相手のレベルとの差によって見える範囲が変わる)
[気配察知Lv2]…周囲の気配を察知できる(スキルレベル×半径5メートルの範囲を感じ取る)
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「鑑定と気配察知はさっき使ったからレベルが上がってるな。……しかし改めて見ると凄いステータスだな。まぁ、悪魔はLUK以外の値が2倍になるから当たり前だけど」
ゼロは他の同じレベル1に比べて圧倒的にステータスが高かった。それもそのはずで、最初のステータスポイントで1.5倍、そして悪魔の特性上LUK以外が2倍。結果本来のレベル1より3倍のステータスを持っていた。
「MPとSPの算出方法はそれぞれ関係するステータスの合計の二倍で出してるのか?このゲーム公式がレベルに限界は存在しないとか言ってたような気がするんだけど……いつかトッププレイヤーの強さやばくなるんじゃね?」
そんな独り言を喋りながら歩いているゼロの目の前に不思議な物が見えた。
「なんだこれ?潰れてるけど車輪あるし乗り物か?……もしかして馬車?」
ゼロが見つけた馬車らしき物の上部の布には何かに引き裂かれたかの様な跡が残っており、車輪は壊れ、木片は辺り一帯に散乱していた。
「こんなのがあるなら周りに人がいてもおかしくないけど……ん?」
その時ゼロは木にもたれ掛かるように倒れ込んでいる何かを見つけた。それはモザイクがかかった様になっており人かどうかもよく分からない。
「何コレ? 人……なのか?」
なんでこんなモザイクみたいなのがかかっているのか不思議なゼロだったが、公式からこのゲームを始めた時に強制的にかかる設定があったのを思い出した
「そいや、痛覚設定と過度グロテスク規制設定っていうのがあったなぁ。確かに《飛翔》のスキルを解除した時に地面にぶつかったけど痛みが少なかったわ」
納得がいった様に頷きながら、設定の画面から痛覚設定の緩和設定をoffにして痛覚をリアルの100%に、過度グロテスク規制設定をoffにする。
警告文と共にこれら二つをoffにする事を了承する為のサインを求められたので即座にサインをして設定画面を閉じる。
「うわー骸骨だったのか」
設定をoffにした事でハッキリと見える様になったその遺体を見てつい驚きから言葉を零してしまったが。ゼロは、
(もしかしたら何か持ってないかな?)
と考え骸骨の服の中などを探す。
(祟らないでくれよー俺としては少しでも金が欲しいんだ……お?)
骸骨の服から出てきたのはひとつの鍵だった。
「無骨な鍵だな。何処で使うんだ?」
ゼロはそう思いながら遺体から離れて馬車を見る。
(この馬車は向きで言うなら俺が歩いてきた方向に向いているし、最初の町に向かうところだったのか? でもなぜこんな森の中を?)
ゼロは不思議に思ったがいくら考えても馬車に乗っていた人物がどんな人かも分からない状況では結論が出るはずも無く、とりあえず馬車が来たと思われる方向に行くことにした。
(金があったらいいんだけどなー)
普通のゲーマーならワクワクしそうな物だが、この男の頭の中にはお金の事しか無かったために、一切の緊張感なく森の奥へと進んでいった。
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