悪魔の囁き
これ書いてる時に本当に出していいか悩んだんですが、このまま出します。
今回の話には作者の考えが多く含まれております。見る人によっては批判されるかもしれませんが、その類は全て感想にお書き下さい。
全て読ませて頂きます。
「ふーん。それで?」
「……なに?」
「だから、それが何だって聞いてんだよ」
ゼロが男の……"ゼノ"の話を聞き終えて出てきた第一声はこれだった。
「分かるだろ?俺が騎士に勝ててれば……いや、俺が騎士に屈しなければ、民は生きていたんだぞ!」
「だから?それが出来なかったから死んで償いますってか?アホか」
「ッ……!」
ゼノにとって自身の過去が、死んでまで償おうとしていた事をゼロは"だから?"なんて適当な言葉で流した。
それは勿論ゼノの逆鱗に触れてしまう。
ガァン!!
凄まじい力でゼノを拘束する鎖が引っ張られる事で金属が衝突しあい、それにより発生した音が辺り一帯に響き渡る。
「お前!それ以上口を開いたら……」
「あ?開いたらなんだ?」
「ッ……!?」
だが、ゼノに譲れないものがあると同時にゼロにも譲れないことがある。今回のゼノの発言が正にそれだった。
ゼロはゼノに対して威圧をして黙らせると話を続ける。
「お前があれこれ言う前に先に言っておいてやる。……人の命を何だと思ってんだ?」
「なんだと?」
ゼロは真剣な顔でゼノを見つめながら自論を語りだした。
「これは俺が勝手に思ってる事だからお前がどう思おうが勝手だけどな?……俺にとって自分から望む死ほど悍ましい物はねぇと思ってんだわ」
「……」
それはゼロが今まで誰にも話した事の無い自分の中での価値観。ゼロが以前にテールの街でアドラと戦った事で生まれた"決意"だった。
「痛みってのは単純に目に見える物だけじゃ無い。心や過去、人間関係や大事な物の損失などなど……色んな物に発生する。だけど、その痛みから逃げる方法が全ての人間には等しく用意されてる。それが何かお前に分かるか?」
「…………"死ぬこと"……か?」
「そうだ」
ゼロは口元に笑みを作るとその場に座りゼノと視線を合わせて語る。
「"死"ってのは便利な物だよな。自分が痛みに耐えられないと思った時に真っ先に選択肢に出てくるほど"手軽"に"本能的"に出てきちまう。だけど俺はそんな選択肢を選ぼうと思った事が今までは無かったんだ。だからそんな選択をする奴の気持ちなんて真には分からなかった。この前まではな」
「……」
ゼノは口を挟むことが出来なかった。目の前のゼロの言葉の一つ一つにある種の説得力を感じてしまっていたから。
「俺は前に無理をし過ぎて聖騎士に殺されかけた事があってな、その時に真っ先に考えたのは痛みから逃げることだった。俺は異界人でお前は世界人……考え方が根本から俺たちは違う。実際に、その時取ろうとした選択は"死ぬこと"じゃ無かった。だが、それでもその時の選択は"死ぬこと"と大した違いは無いと思ってる。そう思う様な事を俺はしようとしたんだよ」
それはかつて"痛覚設定"を切ろうとしたあの時思った事。これから先、絶対にしてはいけないと感じた事。
「痛みから逃げる事は"良いこと"事じゃない。それはただ"諦めた"だけだ。お前がしようとしてるのは"罪の償い"じゃなくて"罪からの逃亡"だ」
「っ!それは……」
「目を背けるなよ……ゼノ。お前がするべきなのは死ぬことじゃ無くて生きて謝り続けることだ。……自国の民にな」
ゼロは最初、PK行為を『所詮ゲーム内で人を殺して金を手に入れるだけ、犯罪でもなければ怒られもしない簡単な事』だと考えていた。だが、このゲーム内でプレイヤーをNPCを殺し、金を奪った事でゼロの中での価値観が少しだけ変化した。
『殺したのはゲーム内であり、罪には問われない。だからと言って殺していい理由にはならない』
ゼロにとってこれはゲームであり、この世界でいくら犯罪を起こそうともリアルに影響は微塵もありはしない。だが、"この世界の中"で見ればゼロの行動は犯罪行為である。だからこそ、それを忘れない為にゼロがしているのが、殆どのプレイヤーが行っている"痛覚設定のoffをしない事"だった。
ゼロにとってプレイヤーもNPCも等しく殺さなければ、その先に待っているのはリアルの自分の死である。だからこそゼロはPKを止めたりはしない。その代わりに痛覚を自身も感じることで、死んでいったNPC達やプレイヤーの痛みを自分も感じる。それが、ゼロなりの死者への"感謝"だった。
「ゼノ……俺はお前を殺したりはしないし、お前が死ぬことも許さない。だけど、ある事なら手伝ってやれる」
「……なに?」
ゼノは今までのゼロの言葉によって自分のすべき事が分からなくなっていた。頭では"死んで償うべき"と考えているが、体が言うことを聞かない。ゼノの頭の中は真っ白になっていた。
そんなゼノにゼロから出されたのはゼノが考えもしなかった提案だった。
「復讐だ。聖騎士の連中諸共、人間を皆殺しにしようぜ」
「なっ……そんな事は……」
「出来ないってか?ならその顔は何だよ」
ゼノはその時言われて初めて自身の顔がどうなっているかに気がついた。
笑っていたのだ、人類を殺すと聞いて。
「考えて見ろよ、お前の同胞を殺したのは誰だ?」
「聖騎士だ」
「聖騎士を擁している組織は何だ?」
「聖教会だ」
「聖教会はなんの組織だ?」
「……人が作った"光の女神"を祀る教会だ」
それはこの世界に生きる者ならば知っている当然の質問。それをゼロは一つ一つゼノに思い出させるように問いかけていく。
「なら、その教会が……"光の女神"が起こした罪は誰が償えばいいと思う?」
「それは……」
「簡単だろ?自分達に償わせるんだよ。聖教会にな」
「っ!」
ゼロは口元の笑みをより深くし、ゼノに再び問いかける。
「やってやろうぜ。アイツらの崇める神様とやらを殺して思い出させるんだよ。アイツらの罪を」
それは常人ならば"不可能"だと断じるような悪魔の囁きだった。
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