外道騎士
聖騎士が良い奴ばかりだと思ってはいけない。
現代の日本でも同じことが言える部分があるかも?
自分はまだ学生なんで知らないっすけど
( '▽')?
ゼノは自惚れていた。
周りのゼノを持ち上げる言葉に踊らされ、自身が強いのだと、誰にも負けない英雄なのだと、己こそが鬼人族"最強"であり自身の行動が"正義"であり、"最善"なのだと思い上がっていた。
その思い上がりのツケが一気にやって来る。
◇━━━━━━━━━━━━━━━◇
「ぐっ……がっ!」
「なんだ、相当な覇気を放っているから強いのかと思っていたが……この程度か」
結果はティアの圧勝。
ゼノはティアに指一本触れることすら出来ずに負けてしまった。
ティアが得意とする戦い方は相手を速度で圧倒し、その鋭い斬撃によって徐々に相手を追い詰める事であった。だが、ゼノはそのスキルの性能上ありとあらゆる傷を治す。その上、鬼人族本来の肉体の強度に加えて固有スキルの効果が乗ることで圧倒的な耐久性能を誇っていた。
高速戦闘を得意とするティアと圧倒的な防御力と再生能力で耐久戦を仕掛けるゼノとでは相性が悪すぎる……はずだった。
だが、結果は違う。ゼノは今もなおティアによって地面に縫い付けられていた。
「お前にもう少し速度があれば結果は違ったかもしれんが、お前は少々遅すぎる」
「ぐっ……」
ゼノの敗因はたった一つ、速度が足りなかった事だった。
例えばAGIのステータスが100の者が100メートルを走るのと10の者が100メートルを走るのとでは勿論前者が勝つ。
では、これが武器を使った攻撃ならどうなるだろうか?
これの演算は文字に起こすと大変なので、少々分かりやすく噛み砕いて説明すると、まずAGI。これが早い方が勿論だが攻撃速度も上になる。このゲームにおいてAGIとは足の速さの数値では無く、行動の速さを指すからだ。元々AGIとはAgilityを指す言葉なので、そこから派生し、全ての行動の速度を上げるステータスとなっていた。
だが、これだけで武器を振る速さが決まる訳では無い。分かりやすく言えば、武器とは腕の筋肉を使い、足の筋肉に伝え、体全体の筋肉で振る。この一連の動作を行う過程で必要になってくるのはSTRと武器の重さである。
勿論武器が無ければ腕を引いて放つだけなので問題無いのだが、武器があればそれを振り上げて振り下ろす。その動作に筋力と武器の重さが関係してくるのは言わずもがなである。
それを念頭に置いて今一度ティアとゼノについて考えるが、ゼノはティアの言う通り"速度"が足りていなかった。
彼の戦闘スタイルは先述した固有スキルを使った耐久戦及び、カウンターを狙う戦い方……所謂ゲームで言う所のタンクである。
だが、ゼノにとって誤算だったのはティアが速すぎるあまりカウンターが一発も当たらないという事だった。いくら彼がティアに合わせて腕を振りぬこうとも、その刹那でティアは数メートル後ろへと跳躍し回避する。
結果、ゼノは消耗を強いられるが、ティアは余裕がある。といった状況が出来上がってしまっていた。
だがそれだけでは直ぐに決着はつかない。ゼノは固有スキルの力で極限まで"死ににくくなっている"のだから。
だが、それを予見したティアは、残酷であり、間違いなくゼノに有効的な一手を打つ。
それは戦士としては最悪の行為であり、勝負の世界では文句の言えぬ戦い方だった。
「しょうがない……アイツらを連れてこい」
そうティアが他の騎士に命令を飛ばすと騎士は急いである者たちを連れてきた。その者とは……。
「ゼノ……様……」
「助……け…て」
「死に……たくな……」
「なっ……!?人質だと?お前、それでも騎士か!」
民の人質。
第一王子であり、時期国王となるゼノにとって自国の民を簡単に見捨てる事は出来なかった。
ゼノはティアへの攻撃を躊躇する。そしてそれは致命的な隙となり、ゼノへと牙を剥く。
「動揺したな?」
「ッ……!?」
「遅い」
ゼノが民を人質に取られた事で攻撃を躊躇した次の瞬間、ティアはゼノの背後へと回り込み剣を上段へと構える。そして……。
「"閃"」
「かはっ……」
背後からの研ぎ澄まされた剣による袈裟斬り。それは普通ならば人一人簡単に殺せるであろう威力が込められていたが、それでもなおゼノは生きていた。
背後から斬られたゼノは地面に倒れ伏す。
そしてその上からティアはゼノの腹部に剣を突き刺し、ゼノを地面に縫い付けた。
「ぐっ……ふっ」
「滑稽だな?鬼人族の王子よ」
ゼノが動けば間違いなく民が殺される。だが、動かなければ王族として自国の民に面目が立たない。
そんな葛藤の中、動けないゼノにティアが耳元で笑いながら一つの提案を囁いてきた。
「お前にチャンスをやろう。民を助けたければ自身を差し出せ」
「なに?」
「いやなに、私達の目的は貴様の首だからな」
その提案はゼノが王子として最もやってはいけない最悪の選択であり、ゼノとしては誰も傷つかない最善の選択だった。
このままでは全員殺される事になる。だが、自身の首ひとつで民が、王国が助かると言うならば、ゼノは進んでその首を差し出す。ゼノはそんな自己犠牲に溢れた優しい人物だった。
だからこそ……そんなくだらない精神を持っているから、人は悲劇を生み出す。
「………………わかった。俺の首一つで民が助かるなら本望だ」
「あっはっは!立派な自己犠牲の精神だな。見直したよ」
ティアはそう言うと他の騎士にある物を取りに行かせた。
帰ってきた騎士の手にあったのは無骨な装飾のされた手錠であった。
「これをお前が着ければ私達は帰ろう。さぁ……抵抗はするなよ?」
カチャカチャ……ガチャン
そう音がなると同時にティアがゼノの上から立ち上がった。そして、他の騎士へと命令を下す。
「よし、残っているこの国の民は……」
そこまでティアは言うと、その整った顔を歪ませて高らかに宣言する。
「皆殺しにしろ」
「「「ハッ!」」」
「なっ……お前!何を言って……」
次の瞬間ゼノの目に飛び込んできたのは先程人質に取られていた人々であった。
「あ」
鮮血が飛び散る。
肉が引き裂かれ、臓物が飛び出る。
声も出なくなったその死体を蹴り飛ばし、死者への冒涜までやってのける。
その姿は凡そ"聖"騎士などとは言えぬ、外道の姿だった。
それはまるで……。
「悪魔……どもが」
ゼノは次の瞬間、突如眠気がやってきて、そこで意識を手放した。
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