"絶神撃"
もうすぐこの章も終わりが近づいてきましたね。
次の章の予定は立ててますが、章終わりに一応3日ほど投稿を休むとだけ伝えておきます。2日くらいで帰ってくるかもですが……
ゼロの拳とアドラの剣が衝突する。
普通なら切られるはずのゼロの腕はアドラの地をも割る剣撃を真正面から相殺する。
「なぜ貴様の腕が斬れんッ!」
「攻撃こそ最大の防御って言うだろッ!」
拮抗した戦い。スキルによる強化があるとはいえ、未だ圧倒的レベル差があるのにも関わらず、ゼロはアドラと互角の戦いを演じていた。
理由は主に二つ。
アドラのステータスが"騎士"として完成されている物だと言う事と、ゼロは"防御"ではなく"攻撃"によってアドラの剣撃を相殺していたからだ。
アドラは確かに強い。だが、ステータスを見るとアドラが普段は見せない明確な弱点が見えてくる。
アドラは聖騎士団の団長だ。聖騎士団の主な仕事は聖教会の神殿の守護。その為、スピードよりも防御力を意識したステータスが望ましいとされるのだ。
実際、アドラはSTR、VIT、MIDは高いが、その他のステータスは同レベルよりも低い。その為、ゼロでもアドラと戦うことが出来ていたのである。
だが、それだともう一つの疑問が残る。
"なぜゼロはアドラ攻撃を真正面から拳で相殺出来ているのか?"
その秘密はゼロが『邪神気解放』によって強化した、《神の冒涜者》が関係していた。
《神の冒涜者》には"神やそれに連なる者に対して与えるダメージが上がる"という効果が存在している。ゼロはこの能力を『邪神気解放』によって強化する事で更にダメージの底上げを行った。
ここで一つAWOのシステムを解説しよう。
AWOでもし、攻撃と攻撃が衝突した場合、本来発生するはずのダメージはどうなるのか?
どちらのダメージも発生しない?
どちらのダメージも発生する?
いいや、そんな単純な物では無い。
AWOはもう一つの世界と言われる程の完成度を誇るゲームだ。AWOにおいて攻撃の相殺は本来発生したはずのダメージや衝撃はAIが物理演算によって算出し、独自の方程式に代入、それによって求められたダメージや衝撃をそれぞれに付与する仕組みを取っていた。
ゼロはアドラの剣を真正面から殴る。
もしこれが普通の剣ならば、ゼロの手はたちまち斬られていたかもしれない。だが、この剣は違った。この剣は光の女神がアドラに送った聖剣であり、この剣もまた《神の冒涜者》の効果範囲に含まれていたのである。
"偶然"が重なる事で引き起こる、アドラの剣撃の相殺。
ゼロはスキルを重ねた事によって膨れ上がった圧倒的ダメージで自身の手が斬られるより先に……弾き飛ばす。
「小癪なぁ!」
「まだまだァ!」
アドラが剣を振り抜き、ゼロが相殺する。
何度も、何度も、何度も同じ光景が引き起こされるが、手を止めた方が相手に隙を見せることになる。
そうなれば待っているのは"死"あるのみである。
だからこそ手を止める事は許されない。どれだけ疲れても、どれだけ思考を巡らせても、手だけは動かし続け、相手への攻撃を止めることは無い。
「"羽々斬"!」
「"黒拳"!」
技と技がぶつかる。
だが、このまま行けばどちらが勝つのかなど誰の目にも明らかだった。
片や、攻撃が届かないとはいえ、未だ殆ど傷を負っておらず、余力を残す聖騎士長。
片や、攻撃を相殺こそすれ、攻撃に移ることが出来ず、時間経過で死ぬ事が確定している悪魔。
このままではゼロが負ける事になると誰もが思うだろう中、ゼロはその顔に笑みを刻み、アドラに宣言する。
「見切った」
そうゼロが呟いた瞬間……アドラの剣が逸れた。
否……逸らされた。
「な……」
目を見開き、手を止めてしまうアドラ。その視線の先にはアドラの剣の腹をしっかりと捉え、弾き落とすゼロの拳があった。
「見切った……だと?」
「ああ、そうだ」
「なら、これはどうだ!」
先程までと同じ様に繰り出され続ける剣撃の数々。だが、先程までと違う点が一つだけあった。
落とす。落とす。全ての攻撃を剣の腹に拳を当てて逸らし、最小限の動きでアドラの技を回避し続ける。
「な……なぜ…」
一度後ろに跳躍し距離を取ったアドラは驚愕と言わんばかりの顔でゼロに問いかける。
それにゼロは当然と言った表情で答える。
「アドラ、お前は全ての技がキレイ過ぎるんだよ」
アドラの剣は良く言えば正確であり、模範的。悪く言えば、型に嵌った面白みの無い剣だった。本来なら、剣術を学ぶ過程では習った型を基礎として、自分のやりやすい構えや技を研ぎ澄ませる。それが剣術なのだが、アドラは愚直にも型を極め続けた。結果、強くなったのだから文句は言えないのだが、その結果アドラの剣は型に嵌った堅苦しい、読みやすい剣となっていたのだ。
「なるほど……私の剣が綺麗すぎる……ですか。」
「ああ、もうお前の剣は俺には当たらねぇぞ」
その言葉を聞いたアドラは笑みを浮かべた。
「弱い犬ほどよく吠える……ならば、見せましょう。貴方が読みやすいと言った剣の極地を」
アドラがそう言うと共に周囲の空気が一弾と重くなる。
「見せましょう我がもう一つの"固有武技"を」
周囲の空気がアドラを中心に渦を巻く。
ゼロもその威容を見て感じ取る。……"防げない"と。
だが、それで諦めるほどゼロは弱くない。ゼロはその名に相応しい"悪辣な笑み"を浮かべて、アドラにバレないようアイテムボックスからあるアイテムを取り出す。
アドラが目を見開き、その力を解放する。
「沈め!"覇道せ…"」
パシャン
その名を言い切った瞬間に飛んでくるであろう最強の攻撃。防ぐ事は不可能。避ける事も厳しい。であれば、打たせなければいい。
「何ッ!?目が!」
「誰が態々受けてやるかよ」
ゼロは今まで殆ど使って来なかったスキル[投擲]を使い、ある物を投げた。
「目が……焼ける!」
それは、ゼロがルナから"アイテム換金機"をもらった時のアイテム整理で見つけた毒のポーション。
他のゲームなら分からないが、このゲームにはHPの概念が無い事も相まって毒が非常に強力なのである。それこそ、遥か格上にすらダメージを与えられる程に。
「お前の敗因は、俺の良心を過大評価し過ぎた事だ」
ゼロは即座にアドラとの間合いを詰める、アドラの間合い……クロスレンジの内側へ入り込む。
そして左足で踏み込み腰ダメに構えた右手を振り抜く。それは、あらゆるスキルのエフェクトが合わさり、黒い流星の如く迸る。
その技の名は……。
「"絶神撃"」
超至近距離に踏み込んでからの魔力によって限界まで強化した最高の一撃。
ゼロが[拳術]の武技である"拳咆撃"を独自にアレンジした技であり、強化に次ぐ強化で過剰なまでに増幅されたその一撃はアドラの防御を打ち破り、その衝撃を肉体内部にまで届かせた。
「ガッ……!」
アドラは声も出せずに後方に吹き飛び……木々を薙ぎ倒して止まる。
「どうだ、見たか?クソッタレが……」
そうゼロはアドラを鼻で笑い、そして、ゼロの視界は暗転した。
毒のポーションなんてあったっけ?と思ったそこの君!23話の"光の女神の怒り"を参照してくれたまえ!
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