リアの過去・悪魔降臨
ちょっとリアの過去複雑にしすぎて書くの難しくなるっていう、最悪の事態。
本当に疲れたぁ……今日の話は長めです。
遅れて申し訳ありませんでした!
リアはアドラに切られる瞬間、その武技に既視感を覚えた。
それは、テールの街での戦いよりも遥か昔の記憶。
それは、かつて……彼女がまだ王家であった頃……いや、彼女が王家を追われた頃の懐かしく、悲しき記憶。
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私の名はリア=カイン
いえ、もう既に王位は簒奪されてしまったので、今はただの"リア"となってしまいましたが……。
『カイン』とは、この世界で初めて生まれ、原初にして最強とまで謳われた最古の吸血鬼の名前です。はるか昔に悪魔達の王にして、魔人、鬼人、吸血鬼の三種族を纏め上げた『魔王』にも仕えていたという伝承がある程の人物なのですから、その強さは本物でしょう。実際、その血を受け継ぐ王家は他の吸血鬼より、特殊な力を持っているそうです。王家はそんな原初の吸血鬼であるカイン様の名を後世に伝え続ける為に名前の後ろに『カイン』と入れたのだそうです。それが私達、吸血鬼王家カイン一族の始まりです。
……ですが、その名を名乗ることはもう不可能になってしまいました。
父も母も兄姉達もその全員が奴の手引きした聖騎士達によって殺されてしまいました。罪状は悪魔への信仰心だそうです。
私はその言葉を聖騎士の人達から聞いても理解できませんでした。何故、そんな事で母が殺されないといけなかったのか。何故、そんな理由で父が民から暴言を吐かれなければならなかったのか。何故、その程度の信仰の違いで兄や姉が惨たらしく処刑されなければならなかったのか……。
「分からないよ……」
「王女様、気を確かに。国王陛下は貴女様に生きてほしいからこそ王城から貴女様を逃がしたのです。そのお気持ちを無碍にしてはいけません」
リアは自身の専属メイドのラナと共に森を歩いていた。彼女とはリアが物心付いた時からの長い付き合いである。
リアは数刻前、家族の助力によって聖騎士の軍から逃がされた所だった。だが、吸血鬼の国は既に占拠され、何処に行けばいいかも分からず、聖騎士の追手から逃げながら走り続けた結果、こんな辺境まで来てしまっていたのだ。
リアが逃げてきた方向を見ても、もうかつて住んでいた城はおろか、街の灯りも見る事は叶わない。
「はぁ……私……これからどうすれば……」
そう独り言をリアが呟いた瞬間ラナは後ろから気配を感じ取った。
「……ッ…誰っ!?」
ラナは気配がした方向を睨み、リアを守るようにリアの前に立つがそこには誰もいない。
「……気のせい…?」
「いえ、貴女の勘は素晴らしいですよ」
「…ッ!」
突如ラナは背後から掛けられたその言葉に反応して魔術を発動させ、リアを抱えて飛び退る。
「大渦槍!」
超至近距離から放たれる高速の渦の槍。
その一撃は背後の男に確実に当たると思われた。……だが。
「閃」
その文言と共に放たれた斬撃によってラナの魔術は撃ち落とされてしまった。
「な……なんでっ」
「なかなか強いですね……ですが、その程度では私には届きません」
「……っ」
急に現れたその男は薄ら笑いを浮かべてリアたちの前に立つ。
完璧な尾行。リアとラナに一切気づかれることなくここまで追ってこれるなど先程の剣の腕と合わせて考えれば男は相当な実力者なのだろうとラナは感じ取った。
「ふぅ……これほど危機的状況なのにも関わらず仲間の一人も来ない所を見ると……私の障害は貴女だけのようですね」
「……お前みたいな人間にリア様は渡さない」
「ほう……ならどれだけ私から王女を守れるか試してみますか」
その男は見た所、人間で言えば20代前半程度だろうか。普通なら人間と吸血鬼ではステータス自体に差があるのでスキルを磨き、レベルで上回らなければその差を埋めることは出来ない。だが、男はまだ年若い。ならばレベルもスキルもまだ成熟しておらず弱いだろう……と、普通なら考える所だが、ラナはとてもそうは考えられなかった。何故なら、男はその若い見た目からはとても考えられない程"隙が無い"のだ。その佇まいからから発せられる剣気は鋭く、間違っても舐めて相手取れるような人物では無いことは確かだった。
ラナを見据える男はその手に握る剣を正面に構えて宣言する。
「いくぞ?」
瞬間ラナの身体は動かなくなった。
それはまるで蛇に睨まれた蛙のように指先一つ、視線一つ動かせなくなってしまったのだ。
リアの中で男への危険信号が鳴り響くが、それでも身体は動かない。
「ん?……ああ、この程度の神気でも相手を動けなくさせれるんですか」
男が独り言を呟いている間、ラナは身体をどうにかして動かそうとするが、どれだけ頑張ろうとも身体が言うことを聞かない。
それに気がついた男は余裕の表情でリアに近づいていく。
「残念です。もう少し楽しめるかと思ったんですが。ほら、王女を奪いますよ?止めなくていいんですか?まあ、動けないのは分かってますがッ……!?」
ラナの、真横まで来た男はリアに手を伸ばそうとして……瞬間、後ろに吹き飛ばされる。
男は腰を赤い赤いナニカ……リアの《血液魔術》によって掴まれて後方へと吹き飛ばされたのだ。
「ラナ!早く!」
直後、ラナの身体からスっと重りが消えたように身体が動くようになる。
リアからは言葉足らずで、何をしてほしいのかを一切伝えられていない命令がラナへと飛ぶが、ラナは即座にその言葉の意味を読み取り行動を起こした。
跳躍。ラナは瞬時にリアを脇に抱えると空へと飛び立った。
「やった……これでっ!」
「はあ……はあ……ありがとうこざいます、リア様。これで奴から逃げられ……」
「逃がすとでも?」
ドンッ!
リアとラナが逃げられた事に安堵し油断した瞬間、気付かぬ内に接近してきた男の拳がラナの腹部に刺さり、地面に撃ち落とされる。
「ごほっ…ごほっ…ラナ大丈夫?……ッ!ラナ!?」
男の攻撃によって地面に墜落した事で辺りに土煙が舞い、視界が悪くなっているが、そんな中でもリアの目に入ってきたラナの姿は悲惨なものだった。
それは、リアに大怪我を負わせまいと、墜落時リアを庇ったまま地面と衝突したことで衝撃を逃がすことが出来ず、結果、口からは血反吐を吐き、四肢はあらぬ方向に曲がった、無残にも倒れ伏すラナの姿だった。
そんな普通なら死んでいる様な状態でも、ラナは自身の吸血鬼として生まれ持った高い回復能力によって辛うじてまだ息はあった。だが、そのダメージは日を見るより明らかだろう。
「ふぅ……危うく逃げられるところでしたよ。まったく……ん?その女まだ息があるのですか。流石は吸血鬼ですね」
そう言葉を零しながら男はラナに近づく。
「止めて……もう、止めて」
「おや、吸血鬼の姫も生きていたんですか……止めてと言われましても、私の仕事は貴女を捕まえる事なので、その邪魔をする彼女は邪魔なのですよ」
「お願い……なんでもするから……ラナをもう傷つけないで」
「ほう、なんでも……ですか?」
リアはこの頃幼かった。自身の立場と重要性を理解出来ていなかったのだ。ただ、物心付く時から一緒にいたラナだけは助けたいと思ったのだ。
男はリアの言葉を吟味する。何をさせるのが一番効率的で一番有益なのかを。
…だが、それに"待った"がかかる。
「だめ…です……りあ……様」
「ラナ……?」
「貴女……様は…王族…最後の……生き残り…です!……誇りを…捨てないで……くださいっ!《血液魔術》!」
直後、男の周りを大量の血液が覆い、男を捕らえにかかった。
「ダメ!そんな傷で魔術を使ったら……ッ!」
「リア……様!……早く…逃げて…下さいッ!私が…死ぬ前に!」
ラナの心からの叫び。リアへの忠誠心から来る自己犠牲の心。
だが、それでは男は止まらなかった。
「はあ……やはり、さっさと殺すべきでしたね」
そう男は呟くと剣を腰だめに構えた。
「逃げられるなんて思わないで下さい。私から貴方たちが逃げ切れる可能性は0%なんですから」
目の前が大量の血液で覆われ、どこに吸血鬼の王女が居るかは分からない。その上、この血液の全てがラナが決死の力で振り絞った魔力によって操作されている血液である。これを突破するのは至難の技だった。
普通ならば……。
「見よ、これぞ我が神の"剣"となり得た力の結晶なり」
瞬間、リアの意識は急速に覚醒する。
なぜなら次に続く言葉を理解してしまったから。
そして、なぜこんな幻想を見たのかを理解してしまったから。
そして…全てが繋がる。
なぜ自分がこの夢を見たのかを。
この男が何者なのかを。
「固有武技・"天仙閃断"」
その言葉と共にリアの意識は浮上する。
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「うっ……」
リアの意識が覚醒し目を開けた時、目の前に広がっていたのは信じられない光景だった。
「どう……なってるの…?」
それは炎。どこに視線を向けても視界に炎が入り込む大火災。
「吸血鬼の元王女よ、肉体は十分回復したましたか?」
突然背後から声が掛けられて咄嗟にリアが後ろを振り返ると、そこにはアドラが立っていた。
「あな……たは…何を……?」
「ああ、何をしているのか…ですか。…簡単なことです。悪魔を見つけ出すために森を焼いているのですよ。隠れる場所が無くなれば、あの悪魔も出てくるでしょう?」
アドラのその言葉を聞いたリアは思い出す。ゼロは今寝ている……もといログアウト中なのだ。そんな中森に火がつけられて仕舞えば……未来は決まっているようなものだ。
「や…やめて……くだ…」
「ふむ、ならば……どんな願いも聞くと言うのなら構いませんよ?ええ、貴女がかつて私に願った時のように」
「……ッ!やはり……覚えて……」
「ええ、私としても最初は悪魔と行動を共にする吸血鬼が貴女だとは思っていませんでしたけどね?さあ、どうするんですか?」
「わた……しは…」
思い出すのはかつてのメイド……いや、自身の身を呈してリアを守ろうとしてくれた親友の言葉。
「わた……しは…………ません」
「ん?」
「私は……貴方には屈しません!たとえ貴方が相手でも私はゼロ様を守る為に戦います!彼女がそうしたように……!」
絶対的強者、格上、女神の"剣"。
リアは己ではアドラに勝てない事は理解していた。だが、それでも精神で負けたくは無かった。かつての親友がリアの為に戦ったように、リアも戦うと決めたのだ。主の為にも。
瞬間、闇が覆う。
空間を邪悪な気配が充満する。
悪辣の化身が現れる。
「嬉しいね、リアがそう言ってくれると」
そう言葉を発する男はアドラと前に降り立った。
「存外、再会が早かったな。アドラ?」
「再び相見えることを嬉しく思いますよ、ゼロ」
次の瞬間、悪辣の悪魔と聖騎士長が衝突した。
違和感があるところ言ってください。
多分、どこかにおかしい所があると思います。
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