テールの惨状
次回もアラン回を挟みます。
「これは……」
ゲーム内時間で言えばおよそ一週間ぶりにログインしたアランの目の前には、先日までのテールの街とは似ても似つかない廃墟となったテールの街があった。
「アラン!こっちに来て!」
「わ…わかった!」
アランの仲間であり、友人であるリンに呼ばれたアランはテールの街の惨状を横目に街の中心へ……聖教会の聖堂に向かう。
「そんな……これは……」
そこは正しく地獄だった。
街の中心は街全体を見ても特に被害が酷く、瓦礫が積み重なり、そこかしこに無残にも身体を何かで打ち抜かれたような死体が積み重なっていた。
その惨状は見るに絶えず、視覚制限の設定を解除していたアランには、つい吐き気を催してしまう程には残酷な風景だった。
その死体の中に、アランにとってこの世界での友人とも言える人が倒れているのが目に入った。
「嘘だろ……?カイン!?ゼタ!?」
その二人はこの街の兵士であり、ベータテスト時代にアランと知り合ったNPC達だった。
「なんで……なんでなんだよ!なんでこんな事に……」
「アラン、ごめんなさい。まだ、情報が錯綜していて正確な情報を手に入れられてないの」
「待ってくれ……この二人が殺られてるなら……他の人達は!?街の人達はどうなったんだ」
「アラン……それは……」
いつ如何なる時も冷静沈着で、余裕を崩さなかったアランだが、よく知る人物の死を見ると動揺を隠せなかったのか、少し考えれば分かることをリンに問いかける。
「一体……何があったんだ?何があったらこんな事になるんだ?」
何も知らないアランの頭の中をあらゆる可能性が巡る。地震、雹、隕石。だが、だとしても人々の死に方が明らかに人為的であり、とても自然によるものとは考えられなかった。
ありとあらゆる可能性を考えていると突然アランを呼ぶ声がアランの耳に届く。
「アラン……? おい、アランだよな!?今までどこに居たんだ!」
声に反応して後ろを振り返ると、そこにはアランもよく知る人物が居た。
「もしかして、ソラか?」
ソラと呼ばれた人物はベータ時代に知り合ったゲーム内の友人だが、その実力は確かで、アランとも互角に戦える数少ない実力者だった。
だが、現在の彼はベータ時代に比べて覇気が無く、パッと見では本当にソラかどうかアランも分からなかった程だった。
「アラン、お前今の今までどこに消えてたんだ!リアルで二日間もログインしないなんて!」
「すまん。リアルの用事が片付かなかったんだ。それより、この惨状は一体どういう事なんだ?」
多少落ち着いてきたアランは、現状を知っているであろうソラに自分の居ない間に何があったのかを聞くと信じられない答えが帰ってきた。
「悪魔だ……悪魔が攻めてきたんだ。相手は二人組、恐らくお前があったと言っていた奴らだろうな。凄まじい数の魔物を率いてこの街を襲ったんだ。結果は街を守りきれずこのザマだよ……」
「なっ……」
ソラが言ったことはとてもアランには信じられないものだった。なぜならアランはゼロをプレイヤーだと推測していた。だが、街一つを滅ぼすなどとても今のプレイヤーに出来る事だとは思えなかったからだ。
(だが、それでもゲーム内の知り合いの中でも信用の出来るソラがこれほどの形相で言うのだ。信じられない事だけど本当の事なんだろう。)
そう考えたアランはソラと改めて目を合わせて言葉を発する。
「……わかった。それとお前にひとつ聞きたい事があるんだが……」
「何だ?」
「それが……」
そう言いかけた時、何処からかアランを呼ぶ声が聞こえアランは当たりを見渡した。
「アラン様!アラン様ですよね!?」
「あ……貴方は…」
声が聞こえた方に顔を向けると、そこには肩まで伸びた美しい金髪に、白いローブを被った美しい少女がいた。
「お久しぶりですアラン様。私を覚えておいででしょうか?」
「確か……"聖女見習い"のリーファ様ですよね?」
「はい、リーファです!覚えてくれていたんですか!?」
「はい。貴方にはお世話になりましたから」
その少女は"聖女見習い"としてこの街の教会に勤めていたリーファだった。
何を隠そう、アランが聖騎士長の情報やレベルの指標をベータ時代に掲示板に載せれたのは彼女のお陰なのである。
「それで、どうされたんですか?」
「はい。"アラン様が現れたら自分の元までお連れしろ"と仰られている方がいらっしゃりまして」
「それは一体……」
アランの質問に答えるように彼女から発せられる名前はアランやソラも知っている有名な名前だった。
「"聖騎士長"アドラ様がアラン様に会いたいとの事です」
その名前は異界人の間でも有名な、聖教会屈指の実力者の名前だった。
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リン含め、後からログインしてきたアースとレインを連れてアランはリーファの案内で"聖騎士長"アドラの元へと向かっていた。
「それにしても…アランに何の要件だろうなー」
「アースは…少し…緊張感が足りない」
「そんな事ねぇよ!なぁ、お前はどう思うよアラン!」
「二人とも煩いわよ!もうちょっと静かに出来ないの?」
「「うっ……」」
街が壊滅的な被害を負っていても変わらず元気に話す三人を見ていると気分が落ち込んでいたアランも不思議と元気になってくると言うものだ。
「皆様方、そろそろ目的地に着きます。……あれ?」
そう言ったリーファの視線の先には人々が集まっており何やら揉めているようだった。
集まっている人々の服装はボロボロで顔もやつれていた。
「皆様、どうされたんですか?」
そうリーファが集団の最後方にいた人に話しかけるとその人物は目を丸くしたように驚いたあと、目付きを厳しくして叫んだ。
「聖教会の奴がここにもいたぞ!」
「え……?」
その言葉と共にリーファとアラン達はすぐさま周囲を囲まれて罵声を浴びせられる。
「貴方たちがしっかり街を守らなかったから夫が死んだのよ!」
「お母さんを返してよ!」
「貴方達が頑張ればこの街を救えたんじゃないの!?」
「力があるくせにそれを民の為に使わないなんて横暴だ!」
「あれだけ助けを求めたのに何で助けてくれなかったの!?」
市民の悲痛な叫び。
本来なら聖教会にとっては謂れのない事まで罵声として浴びせられる。
それは人々の怒りの矛先が無いからだ。誰に向けていいのかも分からない怒りの矛先。首謀者と見られる悪魔もとうにこの街から消え去っている。ならば市民は誰を罵り、この悔しさを、怒りを発散させればいいのか……。
市民の考えついた先が"聖教会"だった。
どこからか"聖騎士長がこの街に滞在している"そういった噂が流れていたのだ。
結果、人々を守れる力があったのに守れなかった聖教会に矛先が向いていたのだ。
その時、その場にいる誰もが気づかないうちに建物の扉の前に立った老人が言葉を発した。
「静まれぇ!」
その声と共に全て人々が声を発せられなくなる。
その様子を満足そうに見た老人は真剣な表情でアランを見据えると、改めて姿勢を整えて言葉を発する。
「お待ちしていた、アラン殿」
凄まじい大声で市民を黙らせた老人は建物の中に手招きをする。
「こちらへ来なさい。私と……少し話をしようか」
そう言って建物の奥に消えていく老人を見ながら、"自分がとてつもなく厄介な事に巻き込まれたのでは?"と感じたアランは頬を引き攣らせながらその老人の後に続く。
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