"悪辣のゼロ"
国語の古文が全然解けなくて萎えました。
それと報告です!闇の女神ルナの一人称を"私"→"僕"に変更しました。理由はルナの性格と一人称があってなかったからってだけです。混乱してしまうかもしれませんが申し訳ありません。
「あの……アドラも言ってたけど"剣"って結局何なんですか?」
『え……?』
ルナはゼロに話しかける前に色々と考えていた。
"ゼロ君は僕の"剣"になってくれるかな?"とか"ゼロ君驚くかな?"等である。ただ、実際にゼロがルナの"剣"だとアドラに言い切ったのをルナは見ていたため断られるなど思ってもいなかったし、喜んで受けてもらえると信じていたのだ。ましてや"剣"の事を知らないなど思ってもみない事だったのである。
そして、ゼロ単純な疑問から来る言葉はルナにとっては予想外の言葉。ルナはゼロに自分の誘いを断られたような気持ちになってしまった。
「え?……あの、女神様?」
『あ……え?だって僕の"剣"だって……言って……え?』
周囲に響く声はものすごく悲壮感に溢れており、まるで男子学生が好きな女子生徒に告白した時、愛想笑いと共に、
『ごめんね?私あまりそういうの考えてないんだ』
と、言われた後の男子学生の絶望とも悲壮感とも言い難い、完全に頭の中が真っ白になった者特有の雰囲気に似た物を感じる事ができるほどだった。
そんな雰囲気を出されれば笑いながら異界人を殺し、自分の為なら容赦なく世界人ですら殺す、一般的に見れば頭のおかしいゼロでも申し訳なさが出てくるというものだ。
「あ、あの本当にすみません。自分、異界人なのでそういうのに疎くて…教えて頂けませんでしょうか?」
その申し訳なさと言うのは、普段敬語を使わないゼロがついつい敬語を使うほどであった。
『うっ……うっ……うぅ…』
完全に泣き声が聞こえる様になってしまい、いよいよもってゼロとしては本当に困ってしまう。
「はぁ……ゼロ様。私がご説明しましょうか?」
そんな時、ゼロよりも遥かにこの世界で生きている少女から救いの手が伸びる。
「ん?リアは知ってるの?」
「この世界に生きる者なら"常識"ですので」
「あ……あはは……頼む」
"常識"を強調して言うリアに少し気圧されるゼロだが、すぐに気持ちを切り替え、リアに説明を頼む。
「まずは、ゼロ様は神様についてどこまで知っていますか?」
「え?光と闇の女神しか知らないけど?」
「ほかの神々については?」
「え、他にもいたの?」
「そこからですか…」
そう。大前提としてゼロはこのゲームの中の世界を何も知らない。本来なら運営のホームページに載っている世界の概要だったり知り合いに教えて貰うなりして大体のプレイヤーは最低限、神の数くらいは知っているものである。
当然だが、ゼロは運営のホームページを殆ど見てなければ、AWOをしている知り合いもいないので教えて貰うことも無かった。結果、この世界の知識は無いに等しい状態になってしまったのである。
「まず、"一般的"に神と呼ばれる存在は世界で6柱存在しています。神々はそれぞれが世界の根幹に関わる6大元素に対応していて、"火""水""土""風""光""闇"の6柱が現在の"六大神"と呼ばれる存在です」
「その内の2柱が聖教会が崇めている"ティアーラ"とか言う奴と今話しかけてきてる"ルナ"様ってことか?」
『そうだよ!!』
いつの間にか泣き止んでいたらしかったルナがゼロに怒鳴る。
「うおっ…びっくりした……そんな怒鳴らなくたっていいだろ?こっちは何も知らないんだから」
『何も知らないなら"剣"なんて軽々しく名乗るなよ!』
「いや…それは悪かったけど、相手が名乗って来たらこっちもカッコよく名乗りたくなるじゃん?それに名乗りってどうやったらいいか分からなかったからアドラのを真似しただけなんだって…特に深い意味はないよ」
『はぁ……なら僕が君が名乗った"剣"とは何かを教えてあげるよ』
「あ…ありがとうございます」
分かりやすくため息を吐いたルナはゼロが本当に何も知らないのだと理解し、そんなゼロにも分かりやすい様に話し出した。
『"剣"ってのはその神様の直属の部下みたいなものだと思ってくれたら分かりやすいかな?つまり"剣"ってのは神の下について働く存在なんだよ』
「…ん?なんかそんなに凄そうに感じないんだけど」
『それはゼロ君が"剣"の事を舐めてる証拠だよ。"剣"ってのは実質その神の名代みたいな物なんだ。世界に直接干渉する事が難しい神の代わりに世界で活動するのが彼らの仕事だからね。それこそ普通なら"剣"を名乗る者には一国の王でさえ頭を下げないといけない事があるくらいなんだよ?世界を管理する"神"と一国の"王"とじゃ格が違うから、その名代たる"剣"も王より立場が上になる場合があるんだよ。そして、"剣"ってのは神の名代っていう立場上それ相応の実力も求められることもあってね、現状"剣"を名乗る者の九割くらいはめちゃくちゃ強い子達だね』
「へー…つまり"剣"ってのは神様の代わりに仕事をする偉くて強い奴らって認識でいいのか?」
『まぁそんな所だね。ちなみに君が僕以外の神の"剣"を詐称してたらその直後に死んでたよ?何せ"剣"を詐称するのはその神に対する冒涜と同義だからね』
「え……もしかして俺って結構やばいことしてた?」
『ようやく気づいてくれたようでなによりだよ』
なんとなくでしていた事がもしかしたら死に繋がっていたかもしれないと気づくとゼロは自分の顔が引きつっているのがわかった。
「そ…そういえば、なんでルナ様は俺を"剣"にしたいんだ?俺って強くも無ければ、真面目とかでも無いんだけど」
『正直言っちゃうと僕の"剣"にはそんなの求めてないんだ。だからそれ以外の要素で僕は考えている。ちなみに僕が君を選んだ理由は君がアドラに僕の"剣"だと名乗っちゃったからってのが一つ。僕の"剣"となるに相応しい極悪人だったってのが一つ。あとは僕も"剣"が欲しかったのが一つかな』
「ちょっと待て、たった今聞きたいことが増えた。まず、"剣"に相応しい極悪人ってなんだよ?さっきまでの話的には真面目な奴が貰う地位じゃないのか?」
先程のルナの説明で行けば"剣"は神の名代であり、真面目な人物がやる様な立場に聞こえたのに、ルナはそれを考えてないと言い出した。
『真面目な子が貰う地位かと言われると少し違うな……神ごとに性格が違うからその分選ぶ基準も変わってくるんだよねー』
「神によって性格が違う?」
『当たり前でしょ!僕達だって性格はあるよ!ちなみに分かりやすいので言ったらティアーラの所の"十剣"が分かりやすいかな?』
「十剣?」
『そ。名前の通りティアーラに仕える十人の"剣"の総称。それぞれ強さが違うんだけどその性格は大体似てるかな』
「まさかと思うけど真面目な人のみ……とか?」
『惜しいねー!正解は真面目で実直かつ誠実、騎士道精神や自己犠牲の精神を尊ぶ他者のために頑張れる一般的にみたら凄く模範的な"良い人"達の集まりなんだよ』
「ああ、納得したわ」
よく考えてみれば、確かにアドラは最後の最後までたった一人で戦ってきた。確かに実力はこっちが圧倒的格下だったのだが、アドラ並の実力者がもう一人いればこちらに勝ち目は0だった。なのにアイツはそれをしなかった……確かに騎士道精神万歳の聖騎士様なら1vs1を好んでしてきてもおかしくなかった。
「じゃあ、ルナ様の"剣"に求める性格ってのは……?」
『勿論極悪人である事さ。殺人や強盗なんてちゃちなものに飽き足らず、街落としや国崩しは当たり前。徹底的に敵を痛めつけ、嬲り殺すくらいやれる悪辣な精神に、他者を弄び、騎士道精神や自己犠牲の心なんてものを吐き捨てられるくらいのクズが僕の"剣"に相応しい。それに加えてゼロ君は悪魔だからね、他の神なら嫌うところだけど僕にとっては最高だね』
「なるほどな。それで、"剣"が欲しかったってのは?」
『……実はと言うと僕に"剣"がいた事は無いんだよね。誘ったことは何度もあるんだけど、僕が求める悪人って大体"我が強い"人達ばかりなんだよね……それに僕の眷属って闇に属する魔物とかが殆どだから、最低限"剣"になるに相応しい知能が無いのが殆どだし……』
「あっ…なんかごめん」
ルナの凄い悲しそうな声を聞いて話を振った自分にも責任を感じたゼロはルナに咄嗟に謝った。
『気にしてないからいいよ。それよりここまで聞いてゼロ君はどうかな?僕の"剣"になってくれないかい?』
改めて説明を聞いてから飛んできたこの質問。
最初はそこまで重要とも思って無かったこの質問だが、全部聞くとゼロ自身どうするべきか決めきれないでいた。
「私はなってもいいと思います」
そこで先程から静かにしていたリアがゼロの後押しをする。
「"剣"とはなろうと思ってなれるものではありません。運が良かったとでも思っておけば良いと思いますよ?」
なんだかんだこの世界ではゼロが一番信用しているリアからの言葉。それを聞いたゼロは改めて真剣に考えて自分なりに答えを出す。
「……俺としてはあのアドラとかと自分が同格とは思えないし、またアイツと戦ったりするのはゴメンだけどそれは一旦置いといて、ルナ様に一つお願いしたい事がある。それさえ叶えてくれるなら俺はルナ様の"剣"になってもいいと思ってるんだよね」
『へー…条件ね。それはいったいなんだい?』
「俺達は異界人と世界人を殺し回りたいので、ルナ様にはそのサポートと奪ったアイテムをお金に変える機械みたいなのが欲しいなぁ……と」
『ふふ……神相手に取引をするのかい?』
ドゴッ!
その瞬間先程までの優しい女性の声から凄まじい威圧感が発せられる。それは気を抜いていたゼロを容易に地に縫いつけた。
「ぐ……っ!ふっ…ははは……神相手でも…自分の利を追求したい…のが…俺……なんでね!」
常人の精神力なら狂っていても可笑しくない程の威圧感の中、ルナに笑いかけ自分の意見を変えないゼロ。いや、既にゼロは人としてどこか"狂っている"と言ってもいい存在だろう。だからこそ、この威圧感の中でも喋る事ができていた。
『ふ…ふふ……あははは!いいよ!ゼロ君の頼みだもの、叶えてあげるさ。その代わりにこちらからも条件があるよ』
「へぇ、その内容は?」
威圧感が消えたルナから笑い声が聞こえると交換条件が提示された。
『それは、世界に混沌を齎すこと。君達は世界中で暴れ回って、世界に混沌の渦を作ってくれ。それをしてくれるならサポートくらいしてあげるさ』
「ふーん。いいぜ?簡単に言えば世界中で暴れ回ればいいんだろ?なら元からそのつもりだから文句なんてないさ」
すると、ゼロの前に闇が集まりだす。
『ふふ…いいよ。それじゃあ、本当に僕の"剣"になるって言うならその闇を自身に取り込んでくれ。辞めるなら今のうちだよ?』
それを聞いたゼロは不敵に笑うと前に歩を進め、躊躇なく闇に手を突っ込んだ。
「辞めるわけないだろ?」
それだけ言ったゼロに凄まじい闇が押し寄せ、ゼロはその全てを取り込んでいく。
闇が渦を巻き、より色を黒くしていき漆黒に染まっていく。すると突然渦が落ち着いていき闇が晴れていく。
『ふふふ…これで君は僕の"剣"だよ。よろしくね?"悪辣のゼロ"』
そう呼ばれたゼロは笑って言葉を返す。
「ああ、よろしく頼むぜ?"闇の女神ルナ"」
そう言葉を発したゼロの真上には丁度この世界の月が昇っていた。
そういえば最近感想を貰うことが増えてきたんですけど、感想から小説の内容を思いつく事があるので、もっと感想をもらえたらなぁと…(感想乞食より)
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