終わりの足音
学校がテスト期間に入ったので、一時的に二日に一回の投稿になるかもです。すみません
「悪魔だ!悪魔がいたぞ!」
その声を聞いたプレイヤーが一斉にゼロの方に顔を向け、ゼロの姿を視認すると我先にとそのままゼロに向かって一斉に走り出した。
「アイツは俺の獲物だ!」
「ふざけんな!俺が倒すんだよ!」
「みんなどいて!魔術が発動出来ないでしょ!」
そんなプレイヤーの軍勢を前にゼロは笑っていた。プレイヤー達からしてみれば大勢のプレイヤーに襲いかかられているのにも関わらず、まるで危機的状況に自分が陥っていると理解してないような笑顔だった。
それもそのはずでゼロはいくらプレイヤーが来ようとも余裕だった。そしてゼロはそのまま自身の手を前に突き出して……
「暗黒槍」
その言葉と共にゼロの前方に闇の槍が生み出され、そのまま前方のプレイヤーを撃ち抜き…殺した。
このゲームにはHPという概念が存在しないので下級魔術でも魔術に対する防御力、つまりMIDが低い者が魔術の攻撃力が高い者、つまりINTが高いものからまともに心臓を魔術で穿たれればこうなるのも当然のことだった。
更にはプレイヤー達は自身の痛覚を抑えているのだろう。あるプレイヤーは身体中に獣の噛み傷があり、あるプレイヤーは腕の一本が無くなっている。
今魔術で撃ち殺した人も足を怪我して動き難くなっていたため簡単に当てることが出来た。
痛みとは人が生来持つ危険信号だ。これを切ってしまったら恐怖が薄れて、危険を顧みない行動に移ってしまうのも納得出来るというものである。
「なっ……一撃!?」
「アイツの魔術を食らうな!散開してみんな避けろ!」
一撃でプレイヤーが死んだ事に驚きプレイヤー達の足が止まる。
誰かが即座にゼロの魔術を回避するように散開の指示を出す。指示を出した人物は傷が少ない事からそれなりに経験のある強いプレイヤーなのだろう。もしかしたらベータプレイヤーなのかもしれない。
だがその指示を聞き、実行出来るものは少ない。
「お前らどけや!俺が先に倒すんだよ!」
「周囲から魔物が集まって来てる!私は逃げるからどいてよ!」
「お前ら俺に指図すんじゃねぇ!俺は一人で十分なんだよ!」
これはオンラインゲームだ。それこそ素直に人の言う事を聞いて散開しようとする人もいるだろうが、それと同時に人の話など聞かずに一人で突っ走る者が多いのもまた現実として存在する。そういう人達によって本来ならすぐにでも散開出来たであろう状況なのにも関わらず、人と人とが違う方向に進もうとしてぶつかり合い、結果大多数が一箇所から動けなくなるという事が起こりうるのだ。
そしてゼロからしてみればそんな連携の取れてないプレイヤー達はカモ同然である。
「暗闇、暗黒槍、風球」
プレイヤーの視界を奪い、遠距離から魔術を連打する。
ゼロのしたことはシンプルだが、この場面ではとてつもなく凶悪な戦法だった。
それに加えて彼らは自分の利益しか考えていなかった。魔物達を狩るよりゼロを狩りに行って英雄になりたい者がほとんどだろう。結果、魔物達の討伐が疎かとなり多くの魔物が街の中に侵入していたのである。
勿論、魔物達が大量の異界人を見逃すはずもなかった。
「な……魔物がきて…」
「うわぁ! スライムが!スライムが!」
「ぐ……ふ…」
暗闇の中で魔物達に致命傷を与えられて動けなくなるプレイヤー達。ゼロはさらにそこに追い打ちをかける。
幾つもゼロの魔術が飛び、プレイヤー達に残されていた微かな命の灯火が消えていく。
10分もすればそこはプレイヤーと魔物の死体で溢れかえっていた。
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レベルが上がりました。
職業のレベルが上がりました。
スキル[風魔術]のレベルが上がりました。
スキル[闇魔術]のレベルが上がりました。
スキル[魔力操作]のレベルが上がりました。
STPを40獲得しました。
スキルポイントを8獲得しました。
97645ゴルドを獲得しました。
アイテム「鉄の剣」を獲得しました。
アイテム「魔術師のローブ」を獲得しました。
アイテム「粗悪な妖鬼の爪」を獲得しました。
アイテム「マナポーション」を獲得しました。
…………etc
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「収穫も大量だな」
ゼロはログを見ながら満足したように頷き目線を死体の山に戻す。
「これだけ"血"が集まったら計画を実行出来るな……プレイヤーの死体が消える前にさっさと計画を実行するか。後は頼むぞ、リア!」
ゼロからの呼び声で上空にいたリアが地上に向かってあるスキルを放つ。
「『血の魔眼』」
その言葉と共に夜闇に街中の血液が舞い、そしてリアの元へと集まっていく。
「この調子なら大丈夫そ……」
そう気を抜いた瞬間ゼロは凄まじい寒気を自身の左側から感じ、一瞬で飛び退く。
次の瞬間、銀色の光を放つ剣がゼロのいた位置を薙ぎ払う。
「今のを避けるとは……偶然かはたまた必然か」
「誰だ?あんた」
その男は六十を超えたくらいの白髪が良く似合うお爺さんだった。だが、その身から発せられる威圧感はゲーム開始時に出会った聖騎士や"吸血姫"のリアを軽く凌いでいる。
「私は"聖騎士長"アドラという者です。これでも聖教会の中では大司教の立場にもついているんですよ。短い間ですがどうぞよろしくお願いします」
"聖騎士長"そう名乗った男は凄まじい殺気と共にゼロに向かって剣を向ける。
「へぇー……聖騎士長なんてしているお偉いさんがこんな街に居たとは知らなかったな」
「たまたま昨日来たばかりでして、あまり街の人々にもしられてないのですよ」
それを聞いたゼロは小さく舌打ちをする。
理由がどうであれアドラがここにいる事実は変わらない。そして間違いなくアドラがいればゼロとリアの計画など容易に止められるだろう。ならば……
ゼロはアドラと話しながら先程上がったレベル分のSTPを振り分ける。
「アドラさん……でいいんでしたっけ? すみませんがここは一度引いてくれませんか?私もここは帰りますので……」
そこまで言ったゼロに向かってアドラは凄まじい殺気を飛ばして威圧した。
「ほっほっほ……何を言い出すかと思えば悪魔が何を言っているのですか?貴方を見逃す?私が一度引く?有り得ませんね。貴方もそして上にいる吸血鬼の少女もまとめて……殺しますよ」
「へぇ?」
アドラが"殺す"と言った瞬間ゼロから発せられる威圧感が上がった。
「悪いがリアは殺らせねぇし俺は死んでやらねぇぞ?俺は"契約"は守る男だからな」
「では、この私と戦うと?」
「もちろん」
そうゼロが頷いたときアドラの顔が歪められその顔には怒気が張り付いていた。
「そうか……貴様のような下級悪魔如きが私と戦うと?私からあの吸血鬼を含め自分までも守って見せると?……舐めるなよ?」
その言葉と共に一瞬にして周囲にいた魔物が全て断ち切られ、街から魔物の反応が消失する。
「ならば、この私"光の女神ティアーラ"様が剣"聖騎士長アドラ・ミラー"が貴様を斬り殺し、我が主様の糧としてくれよう」
それを聞いたゼロはなんとなく自分も名乗った方がいい気がしたが名乗る異名や所属など特に無いな……そう考えたとき一人の女神様の名前が思い浮かんだので少し使わせて貰うことにした。
「上等だ。この俺"闇の女神ルナ"様が剣"悪魔ゼロ"が相手をするとしよう」
そう名乗った二人の間には強烈な殺気が飛び交っていた。
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