テールの街の危機、そしてゼロ達の計画始動
変な言い回しがあるかもなのでまた後から書き直すかもです。
「はぁ、死んだのか…」
広場の噴水の前でリスポーンしたアランは辺りを見渡してそう呟く。
(ん?僕の剣が……)
「あ、アラン!」
そう呼ばれた方向を見ると、ちょうどリスポーンしてきたパーティーメンバーのアース、リン、レインの三人がいた。
「アラン、本当にすまねぇ。開始早々やられちまって…」
「別にいいさ、あれは完全な不意打ちだったからね。僕だって避けれたのは奇跡みたいなものだよ」
「だけど……」
三人ともが暗い顔をして俯く。自分たちが先にやられてしまったせいで1vs2の戦いをアランはする事になったのだから負けたのも自分達の責任と思っているのだろう。
「負けたことは仕方ない。次、またアイツらと会った時、今度は僕達が勝てるように頑張っていこう」
「「「了解!」」」
「んじゃ、手始めに今からモンスターを狩りに行くかー!」
「ちょっと待ちなさい」
気合いを入れ直してすぐに街の外へ行こうとするアースをリンは静止した。
「もうすぐ日も沈むのよ?夜はモンスターが厄介になるし、街の門だって閉まったままになるのよ?ベータの時を忘れたの?」
このゲームの世界での夜とは即ち"闇"だ。現代では少し歩けばそこら中にある"明かり"なんてものは勿論だがこの世界には存在しない。正確に言えば人々の暮らす街の中にはあるが、街の外には月明かり以外に一つも無い。だからこそ街の外で魔物と戦うというのは、上手く魔物を視認できない状況で戦うということなのだ。魔物が厄介になるのは当然である。
「第一今はデスペナ中よ?最低限ステータスダウンが治るまでは待機よ」
「ん…リンの言う通り」
「くっそ〜わかったよ!早くレベル上げてぇ!」
そう嘆くアースを見て苦笑しながらアランは先程の男の事を思い出していた。
(僕のアイテムが無くなっている……もしかして、彼は……次は必ず勝たせてもらうよ)
そう決心したアランはパーティーメンバーにこれからゲーム内で6時間待つよりも現実で2時間休憩した方がいいと提案し、四人とも一度落ちることになった。
アランは最後に掲示板に南の森での出来事を書き記し、男が異界人である可能性をあえて伏せつつ、それ以外の情報を上げてから一度ゲーム内から落ちた。
そして、四人全員が落ちた後、日が沈み街の外が暗闇に包まれた時"始まりの街"テールの門を大量のモンスターが襲撃した。
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世界人の門兵の焦る声が聞こえる。
騒ぎに気づいたプレイヤーの声が響く。
避難を促す人の声が民衆の叫び声でかき消される。
テールの町の人々に恐怖が伝播する。
ゴブリンの汚い声が木霊する。
獣の遠吠えが街に響く。
スライムが街の防壁にこべり付き、よじ登っていく。
街の周囲では見かけない魔物達が一斉に街の外壁を壊そうと暴れ回る。
魔物達に狂気が伝播する。
そんな街を上空から見ている二人組がいた。
「想像以上に大事になったな……ま、俺たちにとってはいいことだらけだな」
「今のところ負傷者が少ないのでもう少し計画の実行まで時間がかかりますが、一度流れが変われば一瞬で決着がつきそうですね」
「俺は一旦地面に降りて異界人を殺しまくるから、合図したらあとは頼む」
「任せてください」
そう話す二人組、ゼロとリアは着々と計画を進めていた。
時はアランとの戦いの直後まで遡る。
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「それで?モンスターの誘導はこれで出来るのか?」
「はい。理論上は可能なはずです」
「こんなスキル一つで誘導出来るならそれはそれで面白いけど」
ゼロがリアからのお願いで取得したスキル。それは[扇動]というスキルである。
これは生物の感情を煽り、ある行動を起こさせるように仕向けるというスキル名通りのスキルだが、ゼロの[扇動]は取得したばかりなのでもちろんレベルは1である。これでは異界人や世界人の心を動かす事は不可能に近い。それこそゼロが上手く使ったところで物事に対するやる気を上げるのがせいぜいである。
だが、リアはその能力とゼロの悪魔としての力を使って魔物を操るという事を思いついた。
方法は簡単でリアの[気配察知]で見つけた魔物に片っ端から[扇動]をかけるのである。ゼロは悪魔であるため魔物に敵対心を比較的持たれずらく、近づき易い。その上[扇動]の力で魔物が生来持つ人間への敵対心を煽って、人間を殺すことのやる気を出させてテールの街に誘導すれば勝手に街を襲い出すのである。
その上魔物は、上位種の魔物と同じ行動を起こす個体が多い。そのため上位種に[扇動]をかけるだけで簡単に街を襲撃させられるのもゼロ達の計画に大きく影響していた。
結果魔物が魔物を呼び、大量の街の近くにいたゴブリンやスライム、南の森の魔物達がテールの街に襲いかかったのだった。
◇━━━━━━━━━━━━━━━◇
「さて、やっていくか」
街を外敵から守る高さ20メートルの壁の上に羽を消して降り立ったゼロは周りを見渡す。
「お前何者だ!」
そう叫びながら近づいてきた男は朝にあった聖騎士とは違い銀色のプレートを胸につけて、腰には剣を帯剣していることからこの街の兵士なのだろう。
「お前、何者か応えろ!さもなければ貴様を切る!」
口調は荒いが、ゼロが市民や味方の異界人の可能性を考えてすぐに切り捨てずに質問をしてきたのだろう。
だが、そんな優しい兵士だろうが今のゼロからしてみれば等しく敵なことに変わりは無い。
「ああ、すみません。自分は異界人でして、外の状況を確認したくて登って来てしまいました」
そう言いながらゼロは両手を上げて兵士に近づく。
「今の戦況を教えて貰っても?」
「なんだ、異界人だったのか。態々聞きに来てもらってすまないな。今は見てもらったら分かるように外は魔物の軍勢で溢れている。これでは下手に門を開けれないのだが、だからと言って倒さねば直にここは突破されるだろう。だから先程から兵士たちに避難誘導をさせて……」
「そこまで聞けたら十分です」
ドンッ!
ゼロは今の戦況を現場の兵士から聞きつつ何か打開策でもあればそれを潰そうと思っていたのだが、聞いた感じそんなものは存在しないとわかったゼロは用済みとばかりに兵士を[闇魔術]のLv2で手に入った暗黒槍で攻撃して魔物側の壁の外に弾き飛ばした。
そしてそれと同時に木で出来ていた門にヒビが入る。メキメキと嫌な音をたてながら段々と門が壊されていく。そして時は来た。
「流石はモンスター……力が人間の比じゃないな」
ゼロがそんな事を言った瞬間、凄まじい破壊音と共に門が破壊されてモンスターが侵入する。そして、それと同時にテールの街にいた異界人全員に緊急クエストが発令される。
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〔緊急クエスト テールの街の防衛〕
依頼者 光の女神ティアーラ
報酬 ???
悪意の体現者たる悪魔の手によってテールの街の平穏が脅かされました。
皆様の力で悪魔の魔の手から街をお救いください。
貢献度に応じて相応の報酬を約束しましょう。
※魔物からの街の防衛及び悪魔とその配下の討伐で貢献度が決定します。
受注しますか?
Yes/No
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そのクエストの内容に多くのプレイヤーは驚き、そして奮起した。何せ女神からの報酬なのである。相当のものが貰えると多くの者が考えるだろう。
だが、ゼロは違った。
「嘘だろ?クエストがプレイヤーを殺すために出てくることがあるのかよ……こんなの俺は"No"一択じゃねーか」
対象の悪魔とは間違いなく自分のことだろうと理解しているゼロは光の女神に対する憤りを感じ、けれどもクエストに関してはどうしようもないと諦念を感じながら"No"のボタンを押した。
そして"No"を選択した瞬間再びクエストが発生した。
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〔緊急クエスト 光の女神への妨害〕
依頼者 闇の女神ルナ
報酬 ???
やあ、こんばんはゼロ君。本来はこんなことしてはいけないから端的に話させてもらう。
君にはティアーラの妨害を依頼したい。彼女は私達が本来なら許可無くしてはいけない特定の異界人を指す依頼をしてしまった。だからこそ彼女の思惑を潰して欲しい。目には目を歯には歯をってね。
これを受けるかどうかは君次第だ。
受注しますか?
Yes/No
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「……は?」
その依頼内容に頭が真っ白になりそうになるが要約すれば街を破壊してプレイヤーを殺して回ればいいのだろうか?
"やりたい事をやってもいいんだよ"そう闇の女神から言われた気がしたゼロはニヤリと笑い"Yes"のボタンを押す。
「ククク……そうだよ……俺はこういう普通のゲームでは出来ないことをしたかったんだ!最高じゃねーかAWO!神様からの許可を貰ってPKや街の破壊ができるなんて!やっぱりこうでなくっちゃなぁ!」
ゼロは童心に帰ったように心を弾ませながらもう一度《悪魔翼生成》を使い壁の上から地面に降り立つ。
下では魔物と異界人が入り乱れ多くの"血"が辺りに舞っていた。
「さぁ、計画を進めていこうか」
ゼロの顔には狂気的な笑みが浮かんでいた。
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