ゼロVSアラン
戦闘シーンって書くの難しすぎません?
最近PV数伸びてきているのでこの調子で頑張ります。
「アランそろそろ引き返した方がよくねーか?敵も強くなってきたし」
「うん……しょうがないけどここら辺にして引き返そうか」
アラン達四人が南の森に入って1時間程度が過ぎていた。既に予定していた範囲の探索は終わってしまった上、これ以上奥へ行くのはレベル的にも厳しいと感じたアランは撤退の指示を出す。
「レベルは15を超えたけど、やっぱりここは経験値が美味しいわけじゃないな。もっとモンスターが大量にいればいいのによー」
「そうやって言うけど、これ以上多かったら対処出来ないでしょ?」
「リンはビビりすぎだろ。レインもそう思わね?」
「いや……これ以上多かったら回復が間に合わなくなる。アースはもう少し立ち回りを考えて」
「ほらーレインだってこう言ってるじゃない!」
「三人ともまだ森の中なんだから気をつけないと……敵が来るかもしれないだろ?」
アランがそう言うと三人とも緩んでいた気を張って歩を進める。普段は争うことが多い三人だが、リアルでもアランを含めた四人で行動する事が多く、普段からリーダーシップのあるアランの言う事は聞くことが多いのだ。
「それにしてもこの森って本当に不思議だよな」
「不思議って、具体的には?」
「だってここの森は、テールの街から近い四つの狩りスポットだろ?なのにこの森だけはモンスターのレベルは高いけど遭遇数は他のところに比べて少ないじゃねーか」
テールの町とはゼロが最初に降り立った街のことであり、種族によって違う開始地点の中でも一番多くのプレイヤーが初めに降り立つ街でもある。そのためプレイヤー達からは通称"始まりの街"と言われていた。
「確かに少ないけどバランスを考えてるんじゃないの?ここのモンスターはレベルが高いから」
「ならもっと他の所の……それこそ未開拓地みたいな場所でも作ってそれをすればいいじゃねーか。序盤のプレイヤーがレベルを上げに奔走する街の近くにこんな経験値の不味い狩場作るか?」
「そんな事私に聞かれても答えられないわよ。第一こんな変な場所があったからこそ今回、何かイベントがあるかもって思ったんでしょ?何か理由があるんじゃないの?」
「何かあるとしたらもっと奥の方なのかね」
アースとリンがそんな雑談をしていたらレインが何かに反応して身構えた。
その事にいち早く気づいたアランが周囲を警戒しつつどうしたのかを聞く。
「レイン、敵かい?」
「分からない……この反応は…………人?」
レインがそう言った刹那、四人の目の前には赤い何かが迫って来ていた。
「くっ!」
凄まじい反応速度で持って間一髪で回避したアランは周囲を見て驚く。そこではまだ辛うじて生きてはいるが、赤い何かで貫かれ動けなくなっている三人がいた。
「ッ! 一体何が起こって……!」
そう言葉を発したアランの耳に男の驚いたような声と悔しそうな少女の声が聞こえる。
「おー今のを避けるのか!」
「ゼロ様、申し訳ございません。仕留め損ないました」
「気にすんな。それに一人くらいは俺も戦って戦闘経験を積んでおかないといけないと思っていたしな」
ごく普通の出来事だと言わんばかりに呑気に歩いてくる二人組。二人とも銀髪だが、少女の方は目が金色、男の方は青色になっている。アランは相手がどんな存在かを理解するよりも先にゲーム内の録画機能を使った。少しでも情報を残して、次に活かそうと考えたからだ。
話し方からして先程の強力な攻撃を放ったのは少女の方だろう。だが、口調から男はその少女の主だと思われる。アランは瞬時に理解した1対1の状況ですら厳しいこの盤面。自分は間違いなく負けると。
「お前がアランって言うやつか?」
そう呑気に聞いてくる男にどう返したらいいか迷いつつも素直に言葉を返す。
「そうだけど?」
そう返すと男は不敵な笑みを浮かべて言葉を続けた。
「それならよかった……なら、俺のために死んで、金になってくれ」
そう男が言葉を発した瞬間男の背に漆黒の禍々しい羽が生み出され、男の周囲を"闇"としか形容出来ないナニカが包み込む。
アランはそれを見て理解する。こいつこそが自分達の追っていた男なのだと。自分達の行動は間違いなく薮蛇だったのだと。
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アランとゼロが出会う少し前、ゼロとリアは空を飛び高速移動をしていた。
「にしても、リアって飛べたんだな」
「私たち吸血鬼は羽では無くて生まれ持った《血液魔術》の応用で羽を作り出して空を飛びますから、ゼロ様が私が飛べないと思うのも仕方ありません」
「飛べないと思ってたから、いきなり赤い羽が生まれた時は何事かと思ったわ」
「ん……ゼロ様、反応がありました」
二人が話していたらリアの気配察知に反応があったようだ。相手は四人組、リアが先制攻撃を仕掛けたいと言っているから最初の一撃はリアに任せることにした。
というのも、飛行中に”従属”の状態について少し調べたのだが、なんと従属状態の者がモンスターなどを倒して経験値を手に入れた時、自分が従属している相手(今回であれば俺)にも倒した者とは別途で手に入れた経験値の50パーセントが手に入るのだ。さらに倒したのがプレイヤーなら金まで手に入るという効果まであった。ただ、自分で倒してないので種族と職業による取得経験値の増加効果は乗らないが。
大地に降り立ったリアは《血液魔術》を発動させる。練り上げられる血によって出来た赤い球体。そして球体から四本の血の槍が伸び、四人のプレイヤーに向かって……打ち出された。
リアの一連の動作は綺麗かつ静かで、死角から放たれれば避けることは不可能だと思わせる一撃だった。
(なるほど、スキルはスキル名を口に出さなくても発動できたのか)
そう考えている間に血の槍は四人を貫こうとし……瞬間、青髪の男が血の槍に反応して間一髪で回避をした。
「おー今のを避けるのか!」
普通なら避けられない死角からの一撃。だが、ゼロにはリアの魔術の切っ先が最後、青髪の男からブレたように見えていた。
「ゼロ様、申し訳ございません。仕留め損ないました」
そう言葉を発するリアはミスをした自分を責めるように苦々しい表情でゼロに謝る。
「気にすんな。それに一人くらいは俺も戦って戦闘経験を積んでおかないといけないと思っていたしな」
そう言いながらゼロは前に進み出る。
「お前がアランって言うやつか?」
そう聞いたのは単純に、先程の攻撃を避けることが出来ていたのが彼だけだったからだ。
ゼロは掲示板の書き込みからしてアランというのは有名なプレイヤーなのだろうと予想していた。ならば、それ相応の実力を持っていても可笑しくは無いため確認をしたのだ。
「そうだけど?」
少し間はあったが、青髪の男ことアランはそう答えた。
ゼロはそれを聞いたら笑みが溢れてくる。コイツを殺せばようやく金が手に入る、今より強くなれるんだと考えたら笑うのを止められなかったのだ。
「それならよかった……なら、俺のために死んで、金になってくれ」
ゼロはそう言いながら先程見た無言でのスキル発動を試す。
背中から禍々しい羽が生え、何故か"闇"の様なものが包み込む。
(成功はしてるっぽいけどなんだこれ?騎士から逃げる時は出なかったことを考えるとこれも職業に関連してるのか?)
そうゼロは考えながら今から自分がアランとどう戦うかを考える。
(あ、やべー……カッコイイ悪役をイメージして《悪魔翼生成》を発動させたけど、MPがめっちゃ消費されてるやん。騎士の時は逃げ切って再度ステータス確認する時までには回復してる程度の消費だったのに、今回二倍近く消費されてるじゃねーか!)
ゼロは馬鹿だった。考え無しに行動するせいで現在進行形で金が無くなり、PKという選択肢を取っているのを忘れたのか?と言いたくなるほどである。
(SPはここまでの移動で消費してるから残り1割を切ってるから、[拳術]の武技を使えるのは1、2回程度。MPは削られてるとはいえ、まだまだ余力はあるから魔術主体で戦うか)
そこまで考えたゼロはアランを見据えて手始めに[鑑定]を放つが……
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相手を鑑定するにはスキルレベルが足りません。
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それを見たゼロは何も見れなかったのは初めてだったこともあり内心驚いていたが、即座に気持ちを切り替えアランと視線を交差させ、笑みを浮かべる。
「んじゃ、まずは手始めに殴り合いと行くか!」
「くっ……!」
ゼロが地面を蹴りアレンに肉壁する。何度も殴り掛かりインファイトに持ち込む。
ゼロは別に現実で武術などを習ったことは無いし、スキルだってレベル1のままだ。だが、いくらレベルがゼロよりも高いアランでもゼロの総合ステータスには届いていなかった。スピードで言えばゼロの方が高いだろう。
だが、アランもゼロに負けてなどいなかった。
「フッ!」
アランは一度大きく後ろに下がり、腰に刺していた剣を抜き放ち、ゼロに向かって一息で切りつける。
「……ッ! いい斬撃だなッ!」
ゼロはアランの攻撃を間一髪で避けたと思っていたが、自分の前髪はほんの少し斬られたのを感じ、思い直す。
ゼロは確かにステータス上はアランに勝っているだろう。だが、アラン含めた〈人間〉に共通して言える他の種族では勝てないことがある。それはスキルの豊富さだ。
〈人間〉は他種族と違いほとんどのスキルをスキルポイントの消費を1で獲得出来る上に、ポイントを使わない、努力しての習得速度も早い種族なのだ。
「厄介だな……スキルの練度が高いと言うのは」
ゼロは少々、悪役を演じながらアランに語りかける。もし隙を見せてくれるなら、その間隙を狙って攻撃を打ち込もうと思っていたからだ。
「君にッ……そう言って……貰えるとッ……嬉しいねッ!」
「ハッ!喜んで貰えると俺も嬉しいよッ!」
ゼロと拳とアランの剣が交差し続ける。普通ならアランの剣によって切り裂かれているはずのゼロの手が守られ続けているのはリアに教えてもらった[魔力操作]と[魔力循環]を使い手を魔力で覆って守っているからだ。これが無ければ早々にゼロの手は斬られていただろう。
(右左上左上!左下からはフェイントで右上からの袈裟斬り!まだだ……俺はまだやれる!)
ゼロはこの攻防の中、成長をしていた。今まで戦った事など無いためセオリーなんて物はゼロは知らない。だからこその柔軟な頭でアランの意識の外をつく。
(ここしか無い!)
「暗闇!」
ゼロが発動させたのは[闇魔術]のレベル1魔術、暗闇。本来そこまで広い範囲に影響を与えられず、薄らと周囲を確認できる程度の闇を展開する、いかにも最初の魔術といった弱い魔術なのだが、ゼロのソレは違った。
「なっ……!何も見えない!?」
悪魔の真骨頂。あらゆる種族の中で最も魔物に近く、神に敵対する悪魔が悪魔足り得た魔術こそ"闇魔術"である。
悪魔は全種族の中で最も闇魔術の適正が高く、さらにゼロはさらに闇の適正を引き上げる【悪意の体現者】だった。つまり、この周囲を覆い尽くした暗闇は起こるべくして起こった現象だった。
「だが、俺は見えてるぜ」
魔術を発動させた本人だからこそ魔術を無視して見ることの出来るアランの姿。ゼロはすぐさまアランの後ろに回り込み、温存していた武技を解き放った。
「魔掌底!」
「グハッ……!」
その一撃を食らったことでアランの手から剣が離れる。
魔掌底とは[拳術]の武技である"掌底打ち"をスキルの[魔力操作]と[魔力循環]で拳全体を覆い、撃ち込むと同時に魔力の衝撃を相手に流すという、武術経験が無いゼロなりに考えて作ったオリジナルの技なのだ。
「クッ……!」
だがそれでもまだ倒すには足りない。このゲームはHPという概念が無いので相手の意識を飛ばすか殺しきるまで戦いが終わらないのだ。
だが、ゼロはアランの手から離れた剣を空中でキャッチする。
「あ……」
アランは自分の手の中を見て剣が無いことに気づき顔面が蒼白になっていく。
咄嗟に後ろを向いてアランは逃げようとしたがその前に先程までじっとしていたリアがアランの行く手を阻む。
「残念ですが、逃がしません」
「そゆことだ。なかなか楽しめたぜアラン」
その言葉と同時にアランは背中を切り裂かれる。
薄れゆく意識の中アランはゼロに一言呟いた。
「お前は……何……者だ…?」
「俺は俺だぜ?……ただ言うなれば……」
不敵に嗤う男の最後の言葉は聞き取れなかったが、何となくアレンは言ったことは理解していた。
『人間の敵だ』
アレンは悔しそうな顔をしながら消えていく。
そして"始まりの街"でまた復活をする。
次回はゼロのステータスを更新する予定です。
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