最終回溢れる涙から・・・
華やかだった庭から椅子、テーブル、料理が消え、次々に人が去り、色とりどりのカーテンとブーケは吹き飛ばされ、枯れ葉だけが舞い込んでいた・・・
アメリアが四つん這いになったまま、辺りを見渡し哀しんでいると・・・
「アメリア!大丈夫か!」
ネロが馬から飛び降り駆け付けて来る!
「あぁ・・ネロ!何もかも無くなってしまった!」
アメリアの瞳から、今にも涙が溢れそうになっていた・・・
「遅れてゴメンよ・・アメリア・・僕が来ないから心配したろう・・君を不安にさせてゴメン・・」
ネロは、優しくアメリアを抱き寄せる・・
「ううん・・・不安なんて全然感じなかった・・・だって、あなたは絶対来るって信じていたから」
ネロを見つめるアメリアの瞳から、涙がこぼれた
「じゃあ・・泣かないでくれよ・・・さぁ・涙を拭いて・・・」
「だって・・・・みんな無くなってしまったんだもの・・・つい、さっきまであったのよ・・このお庭を囲んで、色とりどりのカーテンがいっぱい・・・凄く綺麗だったのよ・・・ブーケだってあったんだから・・・でも・・みんな何処かに飛んでいっちゃった・・・」
そう話しながら、アメリアの瞳からは、ポロポロと涙がこぼれ落ちて来る
「・・・お料理だって、いっぱいあったの・・・・お祝いに来てくれた人もいたし・・・・あなたの国からも来てくれてた・・でもねっ、あなたが居ないから・・・あなたが来ないから・・・あなたのお父様が延期するって、みんな帰ってしまったの・・・神父様も・・みんな帰っちゃって・・・ずぅーと、私一人であなたを待っていたのよ・・・・それでねっ・・・ドレスがねっ・・破れて・・みんな飛んでいっちゃった・・う・うっ・うわぁぁーーーん!」
ついに、大声で泣き出してしまった・・・・
「泣かないでアメリア・・僕は君がいてくれれば、それでいいんだから・・・」
ネロが宥めても、アメリアは子供のように泣きじゃくる・・・
「・・ひっ・ひっく・・ブッ・ブーケだってねっ・作るのに・・1週間も掛かったんだから・・そっ・それなのに・・うぇぇ~~~ん!」
「アメリア・・・遅くなった僕が悪いんだ・・・・ゴメンよ・・でも、大丈夫だ!僕は君のために取って置きの物を持って来たから!これを見れば、絶対元気になる!」
ネロはそう言うと、タオから花のケースを受け取りまだ泣いているアメリアに見せた。
アメリアは涙目で、ケースに顔を近付け、中を覗き込む・・・
「・・お花?・・まだ蕾だけど・・白い花・・」
アメリアは涙を拭き、幽霊でも見たかの様な顔で、ネロを見てからまたケースに顔を近付けた。
「凄い・・この花・・・枯れずに残っていたのね」
アメリアが笑顔になって来るとネロは
「この花を君に見せたくて、僕は花を借りにアロマ王国まで行って来たんだ!」
アメリアはネロの話を聞きながら、まだ花が咲いていた事に歓び、3ヶ月振りに見る花を嬉しそうに眺めていた・・・
「この花には凄い力があってね、みんなを元気にするんだ!特別な花なんだ!そして、なんと!この花を僕は王様から戴いたんだよ!僕達二人の結婚祝いにって!」
「まぁ凄い!何て凄いの!お花を戴けたなんて!」
アメリアの瞳は歓びの輝きに満ちていた・・・
「この花は希望の花ねっ!この花を見れば、また花が咲く世の中が来ることを皆が信じてくれる・・・元気になって貰えるわっ!」
「そうじゃないよ、アメリア・・・希望の花なんかじゃない・・・この花は、特別な花なんだ!全ての花の源なんだよ!」
「えっ?どういうこと・・希望の花じゃないの?」
するとネロは立ち上がって、庭を見渡し、歩き出した・・・庭の角の枯れた薔薇と牡丹の木の間に腰を下ろすと
「おいで!アメリア・・」
アメリアは立ち上がり、ドレスの裾を引きずりネロの元へ・・・
ネロはナイフで土を10センチ位掘り起こすと、慎重に花のケースを外し、鉢から白い蕾の花を取り出し植え付けた・・・
タオが水の入った如雨露を差し出すと、ネロが
「アメリア・・この花に水をあげて見て!」
「うん!」
アメリアは、久しぶりに花に水を与える事に、笑顔で如雨露を手にする。
蕾に水が掛かると開き始め・・中から光輝く虹色の花びらがどんどん広がって行き、花の女神が姿を現した・・・
アメリアは、花の女神の姿に驚いて手にした如雨露を落としていた・・・
「・・凄い・・一体どういう事なの・・ネロ・」
「花の女神さっ!どうだい、元気が出てくるだろう」
「うん!・・出てくる!」
「アロマ王国からの帰りに、この花で町や村を元気づけて来たんだ!君には悪かったけど・・・それで遅れてしまった」
「ううん!全然悪くないわ!素敵・・・」
アメリアは輝く笑顔に一筋の涙を流し、見上げている・・・
ネロとタオは、いつものように空へと消えるまで、笑顔で花の女神を見上げていたが今回の女神は、言葉を発した。力強く、生命力に溢れた声を!
「さぁ!咲かせるわよ!」
一声と同時に花の女神は、勢いよく地中へと消えて行く!
女神が消えた瞬間!枯れてた薔薇と牡丹の木が一斉に花を咲かせたかと思ったら、庭に花の絨毯が広がり、あっという間に花が咲き乱れ、道や野原へ広がり、遠くの山々まで華やかに色付けていった。
世界に花が戻った!
花で溢れ返った庭を見渡すアメリア・・
「・お花が・・お花が咲いてるわ・・いっぱい・・春や夏の花もみんな咲いてる・・」
花の中で、輝く笑顔を魅せるアメリアをそっと抱き寄せるネロ・・・アメリアはネロに身を寄せ・・・
「・・なんだか・・・・とっても幸せ・・」
「そりゃそうさ!何たって今日は、僕らの結婚式の日なんだ!」
花の中で身を寄せ合う二人を笑顔で見守るタオ・・
アメリアはネロに寄り添い、咲き誇る花をうっとり見つめ・・・
「・・・お花が私達に話し掛けてるみたい・・・」
そう言うと、ネロがアメリアの肩を抱き寄せ
「祝福してるのさっ!僕達の事を・・・」
と言い、花を見上げて
「花はいつも僕達に語りかけているんだよ・・お祝いの言葉や歓びの言葉・・・哀しい時には、励ましの言葉や慰めの言葉を・・・・残念ながらその声を聞くことはできないけれど・・心の何処かでそれを感じるんだよ、きっと。だから人は花を見て、喜んだり元気付けられたりできるんだ。」
「・・・そうねっ・・花が無くなったら、みんなの元気も無くなったもん・・・人は花が無いと生きて行けないのよ、きっと・・・」
「いや!僕は花が無くても生きて行けるさっ!」
「本当?・・」
「あぁそうさっ!僕は君がいれば生きて行ける!僕にとって君は花だ!どんな花より美しい花だよ!」
とアメリアを見つめ
「さぁ!結婚式を始めよう!君は僕の花嫁だ!」
アメリアを抱き上げ歩き出した・・・
「でも、もう神父様は帰っちゃったのよ・・」
「神父の代わりは、タオにやってもらうさっ!」
(・・・おわり)