4話 真実の中の真実
国王はネロの話に注意深く耳を傾ける・・
「真夜中頃、眠っていた僕に声が聞こえてきたんです・・・『助けてください』って、僕は目を覚まし辺りを見渡しましたが、タオの寝ている姿しか見えない・・・・夢かと思い横になると、また聞こえて来たんです・・・『どうか、私を助けてください』って・・・これは夢じゃないぞ!と思い、声のする方に向かって行きました・・・・玉座の横を通り、たどり着いた部屋にあの花が見えたのです・・・
ケースに入った花の前には二人の兵士が立っていて、僕が近付いて行くと
『ネロ王子!ここは立ち入り禁止です。お戻りください』
と言うので、僕は二人の兵士に尋ねたんです
『君達には、この声が聞こえないんですか?』と、
『声なんか聞こえませんけど・・・』
僕にはこんなにハッキリ聞こえるのに、二人には聞こえないなんて・・・そこで僕は心のなかであの花に話し掛けて見たんです
『助けるって、どうすればいいんだい?』
すると、あの花は応えて来ました。
『どうか、私を地上に戻して下さい』って、僕は『それだけでいいのかい』と聞くと
『はい、私は地上に咲く花の源・・・・3ヶ月前に地上から抜かれてしまいました・・・地上に戻していただき、また花を咲かせたいのです。』
・・・で、花のケースに手を伸ばした所を、兵士に取り押さえられてしまいました・・・」
ネロが話し終わると、王は目を閉じ、指で瞼を擦り考え込んでいた・・・
すると、考え込む王にネロが尋ねる
「王様はなぜ、あの花を抜いたのですか!」
王はじっとネロを見つめ・・・深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出すと
「この国のためじゃよ・・・あの花は、この城の庭で200年以上枯れることなく、ひっそりと咲き続けて来た・・・我が先祖が他で見つけ植えた物だが、言い伝えがあってな・・・あの花を抜けば世界中の花が枯れてしまうが、鉢に移し水を与え、あの花の真の姿を目にすれば、人の哀しみを取り去り、元気を与えると・・・この国は一年前、王子を失ない暗く沈んでしまった・・・・半年経っても、国の世継ぎを亡くした哀しみは増すばかり・・民に元気を与える為に、私が花を抜いたんじゃよ・・・」
「他の国の事は考えなかったのですか?」
「私の国が沈み込んでいる時に、他の国は何かしてくれたのかい・・・みんな自分の国の事で精一杯なんじゃよ・・・」
そう話すと、王は兵士に向かって
「二人の縄をほどいてやってくれ・・・」
と言った。
「ほっ・ほどくのですかっ!」
「あぁ・・そうだ・・・」
「しっしかし、法律を破るのですかっ・・・王様が造った法律を王様が破れと言うのですか!」
「あの花は、もう私の花ではない、ネロの物だ・・昨夜、結婚祝いに贈ったのだよ・・・」
ネロとタオはアロマ王国を後にした・・・少し出発が遅れたが、走り方で取り戻せるし、花を貰ったことで気分が盛り上がり、手綱にも力が入る・・・
「アメリアがこの花を見たら驚くだろうな・・」
ネロの急ぐ気持ちと裏腹に、馬の方が悲鳴を上げていた・・・走り続けて来た疲れが、ここに来て出てしまったのだ。
いい馬が居れば借りようと、近くの町に向かうが、その町は、今にも暴動になる寸前だった。
王子が他の町に向かうか考えていると、タオが
「王子!ここで花に水をやってはどうです」
すると、王子は
「そうかっ!この花の真の姿を見れば、暴動なんか止めて、みんな笑顔になるかもな!」
タオが、その辺に捨てられていた如雨露に水を汲んできて、二人は暴動が起きようとしているど真ん中で、花に水をかけた!
白い蕾が開き、中から虹色の女神を目にした人達は、手に持っていた武器を放し呆然と見つめ・・・やがて笑顔に変わる・・・・おまけに、疲れ切っていた馬にも元気が戻っていた。
「凄いな、馬まで元気になったぞ!」
王子は笑顔を魅せ、タオは如雨露を剣の様に振り回しながら
「他の町でもやりましょう!王子!」
「そうだな!」
日が暮れ、暗闇の中に焚き火の明かりが見える・・
アロマ王国に向かっていた時と違い、ネロとタオの表情は明るく、楽しい時を過ごしていた。
「いやぁーっ!王子が盗もうとした事を認めた時は、どうなる事かと思いましたよ!」
「ハッハッハッ・・あの時のタオの顔・・思い出すだけで笑えてくる・・・あの顔には花の女神に負けない力を感じるな!」
「アハハハッ・・冗談はよしてくださいよハハハ・ただ、王子・・・アロマの王妃は花の女神を見ても元気になれなかった・・・・みんなに効くって訳じゃないんですね・・・」
タオが王妃の顔を思い出し、溜め息をつくと王子が
「王妃は、花の女神を見てないんだよ!」
と言った。
「えっ!どうしてですか?」
「王様も見てないはずだ・・・・花の女神を見て、哀しみを取り去り笑顔になりたくないんだよ・・・二人は王子を亡くした哀しみの中で生きたい・・・サムの事を思って生きていたいのさ・・・・でも、国民には元気を取り戻して欲しい・・・・だから、王様はこの花を抜いたんだろう・・・」
二人は、鉢に植えられた白い蕾の花を、ただ静かに眺めていた・・・