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世界でひとつの花  作者: 生丸八光
3/6

3話真夜中に

ネロは食事をしながら、王と王妃に、花を見てどれだけ驚いたのか何度も説明し、花を借りようとした自分がいかに愚かだったか謝り、反省の態度を見せていた。


「まぁまぁ・・・もう気にするでない・・・ワシとしても、ネロの結婚祝いに何も出来ずに、申し訳ないと思ってるんじゃ・・・サムが生きていたらさぞ喜んだろうに・・・」

と言いながら、哀しみを浮かべ王妃の顔を見た・・王妃は哀しみに耐える様に笑みを見せる・・・


二人は王子を亡くしていた・・・


一年前に大切な一人息子を病気で・・・・まだ13歳だった・・・

ネロもサムを弟のように可愛がり、よく一緒に遊んだ当時の事を思い出す・・・


食卓に静かな時間が流れていると、王が


「もう今日は、お開きにしよう・・ネロは、朝早くに出発せねばならん、結婚式に遅れでもしたら花嫁が可哀想じゃ。」


「はい!分かってます!」


ネロとタオは、寝室に案内されると直ぐにベットに入った・・・・が、タオは王妃の哀しい笑顔が気になり・・・


「王子・・・なぜ、王妃はあんなに哀しい顔をしてたんだろう・・・あの花を見ても元気になれなかったのかなぁ・・・」


「・・・僕にはわからないよ・・息子を亡くした哀しみが、どれ程のものなのか・・・」


タオは王子の言葉に納得して、明日からまた馬で走る事を考え、眠りに入った・・・・




真夜中を過ぎた頃・・・


「おい!起きろ!」

ぐっすり眠っていたタオが突然起こされた・・・

目の前に兵士が数人、剣を抜きタオの鼻先に突き付けている。


「何事ですか!」


タオは突然の出来事の訳を尋ねながら、王子の無事を確認するため、王子が寝ていたベッドに顔を向けた。


『・・王子がいない!』

「どうしたぁーっ!王子に何をしたっ!」

タオが大声を張り上げた!


「おとなしくしろ!今、会わせてやる!」


後ろ手に縛られ、王子の元へと連れられて行くタオ



玉座の前で、手足を縛られ寝転がる王子の周りを、十数人の兵士が取り囲む、それを目にしたタオ!


「何をしている!王子を離せ!」

声を発すると同時に、横にいた兵士の剣を後ろ手に抜き取り、突き飛ばすと、素早く手の縄を切り剣を正面に持ち替えた。


王子の近くまで駆け寄ると剣を構え


「貴様ら分かっているのか!そのお方は、ネピア国の王子だぞ!」

と怒鳴り付ける。


兵士の一人が前に出て

「分かってるさっ!お前も仲間か、仲間なら捕まえねばならん!」


「仲間だ!」

タオがそう応えると、兵士が斬り掛かって行く!


タオは相手の剣を2,3回軽く交わすと、回し蹴り一発でブッ飛ばし

「オレは、ネピアで一番の剣士、ここにいる全員を倒す自信がある。話し合うか戦うか選べ!」



「話し合う気はない・・」

リーダー格の兵士が応え、兵士を増員する指示を出した。


「王子が何をしたぁ!」

タオの(とい)

「話し合う気はないが、答えてやる・・花を盗もうとしたんだよ!」


「ぬっ・・盗みだとぉ!王子がそんな事するはずがない!」


「したんだよぉーっ!王様の花を!」


「何かの間違いだ!オレは子供の頃から王子を知っている・・・王子はそんな事しない!・・・王子と直接話をさせてくれ・・もし、王子が認めたなら、オレは剣を棄てる!」


兵士が王子の体を引きずり、タオの前に連れてきた


「王子!間違いですよねっ・・・盗もうなんてしてませんよね・・」


王子は、タオの目を真っ直ぐに見つめ、ハッキリと


「盗もうとした!」

と答えた・・・


「王子ぃ~~っ・・・・!」

タオは情けない声を出し、ガックリと力を抜き、剣を(はな)した・・・



タオの手足を縛り上げた兵士は、二人に向かって


「お前達も気の毒に・・・王様の花を盗もうとした者は、たとえ誰であっても死刑だ・・・法律で決まってんだ・・・王様が目を覚ますまでの命だぞ・・覚悟しておけよ・・・」


王子とタオは玉座の前に転がされ、兵士が監視する中で朝を迎えた・・・


国王が目を覚まし玉座に姿を見せると、兵士がネロとタオを正座させ


「王様!昨夜は2名を捕まえました!」


王は、溜め息を付きながら・・・

「またか・・・」

と呟き・・・二人の顔を見た・・・


「なっ・!・・ネッ・ネロではないか!一体、どういう事だ!」


「この者達は昨夜、王様の花を盗み出そうとしました。どうか、死刑を宣告して下さい王様!」


王は頭をかかえ・・・

「あぁ・・・ネロ・・・王子とも在ろう者が・・・何という事を仕出かしてくれたんじゃ・・・」


ネロは覚悟を決めたのか・・・背筋を伸ばし胸を張り、目を閉じ微動だにせず、正座していた・・・


「ネロ・・・何があったと言うのだ・・・」


王の言葉にネロは、静かに目を開き


「声が聞こえたのです!王様・・・」

と口を開いた・・・

「声!・・声とは・・詳しく話してみよ・・・」




「昨夜は食事の後、次の日の事を考え直ぐにベッドに入りました・・・」


ネロは、昨夜の事を思い出しながら話し始めた・・







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