3話真夜中に
ネロは食事をしながら、王と王妃に、花を見てどれだけ驚いたのか何度も説明し、花を借りようとした自分がいかに愚かだったか謝り、反省の態度を見せていた。
「まぁまぁ・・・もう気にするでない・・・ワシとしても、ネロの結婚祝いに何も出来ずに、申し訳ないと思ってるんじゃ・・・サムが生きていたらさぞ喜んだろうに・・・」
と言いながら、哀しみを浮かべ王妃の顔を見た・・王妃は哀しみに耐える様に笑みを見せる・・・
二人は王子を亡くしていた・・・
一年前に大切な一人息子を病気で・・・・まだ13歳だった・・・
ネロもサムを弟のように可愛がり、よく一緒に遊んだ当時の事を思い出す・・・
食卓に静かな時間が流れていると、王が
「もう今日は、お開きにしよう・・ネロは、朝早くに出発せねばならん、結婚式に遅れでもしたら花嫁が可哀想じゃ。」
「はい!分かってます!」
ネロとタオは、寝室に案内されると直ぐにベットに入った・・・・が、タオは王妃の哀しい笑顔が気になり・・・
「王子・・・なぜ、王妃はあんなに哀しい顔をしてたんだろう・・・あの花を見ても元気になれなかったのかなぁ・・・」
「・・・僕にはわからないよ・・息子を亡くした哀しみが、どれ程のものなのか・・・」
タオは王子の言葉に納得して、明日からまた馬で走る事を考え、眠りに入った・・・・
真夜中を過ぎた頃・・・
「おい!起きろ!」
ぐっすり眠っていたタオが突然起こされた・・・
目の前に兵士が数人、剣を抜きタオの鼻先に突き付けている。
「何事ですか!」
タオは突然の出来事の訳を尋ねながら、王子の無事を確認するため、王子が寝ていたベッドに顔を向けた。
『・・王子がいない!』
「どうしたぁーっ!王子に何をしたっ!」
タオが大声を張り上げた!
「おとなしくしろ!今、会わせてやる!」
後ろ手に縛られ、王子の元へと連れられて行くタオ
玉座の前で、手足を縛られ寝転がる王子の周りを、十数人の兵士が取り囲む、それを目にしたタオ!
「何をしている!王子を離せ!」
声を発すると同時に、横にいた兵士の剣を後ろ手に抜き取り、突き飛ばすと、素早く手の縄を切り剣を正面に持ち替えた。
王子の近くまで駆け寄ると剣を構え
「貴様ら分かっているのか!そのお方は、ネピア国の王子だぞ!」
と怒鳴り付ける。
兵士の一人が前に出て
「分かってるさっ!お前も仲間か、仲間なら捕まえねばならん!」
「仲間だ!」
タオがそう応えると、兵士が斬り掛かって行く!
タオは相手の剣を2,3回軽く交わすと、回し蹴り一発でブッ飛ばし
「オレは、ネピアで一番の剣士、ここにいる全員を倒す自信がある。話し合うか戦うか選べ!」
「話し合う気はない・・」
リーダー格の兵士が応え、兵士を増員する指示を出した。
「王子が何をしたぁ!」
タオの問に
「話し合う気はないが、答えてやる・・花を盗もうとしたんだよ!」
「ぬっ・・盗みだとぉ!王子がそんな事するはずがない!」
「したんだよぉーっ!王様の花を!」
「何かの間違いだ!オレは子供の頃から王子を知っている・・・王子はそんな事しない!・・・王子と直接話をさせてくれ・・もし、王子が認めたなら、オレは剣を棄てる!」
兵士が王子の体を引きずり、タオの前に連れてきた
「王子!間違いですよねっ・・・盗もうなんてしてませんよね・・」
王子は、タオの目を真っ直ぐに見つめ、ハッキリと
「盗もうとした!」
と答えた・・・
「王子ぃ~~っ・・・・!」
タオは情けない声を出し、ガックリと力を抜き、剣を放した・・・
タオの手足を縛り上げた兵士は、二人に向かって
「お前達も気の毒に・・・王様の花を盗もうとした者は、たとえ誰であっても死刑だ・・・法律で決まってんだ・・・王様が目を覚ますまでの命だぞ・・覚悟しておけよ・・・」
王子とタオは玉座の前に転がされ、兵士が監視する中で朝を迎えた・・・
国王が目を覚まし玉座に姿を見せると、兵士がネロとタオを正座させ
「王様!昨夜は2名を捕まえました!」
王は、溜め息を付きながら・・・
「またか・・・」
と呟き・・・二人の顔を見た・・・
「なっ・!・・ネッ・ネロではないか!一体、どういう事だ!」
「この者達は昨夜、王様の花を盗み出そうとしました。どうか、死刑を宣告して下さい王様!」
王は頭をかかえ・・・
「あぁ・・・ネロ・・・王子とも在ろう者が・・・何という事を仕出かしてくれたんじゃ・・・」
ネロは覚悟を決めたのか・・・背筋を伸ばし胸を張り、目を閉じ微動だにせず、正座していた・・・
「ネロ・・・何があったと言うのだ・・・」
王の言葉にネロは、静かに目を開き
「声が聞こえたのです!王様・・・」
と口を開いた・・・
「声!・・声とは・・詳しく話してみよ・・・」
「昨夜は食事の後、次の日の事を考え直ぐにベッドに入りました・・・」
ネロは、昨夜の事を思い出しながら話し始めた・・