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世界でひとつの花  作者: 生丸八光
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1話 ある日突然

 その国は、花の咲き乱れる美しい国であった・・


 その国の人は(まず)しく、(つつ)ましい生活をしていたが、笑顔にあふれ、明るく(おだ)やかな日々を過ごしている。


 高価な宝石は無いけれど、色とりどりの花が生活を飾り、(うれ)しい事を(はな)やかに盛り上げ、悲しい時は、その心を(なぐさ)める・・花が暮らしを豊かにしていたのだ・・


 優しい国王に王妃、一人の美しい王女が暮らす城は、花で(あふ)れ返っている。


 王女は3ヶ月後に結婚式を控えていて、お相手は隣の国の第3王子。

 幼い頃から気心が知れた2人は、その日が来るのを待ちわび、王女は今日も花に水を与えていたが、それは突然に起こった・・


目の前で咲いていた花が急に(しお)れ、灰のように崩れ落ちてしまったのだ。

それは、この国だけでなく世界中で起こり、一瞬でこの世から花が無くなってしまったのだ・・


 人々は恐れ(おのの)き、様々な噂話が飛び()う。天変地異の前触れだとか、毒が漂っているとか・・中には、魔王が地上に降りて来たんだ!と言った声まで真剣に(ささや)かれた・・


 この日を境に人々の暮らしは一変し、何か悪い事が起きるのではと臆病になり、家に閉じ籠り、ひっそりと暮らす様になる・・


 王女の結婚式も延期に・・


 結婚延期の知らせに、王子が直ぐに王女の元へと()け付けた!


「アメリア!どうしたんだ!延期するって!」


「あぁネロ!こんな事になるなんて・・私達、どうなってしまうの?・・」


瞳を潤ませ見つめる王女に王子は

「訳を話して・・」


王女は涙をこらえ話し始めた・・


「花が消えて国中が沈んでいるの・・お祝いの花飾りや花束もなくなり、墓前に供える花もない・・みんな元気を無くしてしまったわ・・こんな時に結婚しても誰も祝福してくれない・・それに見て、このお庭を・・あんなにいっぱい咲いていた花が今は何もないの・・ここで式を挙げるはずだったのに・・」


アメリアの悲しむ顔にネロは


「みんなそうさ!突然、目の前にあった花が枯れ、悲しんでる・・でも、そんな事で延期するなんて言わないでくれよ・・」


「結婚式の花飾りや、ブーケも無いのよ・・」


「そんなの気にしない!誰の祝福だっていらないさ!花が無ければ宝石を飾ればいいじゃないか!二人の式を(まぶ)しいくらいの宝石で埋め尽くそう!」


「そんな宝石ある訳ないじゃない!あなたが一番分かってるでしょ!」


「ハハハそうだね!僕は宝石も花もいらない!君と一緒にいるだけで幸せなんだ!僕にとって君は、どんな花や宝石よりも美しく、輝いて見えるんだから!」


王子の見せた笑顔に、王女は一筋の涙と安堵の笑みを魅せ、予定通り式する事を約束すると、王子は国へ帰っていく・・



 花の咲く気配もなく月日は流れ、二人の式まで、あと一週間となっていた・・そんな折、王子に耳寄りな知らせが入ってくる。

それは旅商人からで、西のアロマ王国に一輪だけ花が咲いているという話であった・・


「ほっ・・本当なのか?」


「本当です!その花はアロマ王国の王様の物で、その花を見るために大勢の人が並んでいるのです。」


「僕も見てみたい・・アロマ王国・・5日もあれば帰って来れる!よし!行ってこよう!」


アロマ王国とは同盟国で、何度か王様に合った事があり、上手く頼めば花を貸してもらえると考えた。


「そうだ!父上に親書(しんしょ)を書いてもらおう!」

直ぐに玉座へ向かい、アロマ王国に行く事を伝え、親書を書いて欲しいと頼み込むが・・


「ネロ・・式まで一週間じゃぞ!世の中が荒れておる時に・・式をするのも大変なんじゃ!外国に行くなんぞ言わずに、大人しくしておれ!」


王がそう言うのも当然だった・・


日が経つにつれ、皆、直ぐに(いら)つく様になり、あちこちで言い争いやケンカが起きていた。こんな時に外国に行くのは危険な事だと・・


「父上!僕は、どうしても行きたいんだ!本当に花が咲いているのか、この目で確かめたい!」


王子が一度決めたら(ゆず)らない性格を理解していた王は、溜め息をつき

「無茶をしてはいかんぞ・・」

と渋々親書を書き出し

「ちゃんと護衛を連れて行くんじゃぞ!」

と王子に手渡す。


「はい、分かりました父上!」


親書を受け取り、王子は直ぐに旅立つ!


護衛には、国で一番の剣の使い手タオを連れて・・







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