EPISODE 金欠巡礼者の闘い-2end
続きます
決闘場についた。ここには大抵金銭的な問題を抱えた魔法使いが多いため、柄の悪く目つきも顔つきもゴロツキのような魔法使いが多い。
戦い方も攻撃魔法でゴリ押していくスタイルで、性格も荒い奴が多い。
カミヤはユウとコンビを組んで、買ってきたアクアビレッジの通行手形を賭けて勝負に挑むことにした。
「わたしたち、負けたらおしまいだよね」
ユウは心配そうにカミヤを見つめている。
カミヤはそんな弱音を吐いてる場合じゃないため、闘志のある目つきに変わっていた。
既に戦術は頭の中にある。
閃光で敵の目をつぶしたスキに雷迅を繰出す戦法なら、ゴリ押しでくるタイプの野郎魔法使いには圧勝できると踏んでいた。
2人は決闘場の受付を済ませた後、数十分待機した後、闘うフィールドに立たされる。
「ボルトスクール出身の期待の若手コンビはアクアビレッジを賭けました」
場内にアナウンスが鳴る。
「対するはフェザービレッジの外国人で賭けたものは10セーンゴールドです」
10セーンゴールドあればアクアビレッジに到着するまでの食料と魔術書まで購入出来る大金だ。そして敵はフェザービレッジ、風の魔法の使い手である。
「俺はフェザービレッジ所属、コールだ。俺は一人だがお前らより魔法使い歴が20年高い、だからハンデとして戦ってやる」
魔法使い歴とは魔法使いとして自分のなかで決めた時点から換算されるので、主観的なものだ。
「俺はボルトビレッジ出身のカミヤと、相方のユウだ。今日はよろしく」
挨拶と握手を済ませ一定の距離を取った後、
「それでは決闘を開始してください」
アナウンスにより闘いがはじまった。
まず動き出したのはコールからだった。
闘う姿勢の半身になったカミヤとユウは相手の出方を伺う。
こっちは雷、あちらは風、どちらが強いのかはボルトビレッジのキングが証明している。
そうカミヤは言い聞かせていた。
「風閃!」
ボゥッという丸い球体の風をコールは作り出し、それを2人めがけて発射する。
「防雷型─雷衝!」
カミヤは魔法を繰り出す応用術、型を習得していたため、襲いかかる風を防雷で防ぎ、その防雷でできた雷を使いそのまま雷衝をコールにカウンターを仕掛ける。
ひらりと雷の衝撃波をかわし、再び風閃を作り出し、今度はユウにめがけて発射する。
「若いお前らにはこの魔法で十分だ」
「ユウ!避けろ!」
カミヤの叫び声は虚しく風閃はユウに直撃した。
「きゃあ!!」
ユウは風閃に女のか弱き体は軽々しく持ち上げられた。
風閃は直撃した相手を上空に持ち上げることが出来る魔法だった。
「くっ……」
カミヤはユウを戦闘不能にするわけにはいかなかった。この相手はゴロツキなんかじゃない。強い魔法使いだと察した。そのため回復魔法が使えるユウを失うわけにもいかない。
「補・防雷!」
カミヤは防雷をユウにかけて、上空に持ち上げられたユウを守ろうとする。
「スキがありすぎだぜ」
コールは風魔法、風月という雷衝と同じ風魔法をカミヤに発射する。
防雷を発動するすきに風の衝撃波魔法を喰らい、カミヤは吹き飛ばされる。
魔力が違いすぎる。
防雷で守られていたユウは地面に落下するもダメージは少なく済んだが、風月によって吹き飛ばされたカミヤは地面に膝をつけており戦闘不能直前だった。
立ち上がろうと地面に手を付けて体を起こそうした瞬間、さらにコールは風月を唱えカミヤはさらに体を吹き飛ばされ壁に直撃してしまう。
カミヤは戦闘不能に陥いる直前だった。
「くそ……降参かよ……」
(轟だ)
突然、どこからともなく声が聞こえた。カミヤにしか聞こえない声だった。
コールはカミヤを戦闘不能で降参すると判断し、ユウめがけて風月を放つ。
負ける訳にはいかない、巡礼者として成功し、ボルトビレッジでの経験を無下にできない。
カミヤは歯を食いしばった。
(わかった)
最後の魔力を振り絞り、カミヤは雷迅の構えをとる。
「轟・雷迅!!」
イツキが自分に使い降参に追い込まれた呪文詠唱、轟階の魔法、雷迅。
カミヤの掌は閃光で辺りを照らし、放たれる。
雷の轟音が鳴り響き、コール目掛けてVの字のようにクネクネと強力な雷迅がコールを襲う。
風月を唱えようとしたコールのスキをついた為、容易に直撃する。
直撃、コールはうめき声を上げながらその場で雷の衝撃に体を震わせる。
「雷衝の型─雷迅!」
留めを刺すために立ち上がっていたユウがさらにコールに攻撃型の攻撃魔法を放つ。
攻撃魔法をしながら、連続で攻撃魔法を繰り出すという高等魔術である。
まず雷衝で轟迅雷の痛みに震えているコールを吹き飛ばす。さらに雷迅でダメを押す。
コールは壁に直撃したのち、負けを認めた表情になり、肩をすくめて両腕をあげて降参のポーズをとった。
かくして決闘に勝利したカミヤとユウは金銭を獲得し、アクアビレッジへ向かうまでの食料と雷の上位魔法の魔術書を購入し、この商人の町を出るのであった。
「あの声は……」
カミヤがそう呟いた刹那
(よくやった)
また聞こえてきた。
「お前は……」
「カミヤくん、どうしたの?」
傷だらけのカミヤを心配しながら、ユウはカミヤに問いかける。
「いや、なんでもないんだ、なんでも……」
一抹の疑問だけは残ったが、結果として勝利を収めた2人、今はただその勝利後のドリンクで乾杯をしていた。
EPISODE 金欠巡礼者 終