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シルビーの宝の最期

フローラは伯父夫婦が両親を殺そうとしているのに気付いていた。

両親が倒れてからは伯爵印はフローラが管理していた。伯爵印の保管場所は本家の者しか知らない。分家の伯父には決して教えず触らせない。


「フローラには無理だろう?伯爵は」

「私が代行しますわ。父より留守を預かる教育を受けております」


フローラは伯父夫婦の申し入れを淑やかな笑みを浮かべて断る。フローリアとブライトは両親に付き添い看病していた。フローラは弟と妹を伯父夫婦に近づけない。両親の側にいない時もブライトには言い聞かせてあり、フローリアはケインの傍にいるので会うことはない。選民意識の強い伯父夫婦は使用人の穴場である裏庭に足を運ばないから。

伯父夫婦はフローラがシルビー伯爵家で一番優秀で下の二人は単なる子供だと思っているのでフローラはその勘違いを利用する。


狡猾な伯父夫婦相手に子供のフローラの力ではシルビー伯爵家が守れないと気付き後ろ盾を探し始める。そして選んだのは平民の愛人に夢中なエバンズ侯爵。

フローラは自分に似た愛人を持つエバンズ候爵との接触に成功する。取引を断られるのはわかっていた。エバンズ候爵と本当の取引するのはフローラの役目ではない。力になってくれると約束を取り付け淑やかな笑みを浮かべて礼をして後にする。


シルビー伯爵家の医師は伯父夫婦に買収されている。

短気な伯父が毒に侵されても苦悶の表情を見せない父を見て、さらに強い毒を使うのも予想していた。伯父と父との会話をフローリアが聞いたのは偶然。

フローラは驚いているフローリアが伯父に見つからないように隠し、伯父を誘導する。


眠れるようにと伯父に出されたお茶が毒入りだと気付いていた。お茶に手を付け不自然な様子のないように服の袖を汚す。拒めば無理矢理飲まされるのでフローラは淑やかな笑みを浮かべて最期のお茶を口に含む。


「伯父様、シルビーの執念お楽しみください」

「フローラ、もう遅い。ゆっくりと休みなさい……安らかに」

「お休みなさいませ」


フローラは伯父の消えた背中をを見送った。いつ殺されてもいいように準備をしていた。伯父夫婦に買収された家臣も多く誰も信用できない。解毒薬のない毒を両親に飲ませ、惨めな姿を眺めるのを楽しみにしている伯父の思い通りになるのをフローラは許さない。消えゆく両親の命の灯に気付かないフリをして明るく笑顔で看病する妹。刃を隠して道化を演じる弟。散々悩んだ末にフローラは策を仕掛けた。


「リア、頑張りなさい。ご褒美を用意してありますよ。ブライト、遠慮せず容赦なく成し遂げなさい。リアがシルビーを守るわ。でもやり返すのはブライトの十八番でしょ?ケイン、私の期待を裏切るなら呪いますわ。伯父様、伯母様、私の妹と弟もシルビーの血に誇りを持っていますのよ。能ある鷹は爪を隠すものですわ」


フローラは愚かな伯父一族がシルビーを名乗るのさえ不快だった。フローラの命懸けの復讐。シルビーの至宝と呼ばれる美しい笑みを浮かべフローラは目を閉じる。最期の夜に思い浮かべるのは愛する家族。そしてフローラは旅立った。




    








数年後。

フローラの期待通りに罪を暴かれ伯父一族は身分を剥奪され、最下層に落とされる。

固いパンと水のようなスープ、少量の食事のために重労働を強いられ、人権もない箱庭で蔑まれ、理不尽な暴力を受け生きていく。

シルビー伯爵家はさらに力をつけ、シルビー伯爵令嬢は王妃にまで昇りつめる。

シルビー伯爵ブライトと庭師見習いリアは評価の厳しいフローラのために常に高みを目指す。


「お姉様には到底敵いませんが頑張りますよ。マザコンのいない世の中を」

「姉上、まだまだこれからなのでまだ怒らないでください」

「二人共、フローラはそこまで求めないよ」

「「甘い!!」」


フローリアとブライトとケインは月命日には必ず成果を報告しに訪ねフローラの墓を囲んでお茶会をする。

お供え物はフローラが何よりも喜ぶと二人が思っているシルビー伯爵家の良い評価。

フローリアとブライトはフローラの命日が近付くたびに頭を悩ませる。それでもシルビー伯爵家はいつも明るく賑やかである。

そしてフローラの墓でかつてのシルビーの至宝が揃う。

無邪気な笑みを浮かべて意気揚々と成果を話すブライト。ブライトの立派な姿にフローリアは満面の笑みを浮かべる。

ケインは亡きシルビー伯爵夫妻とフローラがいれば笑みを浮かべて二人を眺める様子を想像し笑う。シルビーの家臣のケインもシルビーの至宝を大事にする一人。


「フローラ、思い通りになったか?」


冷たい風が吹き、ケインは体がゾクリとして自分の憶測を口にするのはやめた。



最後まで読んでいただきありがとうございました。



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