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どうしてこうなった!?

気が付いたら、5歳の子供になっていた。正確には、5歳の誕生日を迎えた時点で前世の記憶が戻った。最初は戸惑ったものの、ああそうか、俺の前世はこんな感じだったのかっと存外簡単に受け入れることができた。なんだか、テレビですごく共感できる人間のドキュメンタリーを見終わった感じで、あくまで知識として前世の記憶を受け入れた。だからなのだろう。同じ過ちを繰り返してしまったのは。








この世界は文明レベル的には前世とほとんど同じレベルだ。ただ、あくまで文明レベルが同じくらいなだけであって、前の世界とは根本的に違う世界だ。いくつかの相違点が存在する。一番大きな相違点は、この世界には『異能』が存在するということだ。人口の約7割が何らかの『異能』を持った能力者なのだ。かくいう俺も能力者の一人である。ただ、使い勝手のいい異能ではない。


他に相違点を上げるとするならば、異能(スカー)関連の仕事や法律が存在することだろう。異能犯罪を取り締まる組織や能力者しか入れない学校もあったりする。


発端は、俺が11歳の時のある行動だった。あの頃の俺は無邪気だった。秘密基地や秘密結社にあこがれ、同じ孤児院の仲間とヒーローごっこをするような普通の少年だった。ちなみに、個人的にはヒーローよりも悪役の方が好きだった。

ただ、問題があった。どうやら何かを演じるのが得意だった俺は、友人と遊んでいるとき以外でもヒーローや悪役のまねごとをしていた。


まあ、何が言いたいかというとちょっと早めのいわゆる『中二病』を発症したのだ。


だが、これ自体はそんなに問題じゃない。黒歴史にはなるが、小学生…まだ傷は浅くて済む時期だ。


問題はあの時の自分の行動で、何の偶然か知らないが本当に秘密組織ができて、さらにそのリーダーに担ぎ上げられてしまったことだ。


本来は可愛い思い出で終わるはずだった。だが、そうは問屋が卸さなかったらしい。


事件は、13歳の夏に起こった。ある日、アメリカ旅行から帰ってきた俺は孤児院にいないみんなを探すため、久しぶりに秘密基地に行った。そこで俺は絶句することになる。

そこには様変わりした秘密基地があった。みんなの小遣いで買った機材や要らなくなって処分されるものを貰って作り上げた、いかにも子供たちが遊びで作っただけの秘密基地はそこにはなかった。懐かしき秘密基地は跡形もなく、無慈悲に大改造され、今では立派なアジトだ。一体どこから、金を捻出したのかも、どうやって作ったのかも不明だ。


当時の俺は動揺しすぎて、「どうだい?今日からここが僕たちの新しい居場所だ」「ああ、俺たちが野望をかなえるための場所だ!」っという突っ込みどころしかないセリフに「あ、うん。期待以上の出来だ…」などとこれまた意味の分からないことを口走ってしまったのだ。


しかし、まだ中二病が抜けきっていなかった俺はあまりに完成度の高い秘密基地のロマンにあっさりと負け、高まったテンションのまま仲間たちと秘密組織ごっこ(・・・)に興じた。そう、ごっこだと思っていたのだ。時々やっていた会議も、異能を使ったちょっとした運動も、遊びだと思っていたのだ。


中二病を卒業し異変に気が付いた時には、遅かった。組織は着実に成長し、噂として俺らの組織名が出回るようになってしまった。


最初は10人しかいなかったメンバーも今では、20人を超える。しかも、さる情報によると、『異能犯罪対策特務室』……通称ECCOからマークされているらしい。


一体何でこうなったんだ!!!


困り果てた俺は、孤児院の院長であり今世の俺らの育ての親でもある大船さんに相談した。しかし帰ってきたのは「それが、紫苑の出した答えなら否定はしない」というさらにわけのわからない答えだった。しかも、その後院長は資金集めのためだとか何とか言って、生活費だけ残しどこかに出かけてしまって帰ってこない。


それからというもの、あいまいに誤魔化しながら暮らしている。幸い、メンバーは表面上は普通に暮らしており、各々学校に行ったり、大学に行ったりしている。最近は、現実逃避で顔すら出していないのでよくは知らないが、たぶん活動を続けているのだろう。


ハァ~、憂鬱だ。












「欠席者もいるみたいだけど、定例会議を始めたいと思う」


円卓を囲み、5人の男女が座っている。


「今回は欠席が多いっスね~何かあったんっスか?」


「定例会議の出席率が悪いのはいつものことでしょ?それより、早く会議を進めてくれない?あたし寝不足なの!」


茶髪の少女の疑問をばっさり切り捨て、猫耳フードの少女が司会の青年を睨む。青年は、別段臆することなく少女の怒気をスルーして話を進める。


「氷雨、報告をお願いできるかな?」


司会の青年の視線が、黒い髪にバラ色のリボンをした少女に注がれる。


「はい、地下組織『ヴェクター』を先日大門さんが壊滅させ、残党はECCOが確保したとの情報が入りました。ただ、大門さん曰くまだ生き残りが潜伏しているらしく、そちらを追うのでしばらくは戻れないとのことです」


「ヴェクターって海外のマフィアもどきっスよね?何で日本に拠点を移してきたんでしたっけ?」


「例の新薬を探しに来ていたらしいですよ」


「ああ、あの都市伝説のことか」


氷雨の言葉に反応したのは、質問した少女ではなくいかにも神経質そうな顔をした少年だった。


「あら、インテリ眼鏡。あんたいたのね、気が付かなかったわ」


「ほう、随分と目が悪くなったようだ。スナイパーなんてやめたらどうだ?」


「はぁ?」


「………」


インテリ眼鏡と猫耳フードの少女の間に見えない火花が散りだしたのを見て、司会の青年が手を叩く。


「はい、そこまでにしてね。京香、早く会議を終わらせたいといったのは君だよ。必要以上に突っかからないでね」


司会の青年にイケメンスマイルでたしなめられ、京香は渋々といった感じで大人しく席に着いた。それに呼応するように、インテリ眼鏡少年もにらみつけるのをやめ、謝罪する。


「すまない、会議を続けてほしい」


「…これは確定事項ではないのですが、ボス(紫苑さん)の学校にECCOの犬が入るらしいです」


「まあ、別に問題ないんじゃないっスかね?よほどの使い手じゃない限り、先輩には傷一つ付けることすらできないっスからね~」


「それに関しては同感です。ただ、何の目的で入学するのかはわかっていないのは、良い状況とは言えません。最近、ECCOは我々を血眼になって探していますからね…」


「まあ、それとなく監視はしておくっスよ。ただ、自分中等部の生徒なんで高等部の生徒を常に監視することはできないっスよ」


「構いません。もしもの保険というだけです。くれぐれも紫苑さんから頼まれない限りは何もしないでください」


「もちろんっスよ~先輩の思考を読むなんて芸当、自分には無理なんで」


「報告は以上でいいかな?」


タイミングを見計らって、司会の青年が会話に入る。


「はい、報告は以上となります。質問のある方はいますか?」


「一ついいか?」


インテリ眼鏡と呼ばれた少年が眼鏡をクイっと押し上げながら、静かな声で氷雨に問いかける。


「はい、何でしょうか?」


「例の能力者たちはいまだに見つからないままか?」


「はい…まだ発見されていません」


「紫苑はなんと?」


「紫苑さんはこちらから連絡しても、滅多に応じてくれませんから」


「…そうか」


「じゃあ、今日の会議は終わりで!解散!」


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