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君がチョコレートをたべるとき



君がチョコレートを食べるとき

その甘さに悶える


君がチョコレートを食べるとき

その苦みに、癒される


君がチョコレートを食べるとき

黒い欲望が胸に巣くう




**

社会派だとか、エンタメだとか、アートだとか、そんなことで言い争ってる人達にチョコレートを手渡す。


社会派は言った。

「これは社会だ。甘くて美味しい。しかし注意深い人間だけが、その奥の苦みに気付く。味わい深くて、喉が渇く」


エンタメ派は言った。

「これは名作だ。一見すると黒くてどうしようもないのに、食べてみればその甘ったるさに喉が焼け付く。こういうのを待っていたんだよ」


アート派は言った。

「ほんとうのことをいえば、これは”私たち”なのです。訴えることに臆さず、その上で自身の過去に優しく寄り添うことも忘れていません。ここにあるのは、人間の価値そのものです」




***

ひどい戦争の最中で、右腕を失ったばかりの兵士が、残った左腕を使って、不自由そうにズボンの右ポッケから、一欠けらのチョコを取り出した。

ぼんやりとする視界と頭。痛みに侵食される感覚。

チョコを一口齧ったその時、口の中一杯に広がる ねとついた甘味が、彼を癒した。

後に生還した彼は、語った。


「ひどい戦争だった。沢山殺したし、沢山の仲間が殺された。心も体もボロボロだった。だが、その恐怖や悲しみのことはあまりよく覚えていない。私が強烈に覚えていることは、あの日食べたチョコレートが、私の人生で最も美味しかったということだ」



****

女「ねえ、今日何の日か分かる?」

男「ん、い、いや、何の日だっけ。なんかの記念日だっけ?」

女「うふふ……とぼけちゃって。可愛いんだから」

男「いや、ほんとに分からないよ。教えてよ、何の日なのさ?」

女「えー、まだとぼける気なの?そんなんじゃ ”チョコ”もうあげないよ!」

男「ん、 ”チョコ”? 今日は2月13日だけど、もしかして、そういうこと?」

女「え、嘘!?私一日間違えちゃったってこと?やば!ちょー恥ずかしい……」

男「あー、カン違いしちゃったの?ま、まあいいよ。ちょーだい」

女「うん。でも爆発するの明日になっちゃうな……」

男「え?」

女「ん?」

男「そのチョコ爆発するの?」

女「うん、する。明日ね」

男「こりゃ、大変だ」

女「安心して。貴方ひとりが吹っ飛ぶくらいに調整したから」

男「わー、ありがとー」

女「だから、明日になったら食べてね。はい、どうぞ」

男「うん、そうするよ。ありがとう(これは、すぐに海に棄てよう)」




*****

君がチョコレートを食べるとき

幸せが広がる


君がチョコレートを食べるとき

苦しみで息が出来なくなる


君がチョコレートを食べるとき

君は、君自身に問いかけるだろう










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