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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

どこにでもある、ありふれた話

作者: 海月 くらげ

「ねぇ、今朝やってるニュース見た?」

「あ~!電車に飛び込んで自殺したってやつ?」

「そうそう!あの電車ってK駅のことでしょ?はた迷惑な話よね~、自殺なんて周りに迷惑かけないでやればいいのに、なんでわざわざ電車に飛び込むのかしらね」


 きっとそんなことはどうでもいい


「ホントよね~、しかも自殺したのって18歳の子どもでしょ。人生半分も終わってないのに」

「たかだか18年で死にたくなるようなことがあるんなら、私らなんて何回死ねばいいのよ」


 何も知らない


 知らないくせして、お前らはそうやって他を見下す。お前と他人では同じ人生なわけがないし、物事の捉え方や感じ方も違うじゃないか。


 それを知ったような口振りで話したがるものだから、心底腹が立つ。


 けれど、言い合うつもりも気力もない。

 言ったところで言い合いにすらならないだろう。


 いじめだったかもしれない。虐待だったかもしれない。何かに怯えて暮らしていたのかもしれない。


 クラスでいじめられて、先生に相談したところで、知らぬ存ぜぬの一点張り。相談したことがバレた時には、いじめは悪化する。地獄のような学校での時間がようやく終わり、家に帰れば両親共々パチンコなのか競馬なのかしらないが、不在。ゴミがそこかしこに散らかって、どこが地面なのかも分かりやしない。飯は用意されていないので勿論、自炊。自炊といっても、冷蔵庫の中は清々しいほどに何もない。金も与えられていないので、賞味期限の切れたカップラーメンにお湯をそそぐだけ。



 お前らが無関心だったせいで、死んだ。

 お前らが少し、心の片隅のどこかにあるはずの温情を、ほんの少しでも分けてくれれば死ななかったのかもしれない。


 いじめに気付かないふりの先生、いじめてはないにしても見て見ぬふりのクラスメイト、産むんじゃなかったと言ってのける両親、井戸端会議の話のネタする近隣住民。



 そんなお前らが殺したも同然だろ。



 さぁ、今日も1日耐え抜こうと息巻いた少女は、駅を通過しようとする特急を見て。


 見てしまって。


 一歩踏み出せば楽になれることに気付く。


 あと一歩前に出てしまえば、耐える必要がないことに気付いてしまったんだ。


 一歩の勇気。


 毎日毎日、人生における全てを耐える勇気を持っていた少女には、それはそれは些細な勇気だった。


 振り絞る必要もなく、ただただ(こぼ)れ出た勇気。体中に溜め込んでいたそれが目に見えないほど、小さく溢れる。


 死ぬことに安堵したのだ。



 やっと死ねる。やっと解放される。耐えなくていい。堪える必要なんてどこにもなかった。


 自殺という事実とは裏腹に、人生で唯一幸福感を得られた、その一心だった。


 お前らが殺した。

 少女は死んだ。


 けれど少女はここでない幸福を得られるどこかへと旅立っただけである。


 きっと少女はお前らのことなんて、恨んでもいない。忘れてしまっている。このくそったれた世界のことなど。






 そうして私は死んだ。








人の人生を他人が簡単に語っていいわけがないというお話。

自分がしらないだけで、その他人には他人なりの人生があります。自分とは価値観がかけ離れていても、決して否定から入ってはいけないと思うのです。

なんて深夜テンションの

ふよふよ浮いてるくらげからです。


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