一緒に暮らそう
太と修治の二人は、またたく間に仲良くなり、沿道に春の花が埋め尽くす頃には、二人の関係は、すっかり周りの知るところとなった。
二人ともまだまだお互いの身体を、欲にしがったが、それだけでは無い関係も芽生え始めていた。お互いの部屋を行来きし、週末は太の部屋が寝城となっていた。平日も含め一週間の殆どを二人で過ごした。月に一度は郊外へドライブに行ったし、温泉地で宿泊したりもした。もちろん買い物にも二人で出かけた、また月に一度は、コンサートか映画に出掛けた。
また休日部屋に一日中篭るときは、掃除洗濯等の家事を済ませると、修治は絶えず太の身体に触れていた、ビデオを見る時も、おつまみを用意して、ワインを片手にスポーツ観戦する時も。太も、そんな修治が好きだった。平日は外食する事が基本だったから、週末は部屋で食事をするようあえて務めた。太が、作ると焼き肉だったり豚カツだったりとどうしても脂質中心になりがちだったので、修治が担当するときはあえて、和食で野菜中心の物にした。二人の料理の腕前は、まずまずだったので、とりあえずは満足するものとなった。
季節は、あっという間に、いつ梅雨入りしてもおかしくない季節を迎えていた。この日も蒸し暑い週末で、二人とも仕事を終えた後、新宿で待ち合わせをし、外食した。その後、連れだっていつものお店に顔を出した。店に入ってカウンターに座ると、ママが、暑さの憂さを政治家の性にした話をしながら、ウィスキーをセットしてくれた。太は、ウィスキーに口を付けた後、店のトイレを借りた。トイレから戻ると、それまでとは異なるテンションの修治が、座っていた。事情を知るママが、あたふたしながら氷を割っていた。一杯目のウィスキーを飲み干すと修治が「今日は少し疲れたから、もう帰ろう。」と太に申し出た。修治の変化に気付いていた太は、その意見に賛同し二人は早々に店を後にした。
部屋に着くと早速クーラーのスウィッチを入れ、太は早々にシャワーを浴びた。風呂から上がって、パジャマに着替えた太がワインを開けた。修治はその間に、簡単なおつまみを用意して、太に出した。ワインで乾杯をして、二人でテレビの映画に見入っていたが、修治は、おつまみの皿が開いたのを見つけると、皿を洗うため台所へと席をたった。皿を洗いながら堪えていた思いを、一気に爆発させた。
「みんな言っている、二人は不釣り合いだって。なんで俺なの?」
太は、一瞬固まったが、新聞をテーブルに広げそれに目を落として、一息ついてこう言った。
「そうだなぁ、修ちゃんぐらいが楽でいいのかもねと思って。」修治は、しまった地雷踏んじゃったと思った、しかも撒いたのは修治本人である。
仕方ないので
「ふーん」とだけ言って、シャワーを浴びに風呂場へ行った。
風呂からあがると、修治は「先に寝るね」と言ってベットに潜り込んだ。
間もなくしてワインの後、ビールを開けていたらしい太が、ベットに潜り込んできた。
修治を背後からはがいじめしながら、耳元で「おい、なんでさっき怒らなかったんだよ。
俺が、不安になるだろ。」と言った。
返答しなかった修治を、更に強い力で抱きしめながら
「うん、どうした、一緒に住もうか?」と太が言った。
修治は、嬉しかった、ホッとした、それと同時に涙があふれ出てきた「うん」と言いながら、太の腕で涙を拭った。「ほらもう一度風呂入ってこいよ。」と言いながら修治のお尻をなぜた。修治は、「うん」とだけ言って、シャワーを浴びるため、風呂場に起った。
次の日から、引越しの計画が始まった。先ず、修治の職場にも近い太の部屋で住む事を決めた。お互い要らなくなったものを、捨てた。とりあえず必要なものを、太の部屋に車で運んだ。引っ越しを済ませアパートを引き払い、その週末には、太の友達やママを呼んで、お昼に食事会をした。太の友達は、修治の人となりを見て「良かった、本当に良かったと」何度も繰り返した。その隣で、ママは太に説教を繰り返し、なおかついつもの反動で、ママは大虎となった。それをなだめるのに、太は必至だった。修治は、この人たちとは長い付き合いになりそうだと思うと同時に、太とママの息の合った会話に、少し焼きもちを焼いた。
皆が帰った後、二人は台所で片付けをしながら、
修治は太に「なんかママと馬が合うんだね、少し焼けちゃった。」と言うと、
太が「ダメダメあんなの、それにママってああ見えてタチなんだぜ。きもいでしょう。」
と笑って見せた。
「なら、何かあったらママに相談しようかな?優しくしてもらえそうだし。」と意地悪な目つきで、太を見上げながら言というと。太は修治の、頬を軽くひねりながら
「ほほう、お坊ちゃま、少しお口が過ぎますよ。やれるものならやってみなさい。君はきっと、この世のもの思えない。おぞましいものを目の当たりにすることになると思うよ。」と言ってのけた。