奴隷なんて糞食らえ!
今回で城下町終了です
ぶっちゃけよう、
カインはメッチャ役に立った
あの後、俺らは魔道具屋に向かった
魔道具は不良品を掴まされたら大変なので、大通りの有名店に向かった
もちろん目的は防音の魔道具を買うためだ
そこで、かなり良さげなものもあったので、シオリとツバキさんにおみやげとして買うことにした
シオリとは相変わらず微妙な関係だ
俺はもうシオリの気持ちを知ってしってしまったが、告白されたわけではないので返事はしていない
こちらから告白すればいいと思うかもしれないが、俺は弱いし、近々この国を出ていこうと思っているのだ強制はしたくなかった
ヘタレだと思うかもしれないが、これがアキトの本心だった
加えていえば、アキトはいま微妙な立ち位置だ
クラスメイトたちが総出で、「出て行け」と言われれば出ていくしかない
そんな吹けば飛ぶような立場だ
そんな俺がクラスのマドンナ、シオリに告白して受け入られてみろ
間違いなくクラスメイト(主に男子)に蹴り飛ばされる
そんなわけで、これは俺の気持ちを伝えるためと、せめてもの償いだった
ツバキさんはあれだ
日頃お世話になってるのと、字を教えてくれた礼だ
そういうわけで、魔道具を3つも買う事になり、価格は金貨25枚にも登った
全財産は金貨43枚だったので、半分以上が消し飛ぶ計算だ
いや、そのはずだった
会計に行くとカインが飛び出してきた
そして突然根切り始めたのだ!
ときには「うち親がうるさくて、これしかもらえなかったんですぅ」とか嘘を言いながら......
そしてなんと、金貨17枚まで値切ってしまったのだ!!
実に2割り引き以上、8万円引きだ
値切りの真髄をみた気がする
俺は、さっき書いた資料いらなくね?と思ったが
カインいわく、「これは、生活の知恵」らしい貧乏生活しているうちに身についたのだとか......
貧乏生活って大変だなぁ
それに、こういった有名店は相場より高くふっかけているものらしい
ブランド効果ですね、わかります
それで、資料は別に必要らしい
俺、本当にカインに会えてよかったぁ
そう思った瞬間だった
ホンにええ子やぁ
お礼がしたくて、浮いた金で服屋でオミナとカインの服を買ってやった
それすらもカインは値切っていたのでなんとも言えなかったが.....
それから、カインのオススメの店で防具を見繕ったり、ポーションや薬を調達したり、食料を見たり、インゴットをいくつか買って、カインと別れた
現在地は裏通り
時刻は鐘9つ、
おおよそ午後6時くらいだ
カインと別れた俺は適当に店を冷やかしていた
残金は金貨12枚と大銀貨7枚
あと小銭
日本円にして12万7千円くらいだ
8時までには王宮に帰って飯をくわなきゃなぁと思って、フラフラする
それを見たのは偶然だった
裏通りのさらに脇道、
男が少女にムチを打っていた
「おい、お前のせいで今日も商品が売れなかったじゃねぇか!!どうしてくれるんだ!」
自然と身体が動いていた
「おい、お前!何したんだ!」
「あぁ?見てわかんねぇのか!奴隷をしつけたんだよ!」
どっからどう見ても躾じゃねぇよ!
ただの八つ当たりだろうが!!
「そんなことが許されると思ってんのか!」
「あぁ?何言ってんだテメェ!奴隷だから許されるに決まってんじゃねぇか!」
少女の首元を見る
首輪がはまっていた
ラドムのより更に無骨なやつだ
少女の目は虚ろだ
感情が抑制されているのだろう
言葉に詰まる
男はたたみかけようと、言葉を重ねる
「俺は奴隷商人だ。これは俺の奴隷だ!
この国じゃ奴隷に何しようが自由なのさ!」
アキトの胸がカッと熱くなった
偽善だ
そんなことは分かっている
この世界では奴隷は社会に立派に役割を果たしている
罰として
奴隷は罰だ
犯罪を犯したもの、借金を重ねたもの
そういう奴らの末路
義憤だ
そんなことは分かっている
奴隷に何しようが自由、そういう国が多い
それがこの世界のルールだ
そんなことは分かっている
獣人は好きに奴隷にしていい
それがこの世界のルールだ
そんなことは分かっている
だか、それでいいのか?
犯罪者なら好きにしていいのか?
冤罪の奴は本当にいないのか?
獣人なら好きにしていいのか?
彼らも意志と考えを持っているのではないのか?
神聖魔力を持っていれば偉いのか?
本当に、本当に...彼らは人類の欠陥品なのか?
.....欠陥品は俺たち人類の方じゃないのか?
俺は恨んだこの国を
そして憎んだこれを許容している見て見ぬふりをしている人々を、この世界を
やる事が増えちまったな.....
国を出たらのんびり、元の世界に帰る方法を探るつもりだった
だが、俺は誓う
この世界から奴隷をなくしてはいけないことは分かっている
だが、それでもこれは酷いだろうと
声を上げることができない奴隷の代わりに俺が訴えてやると
元の世界では労働者はボイコットやらストライキやらを起こして、その意志を世界に示していた
奴隷にはそれすらも出来ない
命令で反抗出来なくされているからだ
ならば、代弁者が必要だろう
誰もやらないなら、それを俺がやろう
最弱の俺には過ぎた願いかもしれない
それでも
成し遂げてみせる!
ピロリン
ーーーーーーーーーー
称号「革命の意志を継ぐ者」を手に入れた
ーーーーーーーーーー
「革命」.....か...、悪くない
ログを見て俺は薄く笑いを浮かべる
まずは手始めに
「おい!奴隷商人!俺は客だ!さっさと案内しろ!」
「.......はぁ!?」
「客だと言った、さっさと見せろ!」
まずはこの世界のルールに則って、革命を始めよう
一言で言おう、
酷かった
見せてもらった奴隷達はみな、どこかしらに傷があり、その傷のいくつかはどう見てもムチでつけられたとしか思えないものだった
それを、金貨20枚とかふっかけてくるのだ
詐欺もいいところである
他の奴隷商を知らないから、これが酷いのかみんなこんなもんなのかは、知らないが、少なくとも、俺は酷いと思った
牢屋に入れられ、首にはボロい首輪、衣服は薄くてボロい貫頭衣1枚、飯もロクにもらってないのだろうか、目はくぼみ、身体は痩せこけていた
しかし、そんな奴隷でも金貨20枚
自分の手が出ないことが歯痒かった
自分がいかに無力か思い知らされた
強くなりたい
彼らを助けられるくらい
強くなりたい
何も出来ないのはもう嫌だから
強くなりたい
力量だけでなく地位も心も、どんな力も
強くなりたい
心からそう思った
そんな、彼らの中でも一際目を引く奴隷がいた
「酷い......」
思わずそう呟くほどの有様だった
その奴隷....いや、彼女の身体は、
12歳くらいの小さな背中は右肩から左の腰の辺りまで斬りつけられており、左腕は焼け爛れ、全身にはムチを含めた無数の傷跡、いくつかは腫れており、ミミズ腫れになっている。しばらく何も食べていないのか、目はくぼみ、身体は痩せこけて棒切れのようだ
よくよく見ると熱を出している
隈なく調べると、大きな病気はないが、複数の病気に感染しているようだ、傷口から細菌がはいったのだろうか?日和見感染というやつだ
こうなると手を付けにくい
普通のポーションではいくつかの病気や傷は治せても、全てを対処しきれない、治すには俺のクラスSポーションか、あるいは....
しかし彼女の最も目を引くところは傷でも病気でもなく.....
長い銀髪に小さなひょっこりとした三角形の耳、ふさふさした尻尾.....
そう、彼女は銀狼族
ーー獣人だったのだ
「彼女は?」
「あぁ、これはね、銀狼族のレオナですよ。昔は綺麗だったそうですが、奴隷商が魔物に襲われたらしくてね、それからこんな感じになっちまったらしく、いくつかの奴隷商をたらい回しにされて、ここに来たんですよ
俺も懇意にしている奴隷商から押し付けられて.....今度処分する予定なんですよ」
「買った、いくらだ?」
「はい、ええと...…じゃなくて、正気ですか!?」
「あぁ、正気だ」
「死にかけですよ?」
「あぁ、そうだな」
「治る見込みありませんよ?」
「そうかもしれないな」
「……ははっ、冗談はやめて下さい
怒りますよ?」
「いたって、本気だが?」
「……そういうの、やめて下さい。たまにいるんですよ治らないのに、可哀想だからとか言って引き取って、死んだら文句言ってくる人」
言外に「あなたもその口でしょ」と言ってくる
「別に俺はこのままの彼女でいいし、普通なら死ぬのも分かっているし、文句を言うつもりもない」
「………分かりました、金貨5枚です」
「1枚だ」
「はぁ?ふざけてんですか!?」
「ふざけてない。お前こそふっかけんのは止めろ。元々処分するつもりだったんだろ?金が手に入っただけ儲けものだと思え」
奴隷商人がしくじったという顔をしている
おそらく、情報をバラしたことを後悔しているのだろう
「………分かりました、金貨1枚でお売りします」
それから再奴隷契約を済ませると、無理やり立たされたレオナを連れて街に戻った
奴隷商から見えないところまで来ると
いきなり、レオナの口にクラスBポーションを突っ込んだ
「んぐっ!?」
どうやら意識も朦朧としていたらしい
いきなり入って来た異物に驚いて、むせかえっている
ようやく飲み干したレオナに
「少しは意識がハッキリしたか?」
「はい.....今のは......?」
「クラスBのポーションだ。これからいくつかの場所を回る付いて来てくれ」
「クラスB!?は、はい!」
まずは奴隷商に向かった
さっきの奴隷商ではなく、クラスの男子が向かった王宮御用達の方だ
「最高級の奴隷首輪1つくれ」
「はい、金貨15枚になります」
「ふざけんな。こっちは時間がねぇんだ。さっさと正直に話せ」
きっと何も知らないバカヤロウが沢山来たのだろう
俺の服を見たとき、完全に「またカモがネギしょってきた」って顔をしていた
「クソが......金貨10枚だよ」
「....いい加減にしろ」
「あ〜、分かったよ!金貨7枚だ!」
「分かった」
後ろを見るとレオナが荒い息を吐いていた
「......もう少し、見て回るところがあるんだもう少しだけ耐えてくれ」
俺は懇願する
「......分かり.....ました....」
そうして、少年は少女の手を引いて闇に消えていった.....