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「なるほど、俺以上ときたか。それは実に恐ろしく頼もしいことだ。で? その肝心の『神』とやらはいつご登場するのだ? お前を殺せばすぐにでも出てくるのか? ならそうするだけだが。そうではないのだろ?」
ヴァレルヴォルテックが嘆息を漏らした。
「……実に余裕なことだ」
次に俺が溜め息を吐いた。
「当たり前だ。俺を誰だと思っている?」
「『神』を前にしてもその余裕を保つことが出来るのか……実に楽しみだ」
ふふ、と笑うヴァレルヴォルテック。
……何なんだこいつは。こいつの見せる一挙一動全てが鼻に付く。こいつは人を不快にさせることに関してはまさに天才、スペシャリストだと思った。
この目の前にいる男は、俺に対して『余裕なことだ』と言ったが、そっくりそのままお返ししたいくらいだ。『神』という名の威を借りるだけで、そこまで強気になれるこいつの気が知れん。ヘタをすればハゲ男と同じ運命を辿るというのに。危機感皆無過ぎだろ。
俺は今の率直な気持ちを口にする。
「やっぱりもう殺していいか? ウザい。お前ウザい。果てしなくウザイわお前」
ヴァレルヴォルテックが後退った。
「おっと、良いのか? 私を殺してしまっては『神』に会えなくなってしまうのだぞ?」
「いや、それならそれで別に構わんよ」
「……」
ヴァレルヴォルテックが唾を飲んだのがハッキリと分かった。
「ほ、『宝玉』のこともある。良いだろう、お前がそこまで望むというのなら……『神』を呼ぶとしよう」
俺はルデアに視線を向けると言った。
「俺、何か言ったか?」
ルデアが今日何度目かの――首を傾げた。
ヴァレルヴォルテックが跳んで金髪お漏らし女の元に行くと、手を引いて立ち上がらせる。足をガクガクにさせながら立ち上がる金髪失禁女。結構豪快に失禁したのだな。下半身がぐしょぐしょになっていた。
「――『神』がこの世界に降臨するまでの時間、恐怖に怯え震えながら過ごすがいい――」
そう言って、来たときとは逆バージョンの大地から天へと伸びていく光の柱に吸い込まれるようにして、ヴァレルヴォルテックと金髪失禁女の二人は何処かへと消え去っていった。否。逃げた。さて金髪失禁女は一体何しに来たのか。漏らしただけで出番が終わるなんてなんと不遇な扱いなことか。
「なあ?」
「はい?」
「お前等、あんなギャグみたいな奴らにやられてたんだな……」
ルデアは黙ったままだった。正直、俺自身にも反省する点があった。ああ言う輩だと気付かないまま、長い間付き会い続けていたことに。
俺は首の裏側を叩くと言った。
「……俺の目も曇ったか……」
とりあえず、第一章はここで終了です。
恐らく加筆修正はすると思います。
その時は後書きで報告したいと思います。