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ハゲ男がそう言うなり、掌を広げた右手を勢いよく振り下ろした。
俺の体に重圧がのし掛かる。音を立てて足が地にめり込む。なるほど、単純に相手に『重さ』という圧力を与えて押し潰す重圧魔法のようだ。しかし問題はハゲ男の重圧魔法がもたらす圧力のレベルだ。これが六翼か、と。俺は堪らず、
「で?」と言った。いや、本当に、「で?」だった。それ以外の適切な言葉が思い浮かばない。それほど俺が呟いた「で?」の一言は深く重い。
女の、髪を弄っていた指は止まり。
「な……」
ハゲ男の狼狽する所を見る限り、どうやらこれはハゲ男の繰り出す本気の一撃で、俺から言わせてもらえば、本当に「で?」止まりだったようだ。
ルデアに目を向けた。耳をピンピンに尖らせ、口をグッと真一に結びながらのし掛かる重圧に耐えてた。耐えられるレベルなのだ。大層な登場をしておいて、結果コレか。もはや嘲笑するしかない。否。怒りを覚えるレベルだ。
とりあえず、もう一度同じ言葉を口にする。違うのとすれば、少し怒気を孕んでいることだ。
「で? お前は何がしたかったのだ? 一丁前に『殺す』とほざいていたが、よもや今の攻撃で俺をどうにか出来ると思ったのか? ――こんな風にっ!」
俺は先程のハゲ男と同じように、掌を広げた右手を勢いよく振り下ろした。
ハゲ男は「へぶっ――」と言うセリフと血飛沫をその場に残し、けたたましい音と共に一瞬にして地中に消え去った。
名前も知らないハゲ男、出番終了。
ポッカリ空いた穴の側で、顔から血の気の引いた女は腰が砕けたようにへたり込むと、地面が湿り始めた。漏らしやがった。ルデアはルデアで、俺の顔を見ては穴を見る。を交互に繰り返しながら「あわわわわわわわわっ」としか言わない。
俺はヴァレルヴォルテックに視線を向ける。
ヴァレルヴォルテックが引きつった笑みを俺に見せる。少しイラッとした。
最初は何も感じなかったが、段々とコイツの見せる『笑み』がむかつくようになってきた感がする。
「――貴様等。何十年と、俺の張り巡らせた結界に手も足も出ず刃向かう力も無かったくせに、俺がほんの少し世界から消えたらコレか」
「……ロイドがどう思っていたのかは私には分からぬが、別に貴様の『強さ』を忘れたわけでも、侮っているわけでもない」
「は? ロイド? 誰だそれ。もしかしてさっきのハゲか?」
「……それ以上に我々の『神』の持つ力が強大で恐ろしいだけだ」
文字数が少ないとの意見を頂きました。
他の読者様に、細かく栞を挟めたりするので丁度良いとの意見を頂いたりもしたのですが……難しい……
出来るだけ文字数を増やした更新が出来るようにしたいと思います!