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ルデアがフイとオレの方を見た。
「……私が『王』? ……『王』? ……!? ……む、無理! 無理無理無理無理! そんなの私には無理です! 絶対やめてください!」
両手を前にブルブルブルブルと振って拒絶を示すルデア。しかし、
「黙れ。決定だ。そもそもお前に拒否権は無い」
それを一声で退ける俺。耳がハの字に垂れ曲がり、シュンと項垂れるルデア。俺はその耳を掴むとピンと伸ばしてやった。
「そんな顔をするな。『宝玉』の力で、少なくともコイツらとイイ勝負出来るくらいには強くなってるはずだ。ああでも、間違ってもその力でオレに再び挑もうとかアホな考えは持つなよ。いくら強くなったとは言ってもオレから見れば微々たる程度だからな」
そして苦虫を潰したかのような顔をしたヴァレルヴォルテックが深く溜め息を吐いた。
「……正直、ここまでコケにされたのは初めてだ」
「お前がそう思うのは勝手だが、俺としては別にそんなつもりは無いんだが? な?」
ルデアが困った表情で首を傾ける。
「それが既に私を舐めているというのだ」
「あ、そうなのか。それはすまんかった」オレは心の底から謝った。のに、事もあろうか! ヴァレルヴォルテックが舌打ちしやがった。
「あ?」
突如二本の光の柱が天から俺達の目の前に突き刺さる。
そして光の柱を破って姿を見せたのは、ヴァレルヴォルテックと同じく白い甲冑に身を包み、六翼を携えた二人の男と女。金髪の女に。ハゲの男。男の方は身の丈俺の倍はありそうだ。でかいな。ぶっちゃけ男に興味はない。女の方は結構俺の好みに近い。因みに俺の好みは巨乳ちゃんでな。
俺は隣のルデアを見た。胸を見た。ヘチャコイ。ルデアが首を傾げた。「ヘチャコイなお前」とつい口を突いて出てしまった。またルデアが首を傾げた。
そしていきなりハゲの男が、俺に断り無しに勝手に喋り始めやがった。
「ヴァレン。お前ともあろう者が、何を手こずっておるか。こんなちんけな者共、さっさと殺して奪えば良かろうが」
男が鼻息荒く言う。女は一歩下がったところで無言で金髪の長い髪の毛先をクネクネと弄っていた。
「ほお。いきなり現れて『殺す』と来たか。威勢の良いことだ。で? どうやってだ? 是非実戦してもらいたい」俺は両手を広げ促す。
女がクスクスと笑うと、男も連れて笑うと――座った目で低い声で呟くようにして言った。
「――そんじゃ、潰れとけ――」