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「んん? 俺の聞き間違えか……どうやら俺は耳が悪くなってしまったようだ……」
俺は小指を立てると耳に突っ込んだ。クリクリと動かし……抜いた。
「う、うほほほほほほほっ! た、大量! 大量ではないかっ! ほら、見ろコレ! すごくないかコレ? ほら! ほら! ほらっ!」
いや、マジでビックリした。それくらいにごっそりと取れた。一種の感動を覚えた俺は、この感動を分かち合いたく、小指の先にこんもりと乗っかった耳クソをルデアの眼前にグイグイと突き付けるように見せた。
「いやぁぁぁぁ! 汚いっ!」
絶叫と共にバシーンと思いっ切り手を叩かれた。耳クソはどっかに飛んでった。
グッバイ耳クッソ。フォーエバー耳クッソ。俺はお前から貰った感動は一生忘れない。
「――ごほん……さて。で? 今なんて言った? もう一回言ってくれるか?」
「……どうやら渡す気はないようだな。その舐めた態度を取ったこと、お前はすぐに後悔することになるだろう。いかにお前等が『宝玉』の力を利用しようとも我らの『神』には遠く及ばぬのだ」
「は? 何勘違いしてやがる? 誰がいつこの『宝玉』に頼ると言った? 寝言は寝て言えよボケが」
「ほお。多少は利口な判断が出来るようだな。そうだ、それでいい。そうやって素直に渡せば我々もお前達一人や二人の命を取るようなことはしない」
ヴァレルヴォルテックが鼻で笑い、寄こせと言わんばかりに手を差し出してきた。
盛大な溜め息が俺の口から漏れた。
「お前……『寝言は寝て言え』とは確かに言ったが、本当に寝てるんじゃねぇのか? 誰がお前にやると言った?」
「なんだと? どういう意味だ……」
俺は右手に持った『宝玉』をルデアの頭の上へと持っていった。
「あ、あの?」困惑するルデア。俺はニヤリと笑う。ヴァレルヴォルテックの体が小刻みに震える。
「どういう意味も何も、こういうことだ――」
「……え?」
そう言って俺は手に持った『宝玉』をルデアの頭の中へと押し込んだ。抵抗無くスルリとルデアの頭の中に入っていく『宝玉』。瞬間、ルデアの体が眩い光に包み込まれる。
「き、さ、まぁ……!」歯軋りするヴァレルヴォルテック
「――おい。お前はつくづく大きな勘違いをしてやがるな。俺がお前等を舐めてるんじゃねぇぞ? お前が俺を舐めてるだけだ。『宝玉』? 俺にそんなモノは必要ない。なぜなら、俺は絶対の『王』だからな――お、終わったか」
そうこう言ってる内にルデアを包んでいた光が窄まるようにして消え去った。
見た目、何の変化も感じられないルデアだが、ヴァレルヴォルテックは戦慄く。
「あ……あの、こ、コレっ? わ、わ、わ、私……え? え?」
自分の内なる変化を感じ戸惑うルデア。
俺はそのルデアの頭にポンと手を置くとヴァレルヴォルテックに向かって言う。
「おめでとう。この世界にもう一人新たな『王』が誕生した」