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「……あなたは本当に何もかもが分かっているのですね……」


「分かってる。じゃねーよ。バカか、お前は。ただ必然なだけだ」


「ひつ、ぜん。ですか?」


「お前にひとつ聞くが、この世界に『神』は存在すると思うか? ああ、ヴァレルヴォルテックがお前等の言う『神』になるんだったか?」


女が黙る。脚の上に置いた手を強く握りしめる。女の内では『神』に対しての色々とした感情が鬩ぎ合っているのだろうよ、葛藤に苦しんでいるのがありありと見て取れる。


「――私は、私は『神』はいるモノと思ってます。今も、昔も、そしてこれからも。ですが、あの男を……ヴァレルヴォルテックを『神』だと私は認めない……認めたくない」


そう言った女の表情は、数年前オレと対峙し、やりあった時の顔そのものだった。勇者な顔だ。しかし、オレは笑わずにはいられない。遠慮無く笑った。


「『認められない』とは言うが、お前等人間の持つ『神』の定義とはなんだ? 自分らに都合の良いことばかりを勝手に集めて作り上げた存在、それがお前等人間の言う『神』というヤツじゃねぇのか? 違うか?」


「それは……」女は言い淀む。


「――まあ、強ち間違ってるとは言えんが――」


オレのポツリと言った言葉にどこかホッとした表情に女はなった。が、


「――その『神』とやらが生きていればの話だがな」


続けて言ったオレの言葉に女の表情が固まった。女の頭に生えたウサギの耳がぴくぴくと動く。


「……え?」


「だから『生きていれば』な」


「な、何を言っているのか……」


「お前、つくづく鈍い女だな。だからな? 残念ながら、人間共が信仰する慈悲深く慈愛に満ちた、この世界の『神』はすでに死んでるんだよ。とうの昔に殺されてるんだよ」


「う、嘘ですよね……? だ、誰に? 誰にですか!? そ、それでは私に剣を与えた、あの『神』は、あの『神』と名乗ったヴァレルヴォルテックという男は一体何者だと言うんですか!?」


「誰にって。察しが付かねーか? 今お前が言ったヤツに決まってんだろ。ヴァレルヴォルテック達七人の――『異世界からやってきた神々』の手によって、この世界の『神』は為す術もなく無惨に殺された。『神』だけじゃねぇ。天使達も全て残らず殺された。今から百年ほど前にな」


「……そんな昔に……そ、それでは今までこの世界は誰に守られていたと……」


「誰にってそんなの――おっと、この話の続きはまた今度だ」


そう言うと、オレは立ち上がると腕を組んだ。続いて女も立ち上がった。そして不自然に風が吹きすさぶ。女の栗色の長い髪が強風に煽られ激しく乱れる。


「女。そういやお前の名前を聞いていなかったな。なんて名だ?」


「ルデア。ルデア・ファルシアです」


「ルデアか――そんじゃ、ルデア。死にたくなかったらオレの側から離れないことだ」


ルデアは理由を聞くこともなく、コクコクと頷いた。


刹那。分厚い雲を、深い霧を切り裂くようにして一本の光の柱がオレとルデアの目の前に突き刺さった。そして光の柱の中からゆっくりと姿を現す――白い甲冑に身を包み六翼を携えた一人の男。


男はオレを一瞥すると、オレと同じように腕を組み、鼻を鳴らす。


オレ達の前に降臨した男、それはヴァレルヴォルテックだった。


ヴァレルヴォルテックは現れるなりオレに向かってこう言った。


「……貴様、七つの宝玉をどこに隠している」

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