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俺は穴の底から、ルデアの体を浮かせて救出すると地面に横たわらせた。着ていた衣装はボロボロに、そして裂傷激しく、体の節々、至る所が有らぬ方向へと曲がっていた。


俺はマリアカーナを見た。マリアカーナがフイと視線を逸らした。


「……何よ。やりすぎたなんて思ってないわよ、私」


「一言もそんなこと言ってないだろ」


マリアカーナと会話を続けながら、ルデアの体に手を翳し治癒魔法を施していく。瞬く間にルデアの傷が癒えていった。元の状態へと戻ったルデアは気持ちよさそうな寝息を立てていた。


その様子を俺の隣に座って黙って見ていたマリアカーナが溜め息混じりにポツリと呟くように言った。


「ホント、アッシュってスゴイわよね……」


「何がだ?」


「どんな傷も簡単に癒せるんだもの、正直私、自信無くしそうだわ。『聖王』って何なの? って」


「そんなことか。気にするな」


俺は寝ているルデアを抱き起こし、肩に担ぐと歩き始めた。


「気にするなって言うけど……」


並んで歩くマリアカーナがその言葉の続きを溜め息に変える。


「考えるだけ無駄なことだ。俺が『魔王』としてこの世界に君臨する限りはな」


「……そう言うことよね」


一瞬何かを考える素振りを見せたマリアカーナだったが、結局は小さな息を吐くだけに終わった。


マリアカーナが俺の空いた腕に自分の腕を絡ませてくると、俺の顔を覗き込むようにして言ってきた。


「ところで、アッシュはなんでこの女なんかといるのよ。敵でしょ、この女。大事な『宝玉』まで上げちゃったりしてるし」


俺は笑った。


「俺は一度も『敵』と思ったことはないんだがな。こいつに限らず、人間との関わりは全てが暇潰し程度のものだ」


「ふぅん……つまり、何かその暇潰しになるようなことが起きたってことよね? 違うかしら?」


「ま、そう言うことだ。そのことについて、お前に少し聞きたいことがあってな。だからこうしてこの国へとやって来た」


マリアカーナが不満げな表情を見せる。


「あら、私に会いに来てくれたんじゃないの? 私は『ついで』なの?」


俺は何も答えない。とりあえず、「フフ」とだけ笑い返しておいた。


「ねえ? 笑って誤魔化さないでくれるかしら? ねえ? 私は『ついで』なのかしら? ねえ、どうなのよ? ねえちょっと! 黙ってないでちゃんと答えなさいよ!」


城内に入ってからも、マリアカーナは一向に引き下がる様子を見せなかった。


衛兵共の、まるで奇異なモノを見るかのような視線が四方八方から突き刺さる。それはマリアカーナの部屋に来るまで続いた。


俺は全ての相槌を「フフ」だけで押し通し返した。

皆さん。どうやらクリスマスは楽しめたようで!

良かった良かった!


……良かったね……

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