6
マリアカーナ。この名前は俺が新たに与えた名だ。
元の本名は、マリアンヌ・カンナローザ。元は、当時信仰国家メタフリーゼを統治していた教皇ペタストロスを心酔、慕い付き従う大勢の女共の中にいた一人の女だ。
それがなぜ、今俺の元で『王』の一人となって、このメタフリーゼの女王に君臨しているのか。詳しい話は端折るが、愛し信じていたペタストロスに『裏切られた』その一言に尽きる。
マリアカーナは俺への生贄として、メタフリーゼから献上されたのだ。笑える話、一切俺から生贄などを強要した覚えはない。押し付けるような形でだ。
そして生贄として差し出されたマリアカーナ自身、自分が生贄だという認識を一切持っておらず、俺が何を言ってもペタストロスを信じて止まない言葉が返ってきたな。
まあ、なんだ。
そんなマリアカーナのペタストロスに抱いていた愛がかなり大きかったせいか、『裏切られた』ことによって生まれた憎悪が途轍もなく大きくなったのだろう。俺から『宝玉』を与えられたマリアカーナの手によってペタストロスは凄惨な最後を遂げることになったのだが……到底俺が考えつかないような殺し方だった。いや、あれは流石の俺でも引いた。
それが今から、何年前だ? 一〇年ほど前か? まあつまりそれくらい前の話だ。当時のマリアカーナはまだまだ成長途上で背もそれ程高くなかった。
幼く無垢故の、無垢すぎる故に起きた惨劇だったと俺は思う。
「――したい! したい! したい! したい! したーい! したーい! したーい!」
ひたすらに叩くのを止めないマリアカーナ。俗に言うグルグルパンチというやつだ。
俺自身飄々とした感じを装って受けているが、その一発一発は『ポカポカ』ではなく『ドゴン! ドゴン!』というまるで砲台の発射音のような効果音を放っていることを伝えておく。隣のルデアが身を縮ぢ込ませるようにして耳を塞ぐ。
このグルグルパンチ。偶にクリティカルヒットが生まれるから曲者だ。
その時だけ『ドゴーン!』と言う効果音に、衝撃波がオマケで付いてくる。
今がそれだ。生まれた。衝撃波発生。それに衛兵共が吹っ飛び城壁に衝突、血を吹いて失神した。いや、もしかしたら死んだかもしれん。城壁には血がべっとりと張り付き、倒れた衛兵の回りがたちまち血で染まっていった。
流石の俺ももう付き合いきれん。俺はマリアカーナの手を掴んで攻撃を止めた。
「分かった。分かったからもう落ち着け。落ち着け、落ち着け」
怒りに任せてはダメだ。と。俺は駄々を捏ねる子供に接するように優しく諭すようにマリアカーナに声を掛けた。
いつもいつも読んでくださりありがとうございます。
前回の後書きについて指摘がありました!
そうです!七人ではなく六人です!
当初の予定では後一人『王』がいたんです。削っていたのを忘れて七人と書いてしまいました。指摘してくれた読者様ありがとうございました!
ブクマ、評価も感謝しております!
文章点がストーリー点に比べて若干低いので、そこを意識して執筆していければと思ってます。本当にありがとうです!