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俺が召喚した魔物達が新たに空間に出来た黒い穴を、すごい勢いで出たり入ったりと繰り返し、必要な資材を次々と「イ、イー! イ、イー!(えっさーほいさー、えっさーほいさー)」と掛け声を上げながら搬入していく。どこから持ってくるのか? それは俺にも分からん。
さて、とりあえず城に関しては放っておいても大丈夫だろう。次は――
「あ、あの! そんな悠長に構えてて大丈夫なんでしょうか!?」
ルデアが身を乗り出すように言ってきた。
「何がだ?」
「いえ、なんかもっとすごい『神』を連れてくると言ってましたけど……」
「ああ、そんなことか。神如きに『王』である俺が何に恐れる。来たら来たときで適当に相手してやるだけで十分だろ。毎度のことで一々と付き合っていたら身が持たぬわ」
「毎度? ですか?」
「お前等は知らんかも知れんが、このシュバルドはここ数十年と『異世界』からの侵略がウンザリするほど増えた。そいつらは口々に『チートで最強な筈なのに』だか『転生して最強にしてもらった筈なのに』だか『神に力を貰って最強になった筈なのに』とか言って最後、『なんでぇ……? なんでよぉ……オレのハーレムぅ……』と情けなく俺に殺されていったがな。『最強』のバーゲンセールってやつか? この世界の基準はオレだと言うのに何が『最強』か、実に下らぬ。今回のソレが、それらと同じ類かどうかは分からんが……な」
ルデアが急に無言になった。
「どうした? 急に黙って」
「あの……魔王さんって本当に魔王なのでしょうか?」
「は? どういう意味だ?」
「いえ、その……最初の印象と違って、それほど悪いイメージが湧いてこないというか……」
「そんなことか。心配するな俺は歴とした魔王だ。欲を満たすためには人を殺すし、物も破壊する。んーしかし……そうだな最近、何十年かはそう言った欲は生まれておらんな」
ここで、俺はなぜかルデアにこの世界、シュバルドの事について聞いてみたくなった。
「なあ、ルデア。シュバルドに生きる人間は、それほど俺ら……魔物達に苦しめられてきたのか?」
ルデアが黙って頷いた。
「なるほど。しかし変だな。この世界に魔物は存在するはずはないのだがな……」
俺が魔物達を指差した。
魔物達は相変わらず「イ、イー! イ、イー!(えっさーほいさー、えっさーほいさー)」と資材運びに精を出していた。
「俺が生み出さぬ限り、魔物はこの世に存在せんよ。そして役目が終われば自然と消滅する。それがこの世界シュバルドの、魔物という概念だ。この概念は決して覆らん。俺が『魔』の『王』である限りはな」