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吹き荒ぶ風が吹く中、俺は腕を組んで考える。
「さて、これからの予定をどうするかだが……まあ、まずは――」
俺は顎をクイと上げる。空間に出現する縦長の四角い魔法陣。そこから列を成して次々と出てくるのは目無し口無し全身黒一色の人型生物。一言で言えば魔物だ。因みに、この魔物共は役目を終えると消失する。
次々と次々と出てくる魔物達。止まる気配は無い。それもそのはず、俺が魔法陣を消し去るまで出てくるからな。順々に俺達の前で整列していく魔物達。最終的に、俺が魔法陣を消し去るまでに千匹近くの魔物が召喚された。
その数に怯えるルデア。
他の魔物とは少し違う、頭に角のようなものがニョキと二本伸びてる魔物が一匹、整列した約千匹の魔物と向かい合うようにして立つと、
「イー!(気を付け) イー!(前へならえ) イー!(小さく前へならえ) イー!(休め)」
と大きく叫んだ。不完全で汚かった列が一瞬にして整然された列になった。俺は号令した魔物を手招きして呼ぶ。
魔物は「イー!(はっ)」と猛ダッシュで駆け寄ってくると姿勢正しく敬礼してきた。俺はそいつが来るなり命令を告げる。
「城が潰された。又、俺に相応しい、前以上の城を造れ。大至急だ」
「イー……?(期間はどれほどで)」
「これだ」そう言って指を一本立てて見せた。
「……イー……(い、一ヶ月ですか……分かりました。なんとかやってみましょう)」
「虚けが。誰が一ヶ月と言った。一週間だ」
「イ! イイイイー!(い、一週間!? そ、そんな無茶な! 前のお城でさえ完成までにふた月近く掛かったというのに……。今度はそれ以上の城を造るのに、それなのに一週間とは、あまりに殺生ではございませぬか……せめて一ヶ月、いえ、三週間でも良いので)」
「貴様、俺に刃向かうというのか? なるほど、今すぐ消されたいようだな」
「イ、イイー!(滅相もない! やります! 全身全霊をかけてやらせていただきます!)」
そう言ってそいつは逃げるようにして走って戻っていったのだが、戻る途中で走る速度を緩め、肩を落としてトボトボと歩き始めたそいつの背中を見てたら何だが、チクリと胸が痛んだ。堪らず俺はそいつを呼び止めると、
「遅れることなく完成した暁には、お前に『姿』を与えてやろう。良いな?」
それを聞いたそいつは何度も頭を下げると飛び跳ねるようにして戻っていった。
「あ、あの」
「ん? なんだ?」
「私には何を言ってるのかサッパリ分からなかったんですが?」
「俺も分からん。適当にカマを掛けて話してただけだ。ヤツの反応を見る限り、カマは大体合ってたんだろうよ」
「何か、スゴイですね」
「だろ? 何といっても俺は魔王だからな」