プロローグ
この世に『神』は存在するか?
まあしないだろうな。オレは光のない黒の空間で一人胡座をかいて、そう自問自答する。
黒。それしか存在しない空間。そんな場所にオレが封じ込められて……どれくらい時が経過した?
まあ、分からん。なんせ黒しかない世界だ。体感で時間を計るにも限界が、無理があるってもんだ。
少し話が逸れたな。話は戻って、なぜ『神』は存在しないか、だ。おっと、とりあえず先に俺の名を言っておこうか。
俺の名は、アッシュ。アッシュ・バ・クラヴェリード。世界はシュバルドを支配していた者だ。俗に言う魔王ってやつだ。魔王の俺がなぜこんなとこにいるのか? 言っただろ? 封じ込められてるって。
忌々しい勇者に封じ込められたのよ。しかも女だ。『神』とか言う存在に力を借りてだそうだが。
笑うしかないな。『神』なんて存在しないのにな。それなのに女勇者は言いやがった。
『神の力をとくと味わえ!』ってな。戦いの最中に笑いそうになったよ。『神』『神』『神』『神』必死で言ってやがったな。だからな? オレは思いついたワケ。
あえて封じ込められてやろうってな。
なぜか? それはだな? オレがいなくなった世界がどうなるのかを『味わって』もらおうと思ってに決まってるだろ。さぞ、『神』に祝福されたことだろうな。それはそれは手荒くな。
おっと、また話が逸れた。『神』が存在するか? だったな。ちょっと言い方がまずかったな。
正しくは人間が信仰する『神』はシュバルドに存在するか、だ。そして、オレは言う。存在しないと。なぜかって? それは直に分かるさ。直にな。……もうじきアイツがやってくる。
聞こえるだろ? コツコツと、小さな音がこっちに近づいてきてるのが。
その音が止まった。
「さて、と」そしてオレは立ち上がった。
やがて黒の空間が割れると光が差し込んできた。闇に慣らされた俺の目には少々堪えた。
目が次第に『光』に慣れてくる。オレの視界に姿を見せたのは一人の知った女だ。全身ボロボロで今にもポックリと逝ってしまいそうな、そんな女だ。
オレは、そんな女に笑って言った。
「どうだった? オレのいなくなった世界はさぞかし平和だったろ?」
その言葉に、女は目から一気に涙を溢れさせ号泣した。
「……た……たす、ぅぐ、た、ひく……えぐっ……たすっ……け……」
言葉にならない。オレはヤレヤレと女に近づくと、腰に手を回してヒョイと肩に担いだ。
「……お前らがオレを封じたりするから……さて、オレの世界がどんな風になったか、楽しみだ。破壊神はやることえげつねぇからな。な?」
女がオレの言葉に肯定するかのように何度も頷いた。
「とりあえず、勇者。お前はオレと一緒に来い。お前にはオレの手伝いをさせる」
そう言ってオレは女のお尻をパンと一叩きし、さすりさすりしながら黒の部屋を後にした。