表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

割烹着姿の少女

1-2 割烹着姿の少女


目を開けると、木漏れ日は見えない代わりに薄く照された木の天井が見えた。

体は森のベッドでなく、布団に包まれていた。

生きているのは熊が気絶した俺を、死んだと認識してくれたからかもしれない。熊と会ったら死んだフリ、しても意味がないと思ってたよ。

「――いたっ・・・」

痛みで、反射的に額に手を当てる。

ヒヤリ

んっ、なんだ?

当てた手は額には当たらず、途中で冷たいなにかにあたる。

布?

屋内にいて、ぶつけた額には濡れた布。

どうやら親切な誰かが俺を助けてくれたらしい。

とりあえず布団からでるか。

しかし、冷えピタでなく、あくまで布、額につけたまま歩き回る訳にはいかない。

ちょうど、枕元に水の入った木の桶があったので、そのふちにかけておく。

辺りは薄暗い、恐らく夜なのだろう。

唯一見える灯りは(ふすま)の隙間から洩れる、薄明かりのみ。

トントントンと、心地よい音も襖から漏れていた。

誰かが襖の向こうに、居るのであろう。

――サーッ

襖の溝にはロウのようなものが塗っているようで、これまた心地よい音がする。

襖を開けた先にいた誰か。

も、その音に気づいたらしく、こちらに振り向く。

「あっ、起きたんですねっ今作り始めたんで、もう少し待っててくださいね」

襖の先にいた、割烹着を着た少女がこちらに振り返って笑顔を見せるとふたたび、調理に戻る。

頭に着けた三角巾がピクッと動いた気がしたが、気のせいだろう。


なるほど、トントントンという音は食べものを切る音か・・・


いやいやっ、そうじゃないって・・・

助けてもらったところまでしか、状況が掴めないぞっ


そういえば、振り向きざまの笑顔可愛かったなぁ、高1くらいだろうか?


だめだ・・・

今はイマイチ頭が回らない。どうやらご飯を作ってくれているようだし、そのご厚意に甘えるか。



少女は持ってきた夕食を、俺の座る隣のちゃぶ台に乗せていき、全て置くと割烹着を脱ぎ着物姿になった。なぜか三角巾はつけたままだが。

まあ、割烹着を脱いだのは着物を汚さない自信があるからかな。

出された料理は、魚のすり身の入った吸い物に魚の干物、漬け物に加えてご飯。

美味しそうだが、随分と時代遅れな料理だな。肉がない所なんて、文明開化前の日本のようだ。

「「いただきます」」

少女と声を揃えて言い、夕食となった。

モグモグ・・・

「気になっていたんだが・・・」

少女の口に食べ物が無いときを見計らい、質問をする。

「はい?」

「熊に襲われた俺を助けてくれたのはありがたいんだが、君1人で俺と俺の荷物をここまで運んで来たのか?家の方も留守のようだし」

「えっ、えっと・・・」

まずいことでも聞いたか?俺。

「じ、実は・・・あなたが見たの熊じゃなくて、多分私です。私石頭だから、ぶつかっても大丈夫だったんですけど・・・」

「確かに頭を上げてぶつかったくらいじゃ、気絶はしないよな。石頭ならしかたない。」

頭を上げて本物の石にぶつかっても気絶はしないだろうが、スルーしておこう。

「そぅ、そうですよっ!」

「だなっ!」

ハハハハッ--


--モグモグ

--モグモグ

モグモグ・・・

顔を見合せて笑ったは、いいがこの沈黙はキツいな、正直。

食事中にテレビがついてないと、ここまで静かなのか。

あれ?この家テレビがないのか?食事中にテレビをつけないのならわかるが、家にもテレビがついていないのだろうか?

と、言うよりこの家に電気が通っているようには思えない。

照明もアルコールランプみたい(実際はアルコールでなく何らかの油なのだろう)なのだけだし。

「あ・・・」

「どうされました?」

「さっき聞き忘れたんだが、君はどうやって俺をここに連れてきたんだ?」

どう考えても少女の華奢な体では、俺を持ち上げるどころか、荷物をもてるかも怪しい。

「それに割烹着は脱いだのに、なんで三角巾を着けたままなんだ?」

そう言うと少女の着けた三角巾が、またピクッと動いた。

少しながらも書き溜めておいたので、今回はほぼ同時投稿となりましたが、基本遅筆なのでゆっくりと次話をまって貰えれば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ