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小さな樹海で

1―1小さな樹海で


根には、じめじめと苔がむし。

不規則に伸びる天然の樹木達を見上げれば、鬱蒼(うっそう)とした枝やら葉などが嫌でも目に写る。

その間から洩れる木漏れ日は、見上げた視線を戻しても、大地からむき出しになった根を所々照らし、うっとうしいとさえ思えた。

現在(いま)は夏だがこのTHE(あからさまな)森の中では、森の外より涼しく感じる。


たまに鹿を見かけるが、まさか熊は出ないよな?


寂しさ・心細さのあまり自問を先ほどから繰り返している。

俺、神慶介(かなえけいすけ)高校2年生は現在森に入って約四時間を過ぎ、つまりは遭難中なのだ。

小学低学年のときまで、神というありがたい姓に酔っていた俺だが、本当は神ではなく(かなえ)で、ただ書くのが面倒という理由から父が神に変えたのだと知り、軽くカルチャーショックを受けたのを今でも覚えている。

因みに今の回想は不安を揉み消すためである。


さてふたたび回想に更けるか・・・


何故こんなじめじめとした森に俺が居るのかだが。

先ほどの回想の中、父が姓を神に変えたと言った、普通の父というか普通の人であれば姓を書くのが面倒というだけでこんなことはしない。

要するにうちの父親は普通ではないのだ。

どうやら何かの捜査関連の仕事をしているらしいのだが、詳しくは俺も知らない。

一年の内仕事で、2~3日しか家には帰らないくせして、その荷物というか土産物(ゲテモノ)の数々は既に2つの部屋を占有し、ついには俺の部屋にまで侵食してきている。

そんな父から先日封筒が届いた。

父は俺と同じく寂しがりや(寂しがりやなら仕事を変えればいいのだが)で、二日に一度は中に手紙を入れた封筒をよこしてくる。

先日送られた封筒の中には地図と手紙、それに準備金が入っていた。

封筒に地図が入っているのは何かを探したり、人を捜したり、などの意味のわからない任務を俺にさせる時についてくるのだ。

迷惑にも思えるかもしれないが、準備金や報酬金などが貰え、バイトのしていない俺にとっては嬉しい。

幼年期から続くこれは俺を着実に育てていた。

まあ、任務の殆どは戦闘訓練で、変なオッサンが来ては、かたことの日本語で俺の戦闘技術を上げるための訓練をさせるのだ。

手紙にあった、今回の任務は「家の近くの樹海で、ある動物を見つけそれを飼育しろ」とのこと。

地図はその樹海までの道のりと(樹海の場所だけを載せているだけで、内部の地図ではない)神社らしき建物を上から写した、衛生写真。端には大神神社と書かれている。おおみわと読むのだろう、そんな名前の神社に参拝した覚えがある。これは恐らく分社か何かだろうな。

手紙には「飼育のため、お前の高校の近くに一軒家を用意した。家具は一通り揃えてある。手紙に書けば必要な資

材等を送らせる。」と、あった。


いったいどんな仕事してんだろ・・・


一軒家を用意したというのは、母が動物嫌いだと踏んでのことだろう、実際にそうだからな。

対する俺は学校では飼育委員になるほど動物が好きで堪らない。

さらに夢の1人と1匹暮らしを実現できるとあってうはうはだ。

そして樹海が家の近くと言うこともあり、準備金に殆ど手をつけず、背負うリュックには学校から、持ってきた(盗んできた)邪魔にならない程度の大きさのゲージをぶら下げている。

リュックの中には水2Lとカロリーメイトを一箱、それに母からの弁当だ。

母には任務だとしか言っていない、報酬が1人暮らしと知ったら弁当も出してくれないだろうしな。


要するに1日分の物資しか持ってきていないのである。


一応護身用に父から持たされている、ナイフを持っては来ているが熊が出ても逃げるであろう。



回想をしている内に、休憩にと足を止める。

近くの適当な大木に腰を掛け、腕時計をみる。

腕時計は午前11時をさしている。

遭難してから5時間ほどだ。

そとから見れば小さそうな樹海には道がなく、歩いて10分もすれば帰り方がわからなくなったっけな。

昼御飯には少々早いが、母の弁当に手をつけることにする。

弁当を平らげるうちに、満腹感とともに眠気もあらわれる。

じめじめとした根に張り付いている苔も、気持ちよく感じてきた。

うっとうしくも思えた木漏れ日や、周りの緑系色も相まって、


さながら安らぎの空間だな。


こんなのを森林浴というのかもしれない。

既に眠気は睡魔に変わり、森のベッドが俺を夢に連れていった。



暑い・・・

木漏れ日(日向)が小さいにしても、夏に木漏れ日(日向)で寝るもんじゃないな。

木漏れ日の眩しさに、目もさえてくる。

――ザッザッ

そんな物音がしたかと思うと、先ほどまで眩しさも感じていた木漏れ日が消え、何らかの陰が目に写る。

耳らしきものも陰にはついていた。


熊!?


熊らしき、それを目で捉えようとするも、逆光になっていることに加えて寝起きと言うこともあり――


――ガツンッ!


判断力を失っていた、体を起こした際。

俺は思い切りその陰に額をぶつけてしまった――




読んで頂いた方、ありがとうございます。

学生が勉強の合間に書いた、駄文ではありますが暇潰しにでも読んで貰えれば嬉しいです。

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