ゆびきった
5作品目は「ゆびきりげんまん」の続編となります。
深く考えず、さらっと読んでいただけるとありがたいです。
(でないと主役の彼にヤバイ疑惑がかかってしまいますw)
小さい頃からずっと仁奈が好きだった。
俺の後ろをちょこちょことついて来る仁奈が可愛くて。
俺よりも小さくて柔らかくて泣き虫な仁奈を守れるのは自分しかいないと妙な正義感に満たされて。
「かぁくんだいすき!」
そうマシュマロみたいな頬を赤くして、サクランボみたいな口から出た甘い言葉に一人喜んだ。
俺の恋愛観が固まった瞬間だった。
───………
それからの俺は仁奈を忘れる事はなくて、
でも貞操だ純潔だなんて言う程青くもない。
それなりに恋愛を楽しんで、
酸いも甘いも経験した。
それでも求めるのは仁奈の欠片を持つ女ばかり。
俺の中で仁奈は誰にも穢される事のない大切な場所にいて。
“仁奈はそんな事言わない”
“仁奈ならこうする”
仁奈じゃない彼女に求めるのは仁奈らしさ。
そんな仁奈を重ねて見た恋愛はそう長く続くはずもなく。
その度に気付かされる仁奈への依存。
やっぱり俺は仁奈が好きなんだと言う確証。
想い出にならない仁奈への慕情に約束の地を踏む決意をする。
「仁奈にとって俺はもう過去の想い出になったのかな…?」
弱音が顔を出す。
過去の時間はもう過ぎ去って現在と言う時間が流れてる。
俺と同じように仁奈だって恋人を作り生きているかもしれない。
それでも待つのは最早自己満足なのかもしれない。
「…来る訳ない、か。」
これは分の悪い賭けだった。
来なかったら仁奈を過去の想い出にする。
来たら…
「…かぁくん……?」
一陣の風がさぁ、と流れ桜の花弁を舞い散らす。
そんな幻想的な景色に現れたのは、
「………仁奈…?」
俺がその名を紡いだ途端、目の前の女の瞳からぽろりと雫が零れる。
「ほ、本当にかぁくんなの…?」
一旦堰を切った涙は次から次へと流れ落ちる。
「…ああ、和之だよ。」
俺の中で小さかった仁奈が成長してゆく。
今、目の前にいる仁奈にまで。
少女から女へと。
「なあ、約束覚えてる…?」
偶然と偶然が重なった今は必然と言うべき瞬間で。
「指切りした約束でしょ?」
ほら、やっぱり仁奈と俺は運命。
一緒の道を歩くんだ。
「それ、今果たしてもいいか?」
“ずっと一緒にいような?”
「…うん!」
“かぁくんのお嫁さんになりたい!”
「仁奈、愛してるよ?」
“それなら、ゆびきりしよーよ!”
「私も愛してる。」
“約束破ったら針千本だよ!”
「これからはずっと一緒にいよーな?
もう離れ離れは嫌だ。」
“仁奈こそ忘れんなよ!”
「もう…離さないでね?」
“絶対忘れないもん!”
「うん。絶対離さない。」
““ゆーびきった!””
小さな頃にした不確かな約束。
それが今確かな物に変わって、
やっと叶った指切り。
俺と仁奈の小指に結ばれた赤い糸はやっぱりきつく繋がっていたんだ。
桜が咲き乱れる下、
重なったのは熱と人生と言う道。
ゆびきった
(これからは俺と同じ苗字だね?)
(なんだか恥ずかしいな。)
読んでいただいてありがとうございました。
これでこの2人のお話しは完結です。
続編は今の所考えていません。